水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

「餃子の王将」よ、お前もか

去る7月13日、新聞各紙が王将フードサービスの6月度既存店売上高が4.1%減少したことを伝えています。
年度決算でも中間決算でさえもなく、月次売上がたった一カ月マイナスだったことが、業績トレンドを示すものではありませんし、そもそもこのご時世に既存店売り上げが-4.1%だったことがニュースになるということ自体、王将の好調ぶりを逆に示しているとも言えますが、この「デフレ下の勝ち組企業」の気になる変化について書いてみます。

週刊朝日に作家・林真理子さんの対談が連載されていますが、2010年3月19日増大号のゲストが、王将フードサービスの社長・大東隆行氏でした。その中で採用についてこんなことを話されています。曰く「昨年は大卒が50名程度で、高卒がその倍程度だったが、今年は大卒が150名程度で比率が逆転した。」大卒が多く採用できたと喜ぶ大東社長。林真理子さんの「今年は買い手市場だから優秀な人が採れたでしょう」との問い掛けに対しては「知名度が上がって来て、メジャーになりましたよ。」と答えておられました。
大卒新卒の定期採用=優秀という前提で会話が進んでいます。林真理子さんが世間の常識にどっぷりなのは仕方ないでしょうが、同じ対談の中で大東社長は「関東のエリア・マネージャーの4人中3人は『元ワル』。元ワルの方が仕事へのバイタリティーがある。」とも答えておられます。つまり、これまで王将の成長を実現させてきたのは高卒だったり元ワルの社員たちで、大東社長ご自身も専門学校中退でいらっしゃるのですが、「メジャーになった」王将が採用するのは「大卒で新卒で春採用」に変わってしまうんだなぁ…ということです。

今年4月11日にテレビで放送された王将の新入社員研修が「あまりにブラックすぎる」と2chあたりで散々揶揄され、ついにはホームページ上に釈明文を掲載する羽目になりました。
この件での最大の失敗は、好業績好業績と囃したてチヤホヤしてくるマスコミに乗せられて研修の様子を公開してしまったことでしょうが、研修の中身について言えば、これは「過去に王将が雇ってきた『元ワル』社員を念頭に置いた研修」だろうと思います。鬼軍曹のような教官さんはパンチパーマにダミ声で、いかにも「その筋」っぽい人でしたし…。
学校に反発して辞めていく子たちの行く先は暴走族かヤクザか…、いずれも学校よりはるかに厳しくて怖くて抑圧的な組織です。悪い子は、軍隊のような厳格な上下関係と規律をむしろ欲しているように見えます。おそらくは自身も元ワルで、王将の中で叩き上げで出世した管理職が、自分と同じような元ワルの新入社員を鍛えるために組んだプログラム。それが、放送された研修ではないかと思います。
王将はこれまであの研修をやってきて、それで売上高は7年連続の増収、経常利益は9年連続の増益、2010年3月決算で売上・経常益とも過去最高を更新しているのですから、研修のあり様を一概には批判できない気もします。ただ、「元ワル」ではない、今年採用した「150名の大卒社員」に、あの方式が効果を上げるのかは疑問です。

企業が成長すると、社長が自社ビル本社を建てたがるという話をよく聞きますが、同様に、大卒新卒を採りたがる傾向も顕著だと思います。「大卒を採用できるようになった、我が社も一流企業になったなぁ。フッフッフッ。」という感じです。
別に大卒新卒が悪いと決まった訳でもありませんし、今年4月に採用した社員の質が6月の月次決算に影響するとも思いません。が、もし今から3年後5年後に王将の経営が不調になっていたら、王将のビジネスモデルに頭のいい大卒君の採用は有効ではなかった、ということでしょう。