水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

構ってもらえるギリシャの幸福

ギリシャ債務危機と日本はどう違うのか、考えてみました。

第一は、圧倒的な債務額の差です。ギリシャの公的債務残高は約3000億ユーロだそうなので、円換算(1ユーロ=110円)すると約33兆円になります。レートを危機表面化前・昨年末時点の1ユーロ=130円で計算しても39兆円。いずれにせよ日本の公的債務は800兆円900兆円の世界なので、桁が違います。40兆円以下という金額は、日本にとっては今年一年で追加する国債残高にも満たない程度です。
日本とギリシャではGDPの規模が大違いですから、ギリシャ一国にとっては40兆円が大変なのはわかります。が問題は、約12兆ユーロ=約1300兆円(1ユーロ=110円換算)という経済規模を持つEUが必死に火消しに走っても、たった3000億ユーロの債務不履行不安をすっきり解消とはいかない事です。5月上旬、EUが800億ユーロ、IMFが300億ユーロの計1100億ユーロの金融支援を行うことを決定しています。ギリシャの名目GDP2374億ユーロ(2009年)のほぼ半分という総力戦です。ここまでやって、すっきりとは行かないまでも、ギリシャ不安は一応の小康状態を保っています。
逆に言えば、国際社会の力で何とかできるのは、この程度の債務規模が限界だと言う事です。万一、日本が900兆円の国債を借り換えられない・償還できないという事態に至った場合、これはまさに「Too BIG to SAVE=大き過ぎて救えない」。国際社会がなんとかしたくても、あまりに規模が大きくてどうしようもないでしょう。

もう一つの違いは、日本の国債は95%以上が国内で消化されているのに対し、ギリシャは75%以上を海外に依存していると言う点です。
これは、ギリシャの側から見ればリスクを分散している事になります。ギリシャ国債が紙くずになった場合、損害の3/4以上は外国人が背負う事になります。主としてドイツ・フランスあたりの金融機関です。ギリシャ危機が表面化した当初、ドイツのメルケル首相は「ギリシャについては『自らの宿題をこなす』以外の代替案はない」と発言するなど冷淡でしたが、やがて一転、3年で最大224億ユーロの拠出を可決しました。態度が変化した理由は、ショイブレ財務相の「ユーロを防衛しなければならない」という発言に尽きます。当初はギリシャの自力解決を期待したが、とても無理。このまま放置すれば、破滅するのはギリシャだけでなくドイツの金融機関が巻き込まれる。更に統一通貨のユーロが道連れにされ、ドイツ経済がダメージを受けてしまうことがはっきりしてきた。メルケル首相やEU諸国は優しくなった訳でなく、救済に乗り出すコストと放置した場合のコストを比較した結果の豹変なわけです。
で、日本です。日本国債の償還に問題が生じても、直接に損害を受けるのはほぼ(95%)日本人だけ(僅かに中国が買っているようですが。)通貨も日本だけが使っている独自通貨。巻き込まれることはありません。国際社会にとって日本国債は「Too FAR to SAVE=利害関係が薄過ぎる」ように思います。
もちろん、世界第三位の経済大国が大混乱に陥ることを国際社会は望まないでしょう。救えるものは救いたいでしょう。でも、95%以上が内国でファイナンスされている国債の償還に本気で行き詰ってしまったら、それは、高インフレによって債務を帳消しにしつつ、通貨の大幅下落によって輸出競争力を持ち上げて産業の復旧をはかることが、世界にとっても日本にとっても一番合理的な処理方法なので、世界はじっと、処理が終了するまで見守っているでしょう。

当のギリシャ国民は、融資の見返りに内政干渉と言える財政再建を求められ、増税や公務員給与・年金の削減などが行われることに逆恨みのような批判を繰り広げているようですが、EUから「金を出してもらえて干渉してもらえる」ギリシャは幸せなのではないでしょうか?。
日本は、IMFが「破局が起きる前に増税に着手して財政を何とかした方がいいよ」と言ってくれている間が花、でしょう。