水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

真・消費者庁

鈴木宗男衆院議員らが結成した政党の名称は、2011年12月28日の「大地・真民主党」から2012年1月5日に「新党大地・真民主」になりました。間違い探し?。街頭演説で松木謙公議員は「新党は『新』ではなく『真』の党」と訴えたそうですが、「お前は加勢大周かっ!」と歳のバレるつっこみをしてしまいそう。
組織名に「真」を乗せて似たような物をもう一個作って良いなら、消費者庁をもう一庁作って欲しいです。真・消費者庁
消費者庁と真消費者庁の違いを説明すると、「蒟蒻ゼリーを食べると喉に詰まらせて死ぬ恐れがあるから、売るのをやめろ」と言うのが消費者庁。「国民には蒟蒻ゼリーを食べる自由と権利があるから、販売させろ」と言うのが真消費者庁です。

消費者庁が遂行する仕事は例えばこんな事。
厚労省に対して「ポリオ対策が生ワクチンに限定されるなんて、国民を無用な副作用リスクにさらしている。規制を変更して今すぐ不活化ワクチンを承認しろ。ていうか生ワクチンなんて使ってる国、先進国では他に一つもないよ。それでいいの?恥ずかしくないの?」って言って欲しい。

大阪府内のインターネットカフェ全店で個室の密室状態が解消されたことが、府警の調査でわかった。犯罪を誘発するとして、府警が風俗営業法を厳格に適用。(中略)客や売り上げが減った業者からは戸惑いの声も漏れる。(中略)同8〜10月の売り上げは、大半の店で前年比20〜5%減ったという。(2012年1月6日23時09分 読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120106-OYT1T00915.htm

警察に対し、「ネットカフェ利用者にはプライバシーを確保しつつエッチな動画でもなんでも見る自由がある。扉をなくせだの透明なアクリル板にしろだのは利用者の権利の侵害、ネットカフェの営業妨害、自由な商業活動の破壊なので規制するな」と言って欲しい。
産経新聞の記事によると「警察庁のまとめによると、平成22年中に全国のネットカフェなどで計21件の犯罪が発生。内訳は、強姦1件▽強制わいせつ5件▽児童買春など5件▽青少年健全育成条例違反9件▽著作権法違反1件」 とのこと。一年間に、家屋の部屋やホテルの中でどれだけの強姦や強制わいせつや児童買春が行われているのでしょう*1。ネットカフェの密室が危険だというなら、まず国中の家屋とホテルを取り壊して日本人は全員、原っぱで暮らすべきでは?。

牛の生レバー(肝臓)の提供を禁止するかどうかを検討している厚生労働省は、牛の肝臓内部から食中毒の原因となる病原性大腸菌O-157が検出されたとする調査結果を20日開いた薬事・食品衛生審議会の部会に報告した。(中略)年明けの次回会合で改めて規制の方向性について検討することとした。 2011年12月20日 東京夕刊

http://mainichi.jp/select/seiji/news/20111220dde041010069000c.html

厚労省に対し「国民には生レバーを食べる自由がある。食べたくない人は食べなければいい。食べたい人の権利を奪うな」と言って欲しい。日経新聞の記事によると「1998年から昨年までの13年間で、牛レバーの生食が原因の食中毒は116件あった」とあります。年8.9件、月0.74件。年末ジャンボ宝くじだけでも1等2億円の当せんが118本ですよ。2億円当てるよりはるかに低確率なリスクのために生レバー全面禁止なんてバカバカしすぎます。
なにより、O-157対策で生レバーを禁止する事は食中毒防止にほとんど寄与しません。厚労省平成22年食中毒統計調査によると*2、年間に食中毒患者が25,972人確認されていますが、その最大の原因はノロウイルスの13,904人(54%)、ウイルス全体で14,700人(57%)。それに対し、O-157などの腸管出血性大腸菌はたった358人(1.4%)。生レバーだけがO-157の原因ではありませんから、これを禁止にしても食中毒の「1.4%の一部」しか減らせません。
更に言えば、上に挙げた患者数からは誰も死んでいません。O-157による死者はwikipediaを見ると、「焼き肉酒家えびす」事件(患者の一部からO-157が検出された)の前は2005年高槻市児童福祉施設の3歳児、その前は2002年宇都宮市内の老人保健施設で入所者9人。健康弱者ばかりで人数も年平均では1人程度のレベル。交通事故で年間4,900人が死に、タバコによる超過死者数は年間10万人も出ているのに、車は放置、タバコも放置でなぜ生レバー禁止なのでしょう?。生レバーは税金を払わないから?。
ユッケも同様です。「焼肉酒家えびす」事件は、肉の卸元も店側でも一切トリミングをしていなかったことがわかっているのですから、そこを徹底すれば済む話ではないでしょうか。年間何万人?何十万人?がユッケを食べていて、あんなひどいことは他では起きていないのですから。この一件の後、異様に厳しい規制がかけられました。「微生物検査の義務付け」「専用の設備・専用の器具」「加熱殺菌記録を1年間保存」「熱湯などで表面から深さ1cmまでを60℃で2分以上加熱」など。過剰な規制でユッケの提供は事実上不可能になっています。この規制から逃れるために、

『週刊SPA!11/1号(10/25発売)』 生肉新基準に挑発的メニュー登場「ユッケホイル焼き」
店員「当店のユッケは網に乗せて焼いて頂くスタイルになっています。焼く時間に制限はありません。焼くか焼かないかもお客様の自由です」 ということは、ほんの一瞬、網に置いて戻しても良い? 店員「そういうことですね(笑)」 ユッケを食べるのにこのような茶番を強いられる現状を憂いつつ、考案者の意趣に感服した。

http://nikkan-spa.jp/79489

こんなことも起きてきます。これなら、もし食中毒が起きても店側は「こちらは焼く前提で提供した。焼かなかった客が悪い。生食用肉ではないから規制の対象ではないし、トリミングしてなくても違法ではない」と言い張れます。かえって危険です。真消費者庁の人に「規制するなら、もっとマトモな実効性のある内容にしろ」と言って欲しい。

規制が不足して、そのせいで被害を受けている人もいるでしょうが、それよりも不要な規制・過剰な規制・不適切な規制(規制のふりして実は特定団体の既得権保護になっているような規制)から受けている損失の方がずっと多い気がします。どれだけの個人の自由・機会・娯楽、ビジネスチャンス、需要が損なわれているか。今の日本に必要なのは規制する消費者庁より、規制から解放してくれる真消費者庁ではないでしょうか。

以上で終わるつもりだったのですが、でもこれは間違いですね。官僚に規制の解除を目的とする省庁を運営しろと言うのは、ドロボウに警察を運営しろというようなもので上手くいくとは思えません。彼らは規制と監督権限を予算と利権に変えて生きているのですから。
私たち国民=消費者が真消費者庁の役割を果たすことが本来の姿でしょう。行政に対し「国民の自由を侵すな、余計な規制をするな」と言うべきなのは私たち自身。でも、官僚を嫌っているのに日本人ほど官僚にべたべたに依存している民族も珍しい。何かトラブルが起きる度に「規制が足りない」「役所は何してるんだ」「こういう事は国がキチンと監督すべき」と言います。「国が規制しろ」は「官僚にもっと予算と利権を与えろ」と言っているようなものなのに。マスコミも毎回危機感を煽るばかり。「役所の怠慢」を批判することが、結局官僚の焼け太りを招いてたりするのに…。
「みんなの心に真消費者庁を!」・・・無理矢理まとめさせていただいて、これで終わります。

*1:ちなみに平成22年、強姦の認知件数は1289件、強制わいせつの認知件数は7027件。平成23年警察白書 従って、ネットカフェ規制で回避できる事件は強姦の0.08%、強制わいせつの0.07%

*2:表番号2が病因物質別統計です