水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

フクシマは安全なのか危険なのかの議論にケリをつける方法

福島原発がまき散らしている77京ベクレルだか何だかの放射性物質はどの程度危険なのか危険じゃないのか?、専門家の間でも真逆の意見が出されています。ある人は「フクシマでこの先、何万人もガンや白血病になって死ぬだろう。」と警告し、別の人は「はぁ?、死者なんか出やしない。微量な放射線は健康にいいくらいだ。避難だ何だとヒステリックになってストレスを感じる方がよほど健康に悪い。」と言う人もいます。どちらも「我こそは本当の専門家。危険派は馬鹿だ。」「いや安全派こそ無責任、恥を知れ。」と非難の応酬。
政治家は「ただちには、ただちには」としか言わず、マスコミは「不安、不安」と騒ぐばかり。結局、フクシマの人達は誰を信じればいいのかわかりません。

安全派の論拠は、最も公式な資料とされるICRPの見解で、要約すれば「100mSv以下で健康被害が生じたデータは無い。それを越えると、100mSvごとに0.5%ずつ発ガン率が上がる」というものです。これなら確かに、20mSv程度では発ガンの発症増加は無いはず。悲観的に考え、100mSv以下でも比例的に影響があると仮定しても、+0.1%では統計誤差に埋もれるレベルでしょう。しかし、データの根拠になっているのが主にヒロシマナガサキの追跡調査だと言われると正直不安です。65年も昔の、日本が破滅的に混乱していた時期の記録を印籠のように振りかざされても…。
他方、危険派の論拠は統計的に不明瞭なシロモノだったり「データが無いから危険。分からないから危険と考えるべき。」みたいな話だったりします。その中で私が気になったのはAERAの2011年6月13日号に掲載された記事『放射能とがんの現実「低線量でもがんが増加」を検証する』です。
公式HPにはタイトルしか載ってないので、記事を詳しく紹介しているブログをリンクします。

世界保健機関(WHO)の国際がん研究機関が05年に発表した米、英、仏など15ヵ国の原発労働者ら約40万7千人の追跡調査。その9割の被曝線量は50ミリシーベルト以下だ。
このうち、がんで死亡した約5万2千人の、100ミリシーベルト当たりの発がんの危険度は約1.097倍。「喫煙の影響はあるかもしれないが、それだけでは説明できない」と、低い被曝線量でも発がんする可能性を指摘した。

http://hashigozakura.amplify.com/2011/06/12/%E4%BD%8E%E7%B7%9A%E9%87%8F%E8%A2%AB%E6%9B%9D%E3%81%A7%E7%99%8C%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E7%A2%BA%E7%8E%87%E3%81%AF%E9%AB%98%E3%81%8F%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B%EF%BC%9F%E3%80%80%EF%BC%9C/

ヒロシマナガサキよりも、ずっと新しく・先進諸国が参加し・大規模で・低線量を長期に浴びた影響という今回の事故に近いケース、を調べています。
結果はなかなか深刻。100mSvでほぼ一割、9.7%発ガン率が上がっていますから、ICRPより20倍近く高率です。こちらは閾値は無いとの見解なので、20mSvでも約2%発ガン率が増加する計算です。子供の方が感受性が高いのは広く意見が一致しているようなので、子供の発ガンは統計的に有意に増えそうな数字です。
更に同じ記事には、

昨年3月に財団法人放射線影響協会(東京)が発表した「原子力発電施設等放射線業務従事者等に係る疫学的調査」は、98年度まで原発関連の仕事に関わった約20万4千人を追跡している。うちがんで死亡した5711人を調査、分析した。

も掲載されています。我が国の・最新の・大規模な・低線量を長期に浴びた影響という今回の事故に近いケース、という超重要なはずの資料です。*1

こちらはもっと恐ろしい。非ホジキンリンパ腫は20mSv以上50mSv未満で1.5倍近い発症率に、多発性骨髄腫は100mSv以上で4倍ですよ、4倍。今、フクシマで働いている人はこの情報を知っているのでしょうか。

これらのデータが世間で大きく扱われないのは、これらよりもICRPの古い、調査対象が12万人の情報の方が信ぴょう性が高いのでしょうか?。謎。

しかし、私のような素人が新聞や雑誌を読んでも、結局どの記事・資料が一番正しいのか判断するのは困難です。
では今の社会で、高い能力を持つ人たちが、悲観も楽観もいかなる偏見も持たず、最新の知見や資料を集め、冷徹に科学的に統計的に調査分析しているのは誰でしょう?。それはおそらく、日本の生命保険会社ではないでしょうか。日本生命や第一生命といった大手生保では、超エリート大学を卒業した聡明な人達が密室に籠り、フクシマのリアルな致死率を必死に調べているはずです。

もし今回の事故が大した健康被害を生まないなら、フクシマは生保各社にとって絶好の草刈り場です。不安を抱えている家庭を片っ端から生保レディに絨毯爆撃させ、「事故の影響が御不安でしょう〜。お子様の将来の健康が御心配でしょう〜。えぇえぇ、痛いほどわかりますよお客様のお気持ち。国の補償なんてあてになりませんよ〜、裁判に何十年かかるかも…。どうですか?、思い切ってご主人さまだけでなく、奥様、それにお子様もみなさん生命保険に契約されたら…」とセールスすれば、がっぽがっぽ、保険料収入が転がり込んで、この不況にセールスレディはボーナスでウハウハです。
他方、今回の事故が生命表から逸脱するような事態を生じさせるなら、フクシマは生保にとって災厄です。契約を受ければ保険金支払いが過剰に発生するとわかっている時限爆弾を抱える訳にはいきません。「地震の影響で支店の営業ができないため、当面の間、福島での新規ご契約は見合わせております」とか何とか言いだすかもしれません。

というわけで、フクシマの皆さん、お近くの生保営業所に行って新規の保険契約を相談してみては如何でしょう?。
もし向こうが喜んで契約をしたがるようなら、保険に入る必要はありません。安心して生活が出来ます。もし、何だかんだと契約を拒むようなら、生命保険云々よりも、そこから逃げた方がいいかも。

*1:しかし記事にもあるように、20万人もの大規模調査なのに同協会の担当部長は「95%以上信頼できる調査にするため誤差範囲を統計処理すると、どれも信頼に足る数値ではない」。と主張しています。ホントに??。