景気悪化が心配なので、消費税率の再引き上げを前倒しするのはどうでしょう案
2014年4-6月期GDP改定値が年率換算で-7.1%となり、世論は15年10月の税率再引き上げに懸念を強めています。
他方、政府・与党からは、麻生財務相「上げないことによって世界中からの信用が落ち、国債を売り浴びせられると、影響が見えない」、谷垣幹事長「消費税を上げた時のリスクはいろいろな手で乗り越えられるが、上げなかった時のリスクは打つ手が難しい」など、「予定通り引上げすべし」との見解が出されています。万一にも国債価格が不安定化するとマジでヤバイので増税はやめられない、という感じです。
ここは一つ、間を取って再引き上げを半年前倒しするというのはどうでしょう。具体的には「2015年10月に8→10%にUPする」のを止めて「半年早い2015年4月に8→9%に上げて、その一年後の2016年4月に9→10%へ三回目のUPをする」です。
税率2%引き上げを1%ずつ二回に分けて、半分は半年前倒し、半分を当初予定の半年後にする形です。
引上げ幅1%化のメリットデメリット
まず利点を上げてみます。
1)波が小さくなる:税率の引き上げ幅が大きいほど、直前の駆け込み需要も引き上げ後の需要の反動減も大きくなります。波の山は高く谷は深くなって景気を不安定化させます。そこで税率上げ幅を小刻みにすることで波を穏やかにします。
2)プチ駆け込み需要を作る:今不安なのは、景気の沈滞が4-6月期にとどまらず、ズルズルと長期化することです。しかし15年4月に税率が1%上がるとなれば「9%になる前に、8%のうちに買っておこう」という(今回よりプチな)駆け込み需要が15年1-3月期に発生して、消費をプラスに転じさせる効果があります。15年4-6月期以降また沈滞が生じますが、16年1-3月期には「10%になる前に」需要が発生します。沈滞の長期化を避けるために、小さな波を繰り返し起こす形です。
3)税収中立:税率2%UPを前倒し&後回し半々で行うので、トータル税収は中立。財政への不安をかきたてる(国債の不安定化を招く)ことはありません。
欠点はなんでしょう?
毎年毎年、税率が変わるコストが挙げられます。小売業では値札の差し替えやPOSの設定が大変かもしれません。ただ、各企業にとっては税率変更もイヤですが、大きな駆け込み需要で特定の四半期に注文が集中したり、翌四半期はぱったり受注が消滅したり、その後売上げの停滞が続くのも困った話であり、両者のメリットデメリットを考えれば、税率がコロコロ変わっても波が小さくなるなら悪い話ではないと思います。
夏休みの宿題理論
税率再引き上げを「中止」するのはマズくても、「少し延期」するくらいならいいじゃないか、という意見もあります。例えば内閣官房参与の本田悦朗静岡県立大学教授は「2015年10月に予定されている消費税率10%への引き上げは、1年半先送りし2017年4月実施とするのが望ましい」と言っています。
しかし、延期すると何があるかわかりません。中国の景気が悪化して日本からの輸出が大幅ダウンとか、中東情勢がヤバくなって資源価格が高騰とか、欧州不安再燃とか。アメリカはQEからの出口が絶賛進行中ですが、出口の先で「景気後退局面」を迎えてもおかしくない頃合いでもあります。2016年や2017年は、2015年よりもっと税率引き上げに不適切な年になるかもしれません。さりとて、延期の繰り返しは「打つ手が難しい」「影響が見えない」深刻な事態を招きます。
夏休み、の話をするのは時期外れですが、夏休みの宿題は、後回しにするほどしんどくなります。挙句、八月末に風邪でも引けば「ギリギリ間に合うはずだった」計画が破綻します。お盆前に一部分だけでも済ませておけば後が楽。
景気が悪化するとイヤだから延期する、でなく、負担を分割して軽くするから前倒しで引き受ける。のは、どうでしょう。