水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

株式会社労働組合

11年春闘は16日、相場形成に影響力の大きい自動車、電機大手各社の経営側が労働組合の要求に回答した。焦点の年間一時金(ボーナス)は、前年実績を上回る回答が目立ち、トヨタ自動車富士重工業は要求通りの「満額回答」だった。

http://mainichi.jp/select/biz/news/20110317k0000m020067000c.html

大震災報道の陰に隠れるようにひっそりと春闘が行われ、ひっそりと決着しつつあります。この状況に、労組の幹部たちが安堵のため息をついているかもしれません。

連合が10年に続いて掲げた非正規雇用労働者の処遇改善については、「デフレの影響で経営側が慎重だったところに、地震の影響でさらに見えなくなった」(関係者)との声も出ている。

地震が無ければ、連合やその配下の労組が相変わらず労働者、とりわけ立場の弱い非正規雇用者の権利を守る団体としての役割をマトモに果たしていない事に批判が集まった可能性がありますが、今はそれどころでありません。経営側と協力して、誰にも気づかれないうちに春闘を終わらせようと努力している様が脳裏に浮かびます。

日本の労働組合が経営者にすり寄るばかりで労働者の代表として機能しない原因の一つは、大企業の労組に多い「ユニオンショップ制」にあるように思えます。
ユニオンショップ制とは「使用者が労働者を雇用する時は、労働組合員であってもそうでなくても構わないが、雇用された労働者は一定期間内に労働組合員にならなければならないとする制度」(wikipedia「労働組合」)です。つまり、A社に入社すると、本人の意思に関係なく事実上自動的にA労働組合にも加入する仕組みです。結果、この労組が労組としての役割を果たしていようがいまいが、社員が労組の取り組みに満足していようがいまいが関係なく、ヒラ社員の人数×一人当たりの組合費だけの金額が、固定的に労組に転がり込んでくることになります。固定的、というところがミソです。
もしあなたが会社の経営者だとして、営業努力をしても全くしなくても親会社から毎月定額の発注が来ると保障されているとして、経営努力をしますか?。製品開発をしても売上は増えないし、逆に既存製品の改良を何もしなくても同額の売上が保障されています。これは税金で給与が保障されている官僚と同じで、普通なら努力する意欲が無くなるでしょう。むしろ波風立てず経営陣と仲良くしておく方が得策です。連合やその配下にある大手企業労組にとって、最重要なのは経営側との協調関係、二位は正社員の雇用(正社員が解雇されれば組合費収入が減りますからね)。組合費を払っていない非正規雇用など、本音では正社員の既得権を犯す脅威でしかありません。

労組幹部の意欲を削ぐユニオンショップを禁止してはどうでしょう。労組に入りたい人=労組が入るに足る働きをしていると考える人だけが任意で加入するようにするのです。労組が組合費に見合う働きをしていないと評価されると脱退される=売り上げが下がるとなれば、組合幹部も必死に努力するでしょう。その上で、企業の枠を超えて労組同士で自由に競争してもらいます。
例えば、トヨタ自動車の労組が日産自動車本田技研の労組より労働者の権利保護にしっかり取り組んでいるとします。その場合、日産や本田の社員でも、希望者はトヨタ労組に加入できるようにします。トヨタ労組が、日産や本田の従業員である組合員のために日産や本田の経営陣とも交渉するのです。やがて組合員の過半数がトヨタ以外の社員になった頃、トヨタ労組はトヨタという名を捨て、例えばT-UNIONとかいった独立した名称を持つのです。もちろん、T-UNIONに能力があるなら自動車産業以外の企業の社員が加入するのも自由です。
同様に、小売業関係に強い労組とか外食産業専門労組とか女性の権利保護に特化した労組とか、ワンコイン月々の組合費100円で引き受けますと言った価格破壊型労組とか、外資系企業との交渉が得意な労組とか、いろんな組合が出てくるかもしれません。高い信頼を集めて何十万人もの組合員を抱える大労組が、遂に上場を果たすかもしれません。(いやまぁ現実には無理なんでしょうけど。)
労組こそ、顧客満足度を競うべき「産業」のはずで、企業ごとに経営陣と仲のいい労組が「独占受注」している現状は、労組の姿を歪めていると思います。