水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

消費者は、どの程度まで猿なのか

オンワードよ、お前もか。」という感じですが、アパレル大手のオンワード樫山が、「下取り付き割引商法」に参入してきました。
「23区」「自由区」衣料品引き取りリサイクル
ちょっぴりハイクラスさを演出するため、「これはエコ目的なんです」というタテマエを設定しますが、要は不用品を持ち込めば割引券がもらえるパターンです。
ヨーカドー、下取りを50品目に拡大、傘、やかんなども対象(3月)
2008年12月にイトーヨーカドーが、衣料品を一定額購入したお客様に対して古い衣料品の現金下取りを実施したところ大ヒット。回を重ね、対象を日用品・台所用品・小型家電品へと拡げています。それを見て、まねっこ企業も続出。
そごう・西武も婦人物の下取りで割引券(5月)
現金でなく割引券で返すあたりが、百貨店のプライドなのでしょうか?。


この商法と普通の割引販売を、消費者側から比較するとこうなります。(A)従来→(B)今回の企画

(A)古い衣料品(または靴・鍋etc)は保有したままで、3000円購入すれば500円割引される。
(B)古い衣料品(または靴・鍋etc)を手放して、3000円購入すれば500円割引される。

率直に言って、(B)は(A)より損をしています。もし下取りに出したものが「外出は無理でも部屋着にはなるシャツ」や「ちょっと凹んでるけどまだ使える鍋」であれば、同じ500円の利益を得るために(A)は何も失わず、(B)の消費者は便益を減らしているのですから。
下取り品が全く使えないボロであったとしても、利益はどちらも500円でイーブン。単に捨てればいいものを、わざわざ店舗まで持参している事を考えれば、やはり消費者は余計な手間=コストを被っています。
つまり合理的に考えれば、(A)単なる割引セールに比べ、(B)下取り付き割引セールで客が増加する理由はありません。にもかかわらず、ヨーカドーが驚いて何度もこの手法を繰り返し、まねっこ企業が続出するほど多くの客が詰め掛け、店は(下取り品の処分コスト考えても)大儲けしています。
更に、二品・三品と下取りさせて割引額を1000円・1500円に増やそうと、あれこれかき集めて6000円・9000円購入していく客も多数いますが、果たしてそれが全て「必要な購入物」だったのか怪しいところです。
こうして見ると、消費者の行動は「不合理極まりない」、もっとはっきり言えば「自分がなんら得していない事に気付かないおバカ」と言わずにはいられません。


まねっこ企業が続出する中、ヨーカドーはもっとヒドイ手法も実施しています。

 イトーヨーカドーは5日、衣料品や住居関連商品を買うと25〜5%が返金されるキャッシュバックセールを全167店で始めた。(中略)商品を値引き販売するよりも「現金で払い戻した方がお得感が出る」との判断からだ。(中略)返金を行う特設レジには、レシートを手にした主婦らが列を作った。

http://news.www.infoseek.co.jp/topics/business/n_supermarket2__20090907_2/story/20090906_yol_oyt1t00388/

この手法も2008年末から間歇的に実施しているようですが、つまり消費者はわざわざ一旦高い金額で商品を買って、レシート握りしめて長い行列に並び、面倒な手続きして自分が払った金の一部を返してもらうのです。もうここまで来ると意味が分かりません。消費者はただ疲労するだけですが、それでも単に割引セールするよりもこの方が客が押し寄せて収益が上がる限り、ヨーカドーとしては止める理由がありません。


両手法の違いを考えると、(A)通常の割引セールが「客の支払額が減少する=控除」であるのに対し、(B)異様な手法の共通点は「客側が現金や金券を受け取る=給付」だということです。
商品を買って金を払うべき自分が、店からで金を(または金券を)受け取っている、という状況が消費者を興奮させ、脳内にエンドルフィンか何かをドクドク湧き出させているのでしょうか。
この購入の仕方が自分にとって利益になっているのか?を理性で考えるより、本能的な興奮に従って行動する人が世の中には多いのかもしれません。


なんとなく「朝三暮四」という言葉を思い出します。
朝三暮四(音声読み上げがあります)
「下取り」という手法は昔からありますが、それは車や大型家電のように「新しいものを購入するためには、今所有しているものを撤去する必要がある」商品の買い替えを促進するもので、衣料品や靴のように「何点でも追加所有できる」ものには意味が無い…はず…でした。ヨーカドーも多分、「こんな手法で販促効果が出るはずないよ」という社内からの批判を受けつつ「試しにやってみた」のではないかと想像しています。ところが、こんなことになっちゃって…。
おじさんも、まさかこの説明で猿が納得するとは期待していなかったのではないでしょうか。悪いのは、おじさんなのか猿なのか?。


そりゃ、猿だよなぁ。