水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

人口減少戦線と本土東京の遠い距離

かつての東京、今の東京

かつて東京は日本の先頭に立っていました。高度成長期からバブルまで、日本全体が経済成長して人口が増加する中で、東京は「とりわけ」経済成長して「とりわけ」人口が増える。日本全体が進むベクトルの先端に東京がいた訳です。
でも今の東京は違います。国の人口減少がすでに始まっている中で、東京は日本が進んでいる方向の先頭ではなく、最後尾に位置しています。それも本体から随分遠く離れた場所に。
日本の総人口は2008年をピークに減少に転じており、減少局面に入り既に10年です。
しかし東京都の予測では、都の人口は2025年頃まで増加を続け、23区に限れば2030年頃まで増加し続ける見通しになっています。

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グラフを見ると、下がり続ける青線(全国)を尻目に、緑線(区部)はこの先まだ10年以上人口増加が続きます。
日本の生産年齢人口は1995年がピークでした。もう20年以上も前の話です。これも東京都の予測では、都では2025年頃まで増加する見通しです。(グラフにはありませんが、もしかしたら区部はやはり2030年頃がピークかもしれません。)
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上のグラフは、1995年の生産年齢人口を100とした相対的な変化です。減り始める時期が、全国と東京で30年、右にシフトしているのが分かります。
日本がずぶずぶと沈んでいく中で、東京だけ別世界にいるようです。

 

赤字国債を支える東京

もしかすると、日本が今なお毎年巨額の赤字国債発行を気軽に続けていられる一因に、東京と東京以外という二重構造があるのかもしれません。
東京は人口的成長を続けているので、東京の中にいるとそれが「普通」に思えます。規模の拡大が継続しているのだから、累積している国債もその中で消化していける気がしてしまう。一方で東京以外の人たちは、「国債を発行しているのは東京の政府なのだから、東京が大丈夫と言うなら大丈夫なのだろう」みたいに、他人事だと考えてしまう。
以前に読んだ何かの本にあった「東京にいる限り、日本のことは分からない」という一文を思い出しました。東京の中にいる人たちには、そこが隔絶された竜宮城であることは分からない。それが楽観を支えている気がします。

 

ニューヨークとロンドンと東京

アメリカやイギリスは日本より出生率が高く、かつ移民を受け入れていることもあり、今後も人口は増え続ける見通しです。 

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驚くべきことに、両国とも生産年齢人口さえ、まだ増えています。
その意味で、ニューヨークやロンドンが今なお国家の規模拡大というベクトルの先端にいるのと、東京は全く異なります。東京の繁栄は、過疎化が容赦なく進行している国の実態を覆い隠しています。

 

ガダルカナルサイパンと東京

今の東京を考える時、私は昭和18年ごろの東京を連想します。

生産年齢人口は1995年と言う遠い昔に転換点を通過し、総人口も2008年から減少し続けている。
2017年に秋田県の人口は100万人を割って、ピークである1956年の約135万人から26%も減り、

www.nikkei.com

今年9月に岐阜県の人口は1983年以来およそ35年ぶりに200万人を割り込んだ。

www.gifu-np.co.jp

猛烈な勢いで人口は減っているのだが、でも東京にいると事態の深刻さが分からない。

ミッドウェー海戦と言う転換点は昭和17年6月にとっくに通過し、昭和18年2月にガダルカナル島から撤退、6月のマリアナ沖海戦と10月のレイテ沖海戦で大敗し、神風特別攻撃隊の開始。猛烈な勢いで戦線は後退しているのだが、戦地は遠く、東京には事態の深刻さが伝えられない。

戦争では、昭和19年7月にサイパン島の日本軍が玉砕し、その後マリアナ諸島全体を占領したアメリカ軍は同年11月にB-29による日本本土爆撃を開始します。翌20年3月に東京大空襲。ここでついに東京の人たちも「直接的、かつ徹底的」に事態の深刻さを思い知らされます。

人口問題の東京大空襲は、いつ、どんな形で始まるのでしょうか?

 

 参考資料

日本の人口に関する数字は、

http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp29_gaiyou.pdf

こちらの資料のpdfの19/62、ノンブルではp.17「出生中位・死亡中位推計」より引用。
東京都の人口に関する数字は、

https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.jp/basic-plan/actionplan-for-2020/plan/pdf/honbun4_1.pdf

こちらの資料及び、統計メモ帳

https://ecitizen.jp/Population/Prefecture/13

からの引用。
アメリカとイギリスの人口に関する資料は、こちらを引用。

www.garbagenews.net