水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

こんな世の中で、紙の本を売る方法を妄想してみた

助けて!本が全然売れないの。

平成24年の出版物の推定販売額は1兆7398億円で前年比3.6%減。雑誌は前年比4.7%減の9385億円で過去2番目の落ち込み。書籍は2.3%減の8013億円。雑誌は15年連続、書籍は6年連続で前年割れとなった。(原文を改変し短くしてます)

http://sankei.jp.msn.com/life/news/130125/bks13012523440001-n1.htm

ていうか電子書籍に移行すればいいのに、と思うのですが、昨年末の産経新聞記事によると

電子書籍の利用環境では、作品(コンテンツ)の側面がまだ不十分だ。昨年の紙の書籍の年間新刊出版数が8万点近くだったのに対し、各電子書店で購入できる作品数は5万〜10万点程度。(中略)中小出版社約100社で作る日本出版者協議会(中略)会員企業のほとんどは、電子出版を展開していないという(中略) 24年度の国内電子書籍市場は、前年度比13.4%増の713億円に拡大する見通し (2012.12.27)

http://sankei.jp.msn.com/life/news/121227/bks12122708130001-n1.htm

中途半端に腰が引けてる大手と、まだ電子書籍元年にもならない中小。いまだ微小な電子書籍市場。中小出版社にとってこそ電子書籍はチャンスだと外野の私は思うんですけどね。

電子書籍を無料で配布する

こんな世の中で、いかに本を売るか。成功しているのは「ツタヤ、書籍販売で首位 最大手紀伊國屋を抜く」ですが、その理由が「Tカードの購買履歴を分析し、売れ筋の書籍や雑誌にしぼった品ぞろえにしている」というのは、東野圭吾作品とone pieceseventeenを並べてりゃ効率よく売れるヨという話で、色々な本を読みたい人にとっては寂しい戦略です。そこで、なんとか多様な作品の紙の本の売上を伸ばす方法を妄想してみました。

ジャパネットたかたの社長さんが甲高い声で叫んでいます「東芝の最新型洗濯機が、なんとお値段9万9,800円。でも、それだけじゃありませんよ〜。今お使いの洗濯機を3万円で下取りさせていただきます。どんな古い物でも構いません。壊れていても結構です。下取りがございましたら3万円お得。なんとお値段6万9,800円!!」 じゃあ最初から3万安く売れよと思いますが、洗濯機置き場はどの家庭にも一台分しかスペースがありませんから「今使ってる洗濯機を下取り3万円で売って得しよう」と思わせ、まず洗濯機置き場を空ける決断をさせる。で、空いたスペースに新しい洗濯機を売る、となります。
かつてイトーヨーカ堂が「衣料品を買えば、古い衣料品を下取りする」というキャンペーンを打ち、下取りコーナーに大行列ができたことがありました。あれも、鈴木敏文CEOは著書*1の中で、「みんなクローゼットは一杯だが服を捨てられないでいる。そこで着ない服をお金に変えることが出来ればスペースが空いて、新しい服を買う気持ちが生じる」という趣旨の説明をされていました*2
同じことを書籍でもできないでしょうか。「弊社出版物をお買い上げいただいたお客様。レシートと一緒に、書棚にある読み終えた弊社出版の蔵書をお送り下さい。送料着払いで結構です。お買い上げ1,000円ごとに2冊まで、お送りいただいた本の電子書籍のデータを無料で進呈します。さらに今なら期間限定特別キャンペーン、50冊以上送っていただいた方には図書カード1,000円分をプレゼント〜!!」みたいな。
本が好きな人はみんな書棚は一杯だけど捨てられない。本を買えば入れ替わり蔵書をタダで電子書籍に替えられて、新しく買った本の置き場も確保できる。これなら心置きなく本を手放せます。50冊送って1,000円儲けるために25,000円分の本を買ってくれる人も出てくるでしょう。出版社側は自社新刊が売れて、かつ回収した自社古本は廃棄できるので、ブックオフ100円やamazonマーケットプレイス1円で循環流通して新刊売上を圧迫するのを防ぐ効果もあります。
ぶっちゃけて言えば「レシートと引き換え」無しでも構わない気がします。ともかく電子書籍を渡すからと言って既読本を回収して書棚を空けさせ、その空地を埋める本を買う気にさせる。

自炊屋潰しを止める

これって自炊代行業者が「してくれていた」ことですねよ。電子化で書棚を空けてくれて、自炊する本はスキャナーに通すため裁断するので本として再流通はしなくなる。おまけに、そのコストを出版社は何ら負担しないで済む。

「自炊」代行訴訟、1業者が作家ら7人に謝罪 東京地裁朝日新聞2013年1月21日)
紙の本を裁断・スキャンしてパソコンなどに取り込み、電子書籍化する「自炊」を代行するのは違法だとして、浅田次郎氏ら7人の作家と漫画家が7業者に差し止めと損害賠償を求めた訴訟で、3業者分の第1回口頭弁論が21日、東京地裁であり、うち2業者は争う姿勢を示した。 一方、東京都江戸川区の業者は請求を受け入れ、謝罪すると表明。今月10日にホームページを閉鎖して代行を中止しているとし、7人に計147万円を賠償する

http://www.asahi.com/national/update/0121/TKY201301210247.html

2011年12月に始まった、有名作家陣による自炊代行業者への戦争は今も続いていました。電子化ファイルがネット上に流れ出すことへの危惧はわかりますが、不正流通ではなく、代行自体を「私的複製の範囲ではない」と主張し殲滅戦に持ち込んだのは法的に強引ではありませんか?(2業者が争うなら、判決が楽しみです) 読み終えた本をわざわざ金払って電子化するほどの本好きは、書棚が空きしだい新刊をせっせと買ってくれそうなのに、代行禁止は自分で自分の首を絞めている気がします。
むしろどこかの出版社が自炊屋を買収するか子会社で経営して「不正流通させない自炊屋」を確立してはどうでしょう。そこでどんどん自炊させれば、電子書籍無料配布に参加してくれない出版社の本の分も書棚が空きます。

書店をパチンコ屋化する

ともあれ「読み終えた本の回収&電子書籍データ提供」モデルは、突き詰めれば「読み終えるまで電子化を待つ必要あるのか?」となります。そこで、今度は書店にパチンコ屋になってもらいましょう。
書店を出て一歩路地裏に入ったところに怪しげな窓口があり、そこに今買った本と手持ちの端末を差し出すと、端末に電子書籍データを入れて返してくれて、本は回収される。本が、電子書籍受け取り権を示す「特殊景品」になるわけです。書棚に飾りたいような本は電子化せず持ち帰ってもいい。書店が本を売るという既得権を守りつつ、消費者は今から読む本も電子書籍で入手できます。
これなら「ついで買い」も誘えるかもしれません。あれも読みたい、これも面白そうで何冊も買うと、今までなら重くてカバンにも入りきらなくなりますが、路地裏まで頑張って運べば、帰りは端末だけになります。
回収した本は即座に書店に再陳列。最少の在庫で無限に循環販売ができるので、「12年は本当に本が売れなかった。新刊書籍が6〜7割返品されるのも当たり前になってしまっている(BusinessJournal 2013.01.05記事)」などという資源の浪費もせずに済みます。また、売れ筋の本を平台に何列も積み上げる必要がなくなるので、書店は、同じ床面積で今よりずっと多種類の本を品揃えすることができます。素晴らしい。

などと妄想していたら、amazonさんが何やら始めていました。

周回遅れの妄想

何やらっていうか、amazon AutoRip 凄いですね。CDを返納(笑)する必要もなく、98年以降に買ったCDについてMP3データが無料でcloud上で手に入る。言っといてくれたら、98年以降はCD全部amazonで買ったのにーって、まぁ日本はサービス対象じゃないけど。
IT mediaは「Amazonが開始したAutoRipは電子書籍にも広がるのだろうか。わたしたちの考えではイエスだ。」という刺激的な予想記事を書いています。これは私が書いたようなリプレイス販促目当てじゃなく、amazon経由で買えばお得で便利という囲い込みですよね。書籍でも近い将来同じサービスが出るかもと期待すれば、これから本買うときはamazonで買うでしょうし。スゴイなamazon。私の精一杯の妄想も周回遅れな感じ。
ていうか、日本の出版界はどうするんだろう、これから。

*1:朝日おとなの学びなおし 経済学 鈴木敏文の実践!行動経済学

*2:実質、最大二割引きで衣料品を売っているだけなのに踊らされる消費者はサルすぎる。と私は以前blogで批判しましたが、もちろん正しかったのは私の理屈じゃなく拡販に成功した鈴木氏の方です