水色あひるblog

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財政破綻後・おまけ編

「財政破綻後 危機のシナリオ分析」という本を読みました。

財政破綻が「起きるか、起きないか」を考えるのでなく、その先の「起きたらどうなり、どう対応すべきか」を考える一冊です。興味深い内容でしたが大きな視点の政策論や制度論がもっぱらでしたので、もう少し身近な事を勝手に考えてみました。繰り返しますが、以下は本とは無関係で私の考えた勝手な「おまけ」です。

財政破綻後に起きることとその対策。

 

1.タワーマンションの価格が下落する

財政が破綻して円が紙くずになると、日本は輸入が出来なくなります。輸入停止で困ることの筆頭はエネルギーでしょう。天然ガスや石炭が入ってこなくなると電力が不足し、どこかの貧しい国のように停電が頻発するようになります。エレベーターが不定期に止まるタワーマンションは人が住めるシロモノではなくなるので、人気は失われ価格が落ちるでしょう。
集合住宅では3階以下に人気が集まって価格が(インフレ分を差し引いた実質ベースで)上昇。5階から上は値崩れを起こします。

対策:自分の足で出入り可能な家に住みましょう。

 

2.農家が手の平を返す

他方、近年は都心のマンションに押され気味だった一戸建ての人気が復活します。人気の最大の理由はエレベーターがないからではなく、庭にサツマイモを植えて飢えをしのげるためです。

日本ではハイパーなインフレは起きにくいとする意見があり、その理由に、日本は物があふれているから、というものがあります。戦後の日本で高インフレが起きたのは戦争で生産設備が破壊され需要に比べて供給能力が不足していたからだ。今の日本はそれとは逆に物が余っている、と。
しかし近年のベネズエラを見ていると、そうは問屋が卸さないことが分かります。ベネズエラのスーパーは空になり、食料も何も商品はそこにありません。国民には飢餓が蔓延しています。財政が破綻するまでは普通に物があったのに。物がないからインフレが起きるのではなく、インフレが起きたら物が消えたのです。
物が消える理由の一つは輸入の停止ですが、国内で生産された物さえ行方不明になります。それは、紙くず紙幣しか持っていない貧乏な自国民に売るよりも国外に輸出する方が儲かるからです。いわば自国民を見殺しにして物が国外に逃げていく訳です。
さて、輸入が停止して困る事。エネルギーと並ぶもう一つの筆頭は食料です。日本の食料自給率はカロリーで見ると4割弱、金額では6割台だそうなので、ざっくり半分が輸入依存です。特に、小麦自給率14%、大豆7%、油脂12%というのがキツイ。小麦が入らないとパン・ケーキ・クッキー・うどん・パスタ・そうめん・お好み焼き・たこ焼きが食べられなくなり、とんかつやコロッケ、エビフライも衣が作れません。大豆がないと豆腐や納豆だけでなく大豆油や味噌、醤油も作れません。油脂がないと食品を炒める・揚げるが出来なくなります。毎日みんなで煮物料理です。味噌も醤油もないので味付けは塩一択で。
問題は自給されるはずの半分の食料がどこに行くかです。戦後、日本の農業は一貫して保護されてきました。農業は聖域、コメは一粒たりとも入れさせない。農水省の資料では「主食用米」の自給率は現在でも100%です。すごーい。その為に莫大な国民の税金が投入されてきました。そうした歴史的経緯を考えれば、財政破綻時に日本の農家は採算を度外視してでも生産物を国民の飢えを防ぐために供出すべきかもしれません。しかし、そうするでしょうか? 米や野菜や肉の代金として紙くずの「円」を受け取ってくれるでしょうか? それとも貴重な食料をどこかに輸出する? 農家もコストに見合う価格で売らなければ自身が困窮してしまう訳で、そこは「合理的」に行動するしかないでしょう。

対策:サツマイモを使った料理のレシピを沢山覚えておきましょう。

 

3.医者が出ていく

国から出て行くのは食料や物だけではありません。人間も出て行きます。

医者と言うのはその育成に金も時間も手間もかかります。アジアにはまだまだ医師が不足している国があります。例えばこの資料によると

top10.sakura.ne.jp

人口1,000人当たりの医師数は日本の2.3人、中国1.8人に対し、ベトナム1.2人、インド0.6人、タイ0.4人、インドネシア0.3人です。

医師を「輸入」できればとても好都合です。しかし今、日本人医師をアジア諸国が輸入するのは困難です。日本人医師が日本で得ているのと同等以上の報酬を出せないからです。
でも、日本の財政が破綻すると健康保険制度も崩壊し、医師への給与支払いは滞ってしまいます。ただでさえ日本の医師は異常な長時間労働を強いられており、燃え尽きて心身を壊して辞めていく人もいますが、それでも大多数が踏みとどまっているのは、高額な給与が保証されているからです。これがなくなれば、働く意欲を失ってしまうでしょう。これはアジア諸国にとってはチャンスと言えます。
「日本の医師免許所持者は我が国でも医師として働けるよう法を改正いたしました。なお我が国における医師の平均年収は現状ン万ドル相当で、年平均ン%上昇しております」といった情報が流され、医者狩りが始まります。日本に残っても給与は遅配に未払いに減額、健康保険と一緒に年金制度も崩壊するので日本に残る「老後の価値」ももうありません。アジア某国でのキャリアが輝いて見えるでしょう。
医師だけでなく、看護師や放射線技師、臨床検査技師もセットで買われていくでしょう。更には医療関係だけでなく、価値がある専門職・技術職は全部草刈り場のように買われていくかもしれません。
日本に残るのは高齢者と買い手が付かない人だけになります。高齢者でも億単位の資産がある人は資産を外貨に逃がしてシンガポールあたりにとんずらするでしょうから、国内の残るのは貧乏で買い手がつかない人ばかりになります。財政の再建は一層困難になるでしょう。

対策:健康な体を作っておきましょう。

 

4.土葬が主流になる

医者が逃げ出し、年間約2兆円の医薬品輸入が止まるので、死者数は大幅に増えます。しかし火葬場はキャパシティに限界があり、なおかつ多量の燃料を必要とするので、火葬という贅沢の維持は困難でしょう。

対策:自分が死んだ後の処理までは気にしなくていいと思います。

 

参考資料

食料自給率についてはこちらを参照:日本の食料自給率:農林水産省

医薬品の輸入についてはこちらを参照:グラフ 年次 輸入 SITC: 54 医薬品 輸入額の推移【出所】財務省 貿易統計