水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

インフレを起こす素直な方法

28日、日銀がまたインフレ実現の時期を先送りしました。

政策目標とする2%の物価上昇の達成時期は従来の「2017年度前半」から「17年度中」に再び先送りした。

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO00197030Y6A420C1I00000/

当初、黒田総裁は2013年4月から2年で2%を実現させると言っていたので、2015年春が期限です。今で丸3年、「2017年度前半」で4年から4年半、それが更に「17年度中」なので4年半から5年になります。これ「もう無理」ってことですよね。やはり中央銀行国債を何百兆円も買うとか、金利を無理矢理マイナスにするとか、そんな強引な方法でインフレにしようとするのが良くないのです。もっと、素直にインフレを実現させる方法を提案します。
それは、安倍総理が国会で「国民の皆さん!、今日から労働基準法を守りましょう!」と高らかに宣言することです。それだけ。ただ法律を守るという当たり前のことを確認するだけでいい。簡単でしょう?

労基法でディマンドプル・インフレ

まず労基法を守ってサービス残業をなくし、残業した分だけきっちり賃金を払います。これだけで毎月手取りが何万円か増える、という人がたくさんいます。

金属労協の集計(3月末時点)では、ベアに相当する賃金改善の月額平均が、組合員299人以下の労組で1281円、300~999人で1128円、1千人以上で1122円となった。(中略)トヨタ自動車は1500円のベアで妥結。デンソーアイシン精機などグループ企業の回答も1500円に集約された。

http://www.nikkei.com/article/DGXKZO99284280V00C16A4EA2000/

政府は「賃上げしなさい」と春闘に法的根拠のない圧力をかけてますが効果は乏しく、こんな1000円1500円といった子供の小遣いみたいな賃上げより、法を守って残業代を払う方がずっと意味があります。
残業代で手取りが増えた分だけ購買力が増し、消費が増えます。消費の増加がディマンドプル(需要の増加が価格を引き上げる)インフレを起こします。

労基法でコストプッシュ・インフレ

他方、会社側は人件費が増加してそれを価格に転嫁するのでコストプッシュ(費用の増加が価格押し上げる)インフレを起こします。労基法を守って残業代を払えば需要&供給の両面でインフレを起こす方向に働きます。

日本人の需要時間・需要日

また、企業は残業代を抑制するために社員の残業を減らし、なるべく定時で帰すよう努力するでしょう。これも、景気を改善します。
働いている人は皆、供給人としての側面と需要人としての側面を持っています。トヨタの工場で働いている人は勤務時間中は車を供給する人で、仕事を終えて工場を出てからはスーパーやコンビニで食べ物を需要する人、休日はユニクロで服を需要する人になります。勤務先がメーカーでなくても経理などの間接部門でも同じで、人は働いている間は供給側に回り、オフの時間が需要側です。日本人は、あまりに長時間供給側に居すぎです。
一日24時間。経済活動するのは起きている間なので、7時間寝たら残り17時間。もし、毎日定時で会社から解放されれば、8時間供給して9時間需要するので比率は47:53で需要時間の方が多いですが、毎日3時間残業すると11時間供給:6時間需要で比率は65:35で需要が減ります。働き過ぎて日本人には需要する暇がないから景気は良くならないし、一日中供給ばっかりしているから供給過剰でデフレになります。

休日も同じです。休みの日、人は需要しかしません。ニセコなど北海道のスキー場が海外からの客で潤い、日本各地の観光地が中国人の爆買いで儲かるのは、観光客が滞在中は24時間需要人だからです。もし中国人が日本で一日11時間働いて残りの時間しか観光しなければ売上激減です。欧州人は長いバカンス期間中ずっと需要人です。何も供給せず買うばかり。でも日本人は一年中供給ばかり。需要を増やすために完全週休二日と有給の完全取得を実現させましょう。
頻繁に休日出勤があって実質週休1.5日(78日)+祝日(16日)+年末年始(4日)に有給取得ゼロで年間休日が98日しかないと供給267日:需要98日で一年の27%だけが需要日ですが、もし完全週休二日(104日)祝日年末年始+有給20日完全取得すれば年間休日144日。39%まで需要日を増やせます。

投資効果

社員を定時で帰し有給完全取得を実現させるには、相当の業務効率化を達成しなければなりません。faxでやりとりしたり、会議に過剰に丁寧な紙の資料を作成したり、excel方眼紙で遊んでいる暇はありません。これがIT化の促進など投資を必須にして、企業の過剰な内部留保を吐き出させます。投資増も需要となってインフレ方向に働きます。金利をゼロやマイナスにするより、投資すべき事情、投資が必要な環境を作るのです。

今ならできる、はず

労基法を本気で遵守するリスクは、人件費増加を嫌って企業が雇用を抑制することです。
90年代のバブル崩壊以降、日本では長らく人が余り失業率が4%台とか一時5%超という状況が続いていました。その中で労基法遵守策は失業を悪化させるデメリットが強く困難だったといえます。でも、今や日本は労働人口の減少継続で人手不足状態にあり、失業率も直近3.2%と低水準です。労働市場がタイトな今なら、一部の残業代を払えない&生産性向上もできない劣後な産業が雇用を控えても、他の人手不足で困っている産業。残業代を払えるだけの付加価値を持つ産業が吸収してくれれば失業を生むデメリットは小さくて済みます。定時帰宅を増やせば人手不足は一層強まり、人の奪い合いから賃金を上げる効果が出やすくなります。生産性が低い産業から高付加価値な産業へ人が移動すればGDPは伸びます。

「国民の皆さん!、今日から労働基準法を守りましょう!」と、宣言してみませんか?