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水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

消費税増税に適したタイミングは「毎年」という話

OECDのグリア事務総長が来日し、消費税増税について以下のように発言しています。

グリア氏は会合で、経済状況の条件が整えば「2%の引き上げは予定通り完全に実施されるべきだ」とする一方、条件が許さなければ「毎年1%ずつの段階的な引き上げを2回(年)連続して行うことが望ましい」とし、(中略)中長期的には「消費税率は15%に引き上げる必要がある」と提言。その際も毎年1%ずつの引き上げが「最善」だとも語った。

http://newswitch.jp/p/4319

私は賛成です。選挙対策増税再延期論が強まっていますが、せめて1%増税はするべきと考える理由を書きます。

増税タイミング論の困難さ

消費税増税について「増税は仕方ないが、今はすべきでない。もっといいタイミングを計るべき」との意見があります。しかし、いいタイミングとはいつでしょう。景気が悪い時は「増税すれば不況を悪化させる」と反対され、好況時に増税しようとすると「せっかくの好景気を腰折れさせる」と反対されます。結局、いつ増税しようとしても反対されます。「好景気が持続して、経済成長が定着してから増税すべき」という意見もあります。まるで新幹線は急に止まれない、みたいな言い方ですが、経済成長が「定着する」なんて無理です。日本のバブルもアメリカのバブルも急激に崩壊し、そこに慣性の法則なんてありませんでした。
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日本のバブル崩壊以降の実質成長率推移のグラフです。この24年間で、具体的にいつが増税に適した年だったでしょう?
「好景気の持続」として、実質成長率1.5%以上が複数年続いた時期を丸印で示しています。二か所あります。一つ目は1994年度~96年度の3年間。つまり、97年の消費税増税は、タイミング論的には「好天に恵まれて増税日和」だったのです。でも実際は、消費の反動減、夏からアジア通貨危機、秋冬に金融機関破綻連発のトリプルコンボで景気は沈没しました。経済成長は定着なんてしてなかったのです。
もう一つは2003年度~07年度の5年間。戦後最長の景気拡大期です。もしこの期間中、例えば2005年か06年に消費税増税していれば、ダメージは少なく済んだだろうと思われます。なぜならこの好景気は日本経済の自力ではなく、アメリカがアホほど巨大なバブルを膨らませ、その金で日本製液晶テレビや自動車を買い続けていたからです。しかし、そのタイミングで増税できたか怪しいでしょう。「1997年の失敗を忘れたのか?」と誰かが言いだします。「好景気2年や3年で見極めはまだ時期尚早だ! もう少し『定着』するのを待て」などと言ってぐずぐず1-2年遅らせると、それはリーマンショックが起きる年に増税する結果にもなりかねません。策士策に溺れる。景気の先行きを予知できない人間が「最適なタイミングを計る」なんて無理です。かつて安倍総理自身が言っていたように「リーマンショックが来ない限り再延期しない」が正しいと私は思います。

増税が大波乱を巻き起こすのは、増税が珍しいから

国民所得に対する租税及び社会保険料の負担率推移をグラフにしました。
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これで見ると、トータルで見て負担が増しているのは実は税より社会保険料だとわかります。しかし、消費税は時に内閣が倒れるほどの議論となり、「景気が悪化した」と批判され「延期!中止!」の大合唱になるのに対し、社会保険料はそう騒ぎなりません。その理由は、社会保険料は二重に「小刻み」だからです。料率の引き上げは一回当たりコンマ何%の桁。その代り、厚生年金保険料などは毎年上がり続けています。毎年反対論が起きないのは、同じことが繰り返されると人は慣れて飽きて反応しなくなるからです。
たとえば不祥事騒動などでも、最初に発覚した人は猛烈な、時に過剰な批判を受けるのに、その後二人目三人目と出てくると一人目ほど騒がれずうやむやになるパターンがあります。繰り返しに飽きるからです。
私は、日本人は消費税増税に対し過剰に反応していると思います。それは、消費税増税が珍しいから。めったに起きない大事件だからです。大騒ぎになることで自己実現的に経済への影響も大きくなります。

小刻み増税のメリット

グリア氏が主張する「1%ずつ増税」に賛成するのは、繰り返しによって人々が増税に慣れて過度に反応することに飽きれば、必要以上の景気変動を起こさず「消化」できるようになると期待するからです。毎年3月に買いだめに走るのに飽きれば、4月からの反動減も浅くなります。
グリア氏が「中長期的には税率15%に」と述べたように、日本の消費税は10%で止まれるはずがありません。欧州諸国よりも高齢化比率が高く債務は巨大なのに、欧州諸国よりずっと低い消費税率で済ますというのは魔法でもなければ無理な話です。1%増税に慣れれば、その先に財政破たん回避の細道が残ります。
10%への引き上げは、本来2015年10月の予定でした。17年4月へ一年半延期されており、これを再度延期すると国民の間に「やっぱり消費税増税は大変なことだ。めったにできない大事なんだ」という認識が強まり、将来増税しようとする時に更に強いアレルギー反応を起こし拒絶されます。内閣を二つ潰す覚悟がないと増税出来ない、なんてことになれば増税は実質不可能になり財政破綻一直線になります。
税率引き上げ幅を小さくする。その代り、繰り返し上げる。私はいい策だと思います。

消費税増税の国民負担を穴埋めする方法

とは言え、私も負担増はイヤです。そこで、消費税増税しても負担が増えない方策を考えます。一つは原子力発電所の再稼働です。
www.sankeibiz.jp
原子力発電所を止めたことで生じた火力発電燃料の輸入費用増加は、(対2010年比で)2013年度は3兆6000億円、14年度は3兆4000億円、15年度は資源価格下落で2兆3000億円でした。消費税1%分の増税金額は2.7兆億円程度です。今後の原油相場次第ですが原子力発電所を動かせば燃料費減がおおよそ消費税負担1%くらいの金額になります。つまり、国民は政府に対し2兆7000億円多く払うが、LPG産出国に払う金が同程度減るので、差引で負担おおよそゼロに相殺できます。川内原発は熊本地震を乗り切った訳ですし、そろそろ原発アレルギーも沈静化してLPG産出国に無駄に国民の金を渡すのを止めていい頃合いではないでしょうか?
実現すれば2017年増税分は国民負担なしにできます。2018年以降はTPPやら、いつのまにか消えてしまった旧三本目の矢「成長戦略」を復活させるなど、いろんな施策で国民のサイフが増税分以上に穴埋めされるよう努力することにして、財政再建を放棄するわけではないと示すためになんとか1%ずつでも上げませんか?

おまけ

最後に一つ、2017年に1%だけ上げるおまけのメリットを紹介します。
www.komei.or.jp
公明党自民党の間で、「消費税の軽減税率について、2017年4月からの消費税率10%への引き上げと同時に、(中略)導入する方針を確認」しています。なので、9%への引き上げなら軽減税率導入は不要です。だって10%じゃないから!
これで馬鹿げた政策を先送りできます。2018年には、標準10% VS 軽減9%で軽減税率に意味があるのかを議論しましょう。そして意味はないと判断して軽減税率導入を中止しましょう!

参考資料

日本の経済成長率は、「社会実情データ」サイトの「経済成長率の推移」から数値を引用しました。
国民負担率の推移は、財務省の「平成28年度の国民負担率を公表します」から引用。

2014年に消費税率を1%ずつ上げることを提案したエントリー
pbd.hatenablog.com


2010年に軽減税率に反対したエントリー
pbd.hatenablog.com