水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

官僚に予算を削減させてはいけない

官僚にとって予算は命。予算を獲得し増額させることが自身の優秀さ証明であり、予算を失うことは敗北・屈辱です。だから「窓口いつもガラガラ 厚労省OB天下り先の雇用開発協会」、こんなムダな予算も決して削減されることはありません。
ところがその厚労省の官僚が、例えば生活保護の予算削減には非常に協力的です。老齢加算を廃止し、母子加算も廃止。その際には「生活保護世帯の消費水準が、保護を受けていない一般母子世帯の平均消費支出額を上回っている。」とするデータを提出し、むしろ官僚の方からいそいそと予算削減を提案してくるありさまです。
理由は簡単。生活保護厚労省の官僚にとって何のメリットもないからです。貧乏人に直接お金を給付してしまう予算は、特殊法人を通さないので天下り先の確保にもならず、発注や業務委託を通じて業者と癒着する利権も生まず、金を中抜きしてポケットに入れる余地もありません。実に役立たずな予算です。
省全体の予算が厳しく制約されて削減を求められると、官僚は自分たちに必要な予算を守るために、国民に必要な予算を削りにいきます。「独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構」や「公益法人/雇用開発協会」といった天下り先に流れる予算を残すために、母子加算200億円を身代わりの生贄として差し出すわけです。


自民党政権では、しばしばゼロ(またはマイナス)シーリングという予算節減手法がとられました。各省庁が予算を要求する際に、総額で前年度比同額(またはそれ以下)に抑えろと大枠で制限するものです。政治家は票や利権につながる予算を確保するときだけ口を挟み「重点項目です」などとアピール。利害関係者に「ホラ、お前らの欲しがってた予算を自分が取ってやったぞ」と権力を誇示するのに利用し、その背後で何の予算が削られるのかは官僚任せ。官僚は、政治家に甘い汁を吸わせたうえで自分たちの利益につながる予算を温存。
結果、「何故この予算が?」と言うような切実な予算がひっそりと、人知れず見殺しにされていくわけです。


今回の民主党政権で特筆すべきは、マニフェストに書かれた政策の実現と同じくらい、もしかするとそれ以上に「その予算をどこから確保するのか」つまり「どの予算を削るか」が注目されている事です。(考えてみれば、どうして今までこの点が注目されなかったのか不思議ですが。)
政治家が削るべき予算を考え、国民に対して説明するのは意義のあることだと思います。


とはいえ、予算削減に介入するのは難しい事です。
一般会計・特別会計合わせて桁が100兆円に達する予算の無数の事業の中から無駄を見つけていくのは、ジャングルで宝探しするようなものです。上記の「厚労省OB天下り先」の記事にしろ、表面的には「高齢・障害者雇用支援」というごもっともなタテマエが準備されており、事業名や趣旨だけ見てもムダかどうかはわかりません。おまけに「宝」が見つからないように官僚は必死で隠ぺいや妨害を繰り広げるでしょうし。


「官僚に予算を削減させてはいけない、だって?。そんなこと知ってるよ。だけどさ、本当に官僚の抵抗に打ち勝てるのかい?。」民主党がちゃんとやれるのか、一番興味津津なのは自民党の政治家たちかもしれません。