自民党に圧勝をもたらしたのは、むしろ自民党に投票しなかった人たち
今回の衆院選は、自民党の圧勝・政権奪回となりました。一体どのくらいの票が自民に流れるとこんな大転換になるのかと思い、前回、2009年の選挙と得票数を比べてみました。*1
今回、自民党の得票数は減っています。2009年、政権から転落した時よりも更にざっくり200万票(小選挙区で166万票、比例代表で219万票)も支持を失っているのです。支持がますます減っているのに圧勝? その理由は、民主党が桁違いに票を失っているためです。実に2000万票(小選挙区で1988万票、比例代表で2058万票)。でもそれだけなら「自民が少し議席を減らし、民主が壊滅的に議席を減らし、その分、新興第三極なり古参左翼政党なりが議席を増やして党派別議席数が分散する」という結果になっていたかもしれません。
そうならず自民圧勝となった一因は表の一番下の行の通り(投票率が下がり)投票総数が1000万票減ったことです。
比例代表でみると自公の得票が計312万票減っていますので、差引、707万票の「反・自公」票が投じられなかった(前回比で棄権が増加した)ことになります。小選挙区でも同様に、自公は156万票減り、反・自公の棄権増は940万票にもなります。これらの票、一人ひとりの事情は様々でしょうが、典型的なパターンは「前回は民主に入れた。が、期待は裏切られたので今回は入れない。でも、自民に戻すのはイヤ。さりとて第三極は…、前回民主に夢見たように、また違う政党に夢見るのは空しい。どこにも入れたい政党がないから、もう投票しない」みたいな感じではないかと想像します。
そうした、反・自公な人たちが「投票しなかった」ことが、皮肉にも、自民の得票「率」を上げて自民の勝利を加速させたわけです。
衆院で再可決可能になる三分の二ラインは320議席。結果は自公で計325議席。この480分の5という約1%の大きいこと。私の知識では、小選挙区940万票、比例代表707万票で議席がどれくらい動いたかわかりません。特に小選挙区はwinner takes allなので、そう単純ではないでしょうが、940万票や707万票が棄権されず自公以外のどこかに投じられていれば、320議席という重要な一線を突破することはなかったのではないかという気がします。
選挙に行くことが大事なのは二重に意味があるのだなぁと感じました。自分がどの政党・政策を支持するか一票を投じて意思表示することが政治を決める、だけでなく、票を投じないことも同様に(場合によっては票を投じる以上にダメ押し決定打として?)政治を左右してしまう。かつて森総理(当時)が「無党派層は寝ていてくれればいい」と発言したと報道されたことがありましたが、まさに森氏の言葉通り、自民に投票しなかった人が940万票も「ふて寝」してくれたおかげで、自民党は圧勝できたのです。