ガラパゴス国債
日本の携帯電話はガラパゴス化していると言われます。意味合いとしては、(1)世界と互換性のない独自規格に閉じ籠っている。(2)海外市場での競争力がなく、国外では売れない。(3)逆に国内市場は独自規格に守られ、国内メーカーはその中で利益を上げている。といったようなニュアンスでしょうか。携帯電話について、こうした指摘が当たっているのか異論もあるようですが、なんとなく日本の国債がこれに似た状況にある気がします。
国名 | 海外保有比率 | 時期 |
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Japan | 6.8% | 2008/12 |
US | 50.3% | 2008/12 |
UK | 36.5% | 2008/12 |
Germany | 52.6% | 2008/9 |
France | 31.8% | 2007/12 |
財務省の資料*1によると、米だけでなくEU諸国等の国債も、3-5割程度は海外保有になっています。表にはありませんが、財務状況が芳しくないといわれるイタリアも50%以上は海外保有のようです。*2日本の突出した鎖国ぶりが伺えます。
日本の場合、国債を無理して海外に売りに行かなくても国内で十分消化できていると言う事情があります。これは良い事で、海外に買ってもらっている国のようにデフォルトする恐れがないと評価する声もあります。本当にそうでしょうか?。900兆円、GDPの1.8倍もの過剰な借金を抱えている国の国債の利回りが、なぜEU諸国より低利率でいられるのでしょう。
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日本人が日本国債を買うのは「日本が破産するはずない。」という自国への信頼に基づいています。が、その信頼の根拠は何かと言えば、国債は安全だから買う→買うから低利率で発行される→低利率だから大丈夫だと確認する→国債は安全だから買う、という同義語反復が延々と続いているような状態で、誰も「本当に?」という疑問を入れずに同じ場所をグルグル回っているような気がします。…うまく言えてないけど。
EU諸国等の国債は10年物で利回り2%未満から約5.5%まで、国によって相当違います。*3そこでは、ドイツ国債を基準にした利回り格差が各国の信用状況を映すモノサシとして利用されています。スプレッドの拡大が危険信号となり、過剰発行を抑制する圧力として機能する訳です。
国名 | 利回り | 対Bund Spread |
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Australia | 5.58% | +2.41 |
France | 3.44% | +0.26 |
Germany | 3.17% | 0.00 |
Greece | 5.45% | +2.28 |
Italy | 4.00% | +0.83 |
Japan | 1.31% | -1.86 |
Netherlands | 3.43% | +0.25 |
Norway | 3.98% | +0.81 |
Spain | 3.79% | +0.61 |
Switzerland | 1.89% | -1.28 |
UK | 3.86% | +0.69 |
US | 3.53% | +0.35 |
日本の国債を例えば2割なり3割なり海外に買ってもらおうとして、今の利回りで通用するでしょうか?。もし不可能だとしたら、一体何%付ければ買ってもらえるでしょう?。日本は、外部からの評価を受けていれば不可能な利回りを、海外市場から逃避して自分でA格付けして自分で買って完結させるという「ガラパゴス進化」で実現させているように見えます。
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莫大な国債をほぼ国内のみで消化するのは恵まれた環境のようでいて、実は良い事ではなく、海外市場の評価を拒否して自国内でしか通用しない「自己循環的な信頼」を使って発行抑制を無力化し、本来なら積み上げられない(積み上げてはいけない)過剰な債務を積み上げてしまう罠に嵌っているのではないかと言う気がします。あまりに独自な特別な環境に適応しすぎると、進化の袋小路に入って絶滅する、というのは生物界で良くある話です。
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財務省は最近、海外への日本国債売り込みに力を入れているようです。良いことだと思います。で、売れてるのかなぁ…。
2009/12/16追加
ギリシャ・国債の格下げと金利の上昇に追い込まれた政府は、財政再建策をあわてて打ち出した。
これが、正しい姿ではないかと。