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水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

文化勲章と文化功労者と憲法と

26日、本年度の文化勲章7名及び文化功労者17名が発表されました。その中で、先ごろノーベル化学賞を受賞された鈴木章氏と根岸英一氏の名前が両方に挙がっています。文化勲章文化功労者を同時に受けるのです。実は今までも、日本人がノーベル賞を受けた年には同じ事が何度もあったのですが気がつきませんでした。

私の中では、文化勲章が「金」で文化功労者が「銀」というような理解だったので、金メダルを貰う人に銀メダルも渡す必要はないのでは?という感じです。これはどういう理由なのかと思ったら、wikipediaにきっちり説明が出ていました。

wikipedia:文化勲章 と wikipedia:文化功労者 ←詳しくはこちらを

つまり政府は、文化勲章受章者にご褒美の年金を出したいと考えた。が、これは日本国憲法第14条3項(3.栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。)に違反してしまう。そこで、文化勲章とは別に(というタテマエで)文化功労者というものを設け、この受賞者に「文化功労者年金」が終身支給されるようにした。両者は別物のはずですが、実際には文化勲章受章者は(文化功労者から選ばれるので)全員が既に「文化功労者年金」の受給者になっているという仕組みです。ただ、両受賞者がぴったり一致していると憲法違反になりそうなので文化功労者の方が人数が多めになっていて、文化勲章は功労者の部分集合になっている形です。

例えば2008年にノーベル物理学賞を受賞した益川敏英氏と小林誠氏は、共に2001年に文化功労者を受賞済だったので、2008年には文化勲章を出すだけで済みました。更に理想的なのは2002年にノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊氏で、1988年に文化功労者を、1997年に文化勲章を受賞済だったので、2002年は「慌てる必要なーし」でした。*1しかし、今回のお二人や、2002年にノーベル化学賞を受賞した島津製作所田中耕一氏のようにノーマーク人物だった場合には、文化勲章を当然出しますが、それだけでは年金受給権が生じないので同時に文化功労者も出すしかない訳です。

いやーな言い方をすれば、文化功労者を受けたが、その後文化勲章は受章しなかった人というのは、文化功労者年金が憲法違反ではないことを示すアリバイのような存在です。

憲法の条文を温存するために、文化功労者年金という回りくどい方法をとる必要があるのか?と疑問に思います。

憲法第14条
1.すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
2.華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
3.栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

国民が、文化勲章者に年金を出してもいいじゃん、と考えるなら、憲法第14条3項は「間違っている」ことになります。間違えている、が言い過ぎなら「現状に合致しない」でも構いません*2。1項は今も昔も不変の価値を持つ条文だと思いますが、2項・3項は、憲法を作った当時は時代が逆行しないよう歯止めとして具体的に書く必要があったのでしょうが、今となってはわざわざ項とする必要があるのか?、1項にある「法の下の平等」に包含される瑣末な事例じゃないか?という気がします。
ちょちょっと条文を変えて、文化勲章受章者に直接年金を出してもいいんじゃないの、と思います。

日本人は、憲法を改正してはいけないと考え過ぎな気がします。憲法改正=9条の改正=軍国主義復活だと左翼政党が騒ぎ過ぎたのでしょうか?。憲法と言えども法律の一つであって、時代や社会の変化と共に適切な手入れが必要だと思います。
憲法条文を変えないことが優先されるあまり、この文化功労者年金のように実際は憲法14条と対立しているにもかかわらず、法を迂回する逃げ道をつくればそれで構わないという習慣が生まれ、いつのまにか憲法は飾り物、「理想論を条文にして掲げることが目的で、現実とは乖離していても仕方ない」というような誤った憲法観が逆に蔓延している気がします。
憲法9条はそのままでも、解釈を拡大させれば日本も核武装できる」といった極論が生まれるのが、その最たるものだと思います。

以前、憲法26条が時代遅れではないか?という趣旨のエントリーを書いた事がありますが、そろそろ全条文について棚卸した方がいいように思います。

*1:2002年に小柴昌俊氏が日本で受賞したのは杉並区名誉区民称号と明治大学名誉博士名誉学位だそうです。

*2:文化勲章を受賞された方に年金を出すということ自体に皆さんは反対されますか?。もし反対なら、憲法第14条3項が正しく制度の方を廃止すべきだということになります。「金額による!」という声もありそうですが、wikipediaによると、現状の文化功労者年金は年額350万円・平成21年度予算計約8億円だそうです。月額換算だと一人30万弱で、人口1億2000万人いる中で新規受給者は年わずか15人程度ですから、私的には予算は微々たるものと思います。(終身受給といっても、お年を召した受賞者が多いので、毎年「受給しなくなる方」も少なくないので予算は増えにくいでしょう。)