水色あひるblog

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谷亮子さんの新たな金メダル

今年5月、参議院選挙への出馬を表明しながら柔道選手としても現役を続行しますと表明した際には「両立など出来る筈がない」と散々批判された谷さんですが、今日の引退会見を見て彼女が非常に頭が良いことを痛感しました。

普通に考えれば、08年の北京オリンピックが銅メダルだった時点で既に彼女の選手としての能力はピークアウトしていました。オリンピックに先立つ同年の国内選考会(選抜体重別選手権)でも決勝戦で敗れていましたから、彼女の強さは国内一位でもなく、北京に行けたのは「過去の実績」あってのものです。ですから、二足の草鞋を履こうが履こまいが、たとえ柔道に専念していても、次回ロンドンオリンピックに出場できた可能性はほとんどなかったと言えます。
しかし議員になったことで、争点は「選手としての限界」から「二足の草鞋という限界」にすり替わった形です。

今日の会見で、本人は「柔道との両立を目指してきたが、今後は国政の場で日本のスポーツ全体の振興に力を発揮したい気持ちが出てきた」と引退の理由を語り、メディアも「出産と議員活動の為、北京以降は大会に出場できていなかった。」「二足の草鞋はやはり困難だった。」と伝えています。これらは国会議員兼任だからこその説明であり、結果として「北京後も選手活動を続けたが、国内大会で浅見八瑠奈選手や福見友子選手に負けたから引退」という事態を避ける事ができたのです。

おそらく春の出馬会見の時点で既に引退表明にいたるシナリオを考えていたはずで、これは実にスマートでクレバーな身の処し方だと思います。プライド高きアスリートは、選手としての衰退を見られるくらいなら、無謀な二足の草鞋を世間からバッシングされる方がマシだったのでしょう。彼女は最後まで「オリンピック日本代表選手」のまま選手生活を終える事となり、しかも引退前に「議員バッジ」という新しい金メダルを入手済みです。
この先々を読む能力と用意周到さ。国会議員という転職先は彼女にとって適切な選択という気がします。