水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

鰻重からイチ抜けする成算

うなぎの絶滅がいよいよ差し迫ってきた感じがします。

www.chunichi.co.jp

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記事の一部を引用すると、

 比較的早くシラスウナギ漁が始まる鹿児島県によると、解禁された昨年十二月十日からの十五日間の漁獲量はわずか〇・五キロ。四三・四キロの漁獲があった前期の1%ほどにとどまった。宮崎県は漁獲量を公表していないが「今期はかなり悪い」(水産政策課)状況。関係者によるとやはり前期の1%程度でしかない。

漁獲量が前年の100分の1。

 

大手スーパーやコンビニを経営している方々に聞きたいのは、まだうなぎを売り続けるつもりですか? 手を引く気はありませんか? ということです。「手を引く」と言っても、倫理的な決断を求めている訳ではありません。手を引く方が金儲けにつながる可能性があるのではないか?という問い掛けです。

うなぎが本当に枯渇し、仕入れ不能となった場合を想像してください。消費者は大手スーパーやコンビニを激しく批判するのではないかと思います。「お前らが安易に、金儲け主義でうなぎを大量に売り続けたからうなぎは絶滅してしまった。責任を取れ!謝罪しろ!うなぎを返せ!」という声です。自分たちがうなぎを大量に食べたことは棚に上げて。
もしかするとそこで「食品廃棄」という問題が持ち出されるかもしれません。うなぎに限らず、クリスマスのケーキでも節分の太巻きでもそうですが、当日になるとアホのように大量の商品が店頭に並ぶ。とても捌けそうに見えない。で、実際に売れ残り、夕暮れには「見切り品」シールが貼られ、それでも売れず、夜更けにゴミ袋行きになる。大量の大量の、大量の食品廃棄。
うなぎが絶滅したのは、スーパー・コンビニが食べる量をはるかに上回るうなぎを殺してきたからだ。それが原因だと消費者は責任を供給者側に押し付けるかもしれません。

もし仮に、他社に先駆けてうなぎの販売から手を引いていたら? この糾弾から逃れて、更には他社を批判する側に回れるのではないでしょうか。今からn年後、本当にうなぎがいなくなってしまった時、世間がうなぎ絶滅で大騒ぎになっている最中にこうコメントを出します。
「弊社はn年前からうなぎの販売を全面的に中止してきました。それは、売上の低下をも覚悟してうなぎの保護を優先し絶滅回避に努めてきた為ですが、このような結果になり誠に残念です」
これはつまり「ウチは悪くないですよ」というエクスキューズであり、同時に「糾弾するなら、絶滅するまで平気でうなぎを売り続けたライバルスーパーのA社や大手コンビニのB社を矛先にしてね。何なら責任追及で不買運動でもして、その分ウチで買い物してくれてもイイですよ」という遠回しなメッセージです。

うなぎ絶滅時に生じるであろう「企業の社会的責任」への追及を予想すれば、そろそろうなぎから「イチ抜けた」する損得を考えるべきではないでしょうか。

 

うなぎに代わる商品

とは言え、夏場に鰻重商戦が出来ないのは痛手なので、それに代わる商品を考えます。バレンタインにチョコレートだの、節分に太巻きだのと業界の都合で勝手な押し付けを繰り返してきたのですから、もう一つ増やすことが出来ないことはありません。「土用の丑の日にはウナギ」というネタ自体、平賀源内が発案した販売促進策だというのが通説ですし。

では、何を売るか? 牛肉料理でどうでしょう。そもそも丑の日って「子丑寅…」の丑なので、牛を食べる方が筋が通ります。ローストビーフとかどうでしょうか。日本ではあまりポピュラーでなく家庭で作ることが少ないので、メニュー的に「ハレの日」感があります。これに甘辛のタレを絡めて「ローストビーフ丼」にする、鰻重になぞらえれば「丑重」。

何々の日には何々を食べましょう、みたいな押し付けの長所は、とりあえあずその日は晩御飯を何にするか主婦が考えなくていい事なので、メニューを考える手間と作る手間を省けて、片付けの手間もかからないほうが望ましい。その点、丼や太巻きは汚れる食器がミニマムで理想的です。鰻重に代わって「丑重」。牛なら畜産農家が繁殖と生産を行っているので、海産物のように取りつくして絶滅させる心配もありません。

いち早く、他社に先駆けて撤退することで「善行」をアピールして批判を回避する。新たなブームを創出して先行者利益を取りに行く。

経営者の皆さんに考えていただきたいのは、うなぎの絶滅は時間の問題になりつつある事です。先に掲げたグラフを見てください。ね?ヤバイでしょ? 絶滅して売る物がなくなってから次の手を考えるのか、絶滅前に乗り換え先をあらかじめ用意するのか? どちらが御社の利益を生むか。ご検討をお願いしたいと思います。