水色あひるblog

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フクシマ以降の原発立地政策

現在、世界で最も原子力発電に寛容なのは誰でしょう?。原発推進政策を堅持すると表明しているオバマ大統領やその支持者より、欧州の原発大国フランスの当局者よりももっと原発に好意的なのは、東京で暮らす人々でしょう。今はまだ顕著ではありませんが、夏になって深刻な停電被害を経験すれば多くの人が、「停電が無くなるならウチの隣に原発を建ててくれても構わない」と言いだすでしょう。

東電はこのチャンスを逃すべきではなりません。これまで、東京に原発を建てるのは現実的にコスト的に不可能と言われてきました。でもそれはフクシマ以前の話。東京の人も福島や新潟の人も、同じように原発立地を嫌がる前提での計算です。どこの地域の人も同じように原発を嫌がり一人当たり同額の補償費を必要とするなら、人口の多い東京に原発を建てるのは高コストになります。今までは同額でさえなく、ロクな産業が無い田舎の人間は安い金で買収可能なのに対し、金持ちな東京人を金で説得するにはずっと割高な金が必要でした。高額×大量人口=事実上不可能だったのです。
でもこれからは違います。福島や新潟の人は今回の事で、普段自分たちが電気を使っている訳でもないのに事故が起きれば苦痛と恐怖だけ押し付けられることがはっきりしたので、補償相場は高騰するでしょう。場合によっては、無限に金を積んでも容認派を多数派にできないという事態も想定できます。他方で東京の人達は、エアコンが動かない・冷蔵庫の中の食物が腐っていく生活をしばらく経験させてやれば、「もう補償費なんていらないから、お願いだから原発を建てて下さい」と泣き付くでしょう。大量の人口と土地代の高さを考えても、東京の方がコストが安いという事態が起きるかもしれないのです。素晴らしい。新潟から300km、高圧送電設備を建てるコストも長距離送電によって電力がロスするコストも回避できます。
停電の兵糧攻めで夏の間中苦しめた後、お盆が過ぎたあたりに「どうでしょう。ここは一つ、東京付近に原発を建てて停電をなくす、なんていう案は…。ダメすかねぇ?。」と提言すれば、東京の人達は歓迎する気がします。

東京と言っても、浜離宮公園やお台場に建てるとなるとさすがに問題があるかもしれません。費用より、半径20-30km以内に住んでいる人間の数が多過ぎると、万一の際に避難が困難でパニックを起こしそうです。しかし「東京に」と言う言葉を、「東京電力が給電しているエリア内に」と読めば、決して不可能ではない気がします。茨城・千葉・静岡など、都心から直線で80-100kmくらい離れていれば何とかなるのではないかと思います。米国ニューヨークには、マンハッタン島から56kmの距離にインディアンポイント原発がありますが、今まで何とかなっていました。(皮肉にも、フクシマ事故を受けてNYではインディアンポイント原発閉鎖要求が高まっています。が、それはもちろんNY市民が電力不足や計画停電に直面していないからできる贅沢な要求です。)
立地を打診された地域では反対運動も起きるでしょうが、給電を待ち焦がれている3000万人から「空気読め!。原発建設に反対してんじゃねーよ。」という罵声が飛び交い、反対運動は強い圧迫を受けるでしょう。

そもそも、建てる発電所が火力ではだめなのか?、という意見もあるでしょう。個人的には、この先の新興国の経済発展を考えるとLNGや石油に発電能力の殆どを依存するのは、それはそれで大いにハイリスクな行為であるように思えます。今回、原子力のリスクを実感したように、化石燃料にも「輸入依存」という質の異なるリスクがあります。原子力に懲りるあまり火力に一本化するのは避け、リスクは分散しておく方が良いのではないかと。
東電は、これまで原発が支えてきた電力の大きさを最大限にアピールし、火力だけで賄うのは大変ということを今から強調しておくべきでしょう。