プロ野球中継が、地上波テレビに帰ってくるのが先か、それとも
実は今日からプロ野球日本シリーズが始まっているそうなのですが、地上波テレビでの全国中継はありません。*1J SPORTS2という有料ch(CSまたはCATV)でなら見る事が出来ます。中日vsロッテという不人気球団対決になった不運もあるでしょうが、ペナントレース中からテレビ中継は激減していました。巨人戦も含めて。ビデオリサーチの調べによると、関東地区で2005年には129試合あった巨人戦ナイター中継が2009年は32試合、2010年は27試合へと減少しています。1994年に23.1%あった平均視聴率が2010年には8.4%に下がったのだから仕方ありません。
その原因は、プロ野球がもはや国民的人気を失ったからだと言う意見もあります。でも、
観客動員数を見ると(実数発表になったといわれる)2005年以降、巨人は横這い、セ・パ各リーグの合計はむしろ微増傾向です。人気が無くなったのはプロ野球ではなく、おそらく地上波でテレビを見ると言う習慣の方なのでしょう。
メディアでの放送という枠で考えると、ＡＭラジオはシーズン中うるさい位にプロ野球中継をしています。有料のＣＳテレビは別として、何故同じ無料のＡＭラジオにできて地上波テレビは中継できないのでしょうか。
放送権料もさることながら、壁になっているのは「視聴率への期待値」だと思います。
地上波テレビ全体の視聴率が下がっているのでなく、あくまで人気番組のタイプが変わった(移った)のだと。経済学っぽく言えば、デフレではなく個別価格の低下・相対価格の変化にすぎないはずだという執着です。プロ野球中継は人気を失った。でも他にもっと人気のある番組があるはずだから、プロ野球中継を辞めて何か違う番組を放送すれば視聴率20%超を取り戻せるはずだ、と。（逆にＡＭラジオは聴取率への期待値が低いので、野球中継程度の数字で十分満足しています。）
◆
視聴率期待値は高い。でも期待値を実現させる番組はなかなか無い。それが、これまでずっと地上波テレビのワンパターン化を生んでいました。例えば最近一時期「若手芸人を多数呼んで、一組一分程度の短時間で次々ネタ見せをするパターンが数字を取れる」となって、どの局もコピペのような番組を放送していました。日中は各局が芸能ワイドショーばかり放送していた時代もありましたし、最近の夕方の長時間ニュース番組も横並びの似たような企画ばかりです。
でも、確実にデフレは進行しています。萩本欽一氏が欽ドン・欽どこを放送していた頃の期待値は30%。90年代の巨人戦の期待値は20%。今、ドラマのワンクール平均視聴率が15%超えていれば大勝利でしょう。garbagenewsというサイトで、ゴールデンタイムの総世帯視聴率が90年代末の70%程度から、2010年上期には約63%に下がっていると紹介されています。6局で60%強ですから、平均では各局10%になります。そこを平均より勝って15%がせいぜいというのが現状です。
この先もう少し防衛線が下がって期待値がヒトケタに下がれば、テレビは大きく変わるのではないかと私は想像します。視聴率ヒトケタというのは低予算の深夜番組の世界です。そして深夜番組はゴールデンより自由です。タモリさんが空耳を聞く番組とか、ビートたけしさんが数学の問題を解く番組とか、田原総一朗さんと論客が言い合う番組とか。フジがすぽると！を流す一方でテレ東はＷＢＳとか。不意にＮＯＮＦＩＸのような地味なドキュメンタリーを流していたり、情熱大陸だったり。
期待値が下がると予算も下がりますが、ニッチで異質な番組でも目標をクリアできるので、一つの正解に殺到せず解が複数に増えるのだと思います。ゴールデンでは音楽番組は絶滅寸前ですが（トークに特化した『うたばん』も消えましたが）、深夜には多数あります。
野球中継も帰ってこれるでしょうし、それも全国一律巨人戦でなく、地域ごとに地元チームの試合が流せるかもしれません。どのchをつけても同じおバカタレントの顔を見ることも無くなるかもしれません。
◆
でもそうなると、全く逆の可能性が出てくるかもしれません。世帯視聴率が5%とか8%しかない「テレビ」というメディアに地上波の電波を独占的に使わせてよいのか？という疑問です。いっそ、テレビはCSかCATV、又はネット経由に移行してもらって、貴重な電波を返還してくれという声が出てくるかもしれません。
ひょっとして、東京スカイツリーはテレビの電波を出さない、という事態になるかも…。そうなれば、関東地方の人達は、東京タワーに向けて設置したUHF用アンテナをスカイツリーに向けなおす必要はなくなるかもしれません。
期待値が下がってプロ野球中継が地上波テレビに帰ってこれる日が先か、もしかして、先に地上波テレビがなくなるか…。などと妄想しています。
