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水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

生活保護受給者のパチンコを減らす方法

パチンコを禁止、ではなく減らす話です。どうやって減らすか、なぜ禁止でなく減らすなのかを説明します。

まず、フードスタンプで考える

生活保護受給者に渡す金の一部をフードスタンプ(食品購入のみに使える金券)に切り替えてはどうかという意見があります。フードスタンプはパチンコに使えないので不適切な金の使い方は減り、スタンプ金額分は必ず食費に使われるので健康維持にもなり一石二鳥だと。それは上手くいくでしょうか? 例えば、単身者は家賃分+生活費で月額12万円受給しているとして、生活費のうち2万円をスタンプに切り替えてみます。
パチンコ浪費しない、まっとうな生活保護受給者のケースを先に考えます。Bさんは一日800円程度、月2万4000円を食費にあてて暮らしていたとします。フードスタンプ導入でBさんの食生活は…、何も変わりません。食費の内2万円はスタンプで払い、残り4000円はお金で払うだけ。変わった事といえばスーパーのレジでスタンプを渡す時、周囲の人に「あ、あの人生活保護だ」と知られて恥ずかしい思いをするくらいです。
Aさんは倹約家で、食材は日々の特売品を買い惣菜は見切り品を探し、一日600円程度、月1万8000円程度の食費でやりくりしていました。フードスタンプ導入でAさんは…、倹約をやめることになります。スタンプを2000円余らせても他の用途に使えず無駄になるので今までより割高な食材を買い2万円使いきるようにします。その分、他の使途を2000円減らさざるを得ません。もしかしたらAさんは身体が弱くて夏冬は割とエアコンをフル稼働させていたのを我慢したり、春は花粉症でマスクやら買っていたのを我慢することになるかもしれません。不本意な使途変更でAさんの生活満足度は下がります。
このまっとうな二人を通じて、フードスタンプにいかなる政策効果があったか? 三点に集約できます。
1)フードスタンプは実質的に食品スーパーへの補助金である。 AB二人でこれまで月4万2000円の食品購入だったものが、4万4000円に増えたので、国民の税金を使ってスーパーに2000円の補助金をあげることになります。Aさんだけでなく全国では結構な金額になります。他方、電力会社やドラッグストアは売上が減りました。Aさんの支出がスーパーに強制移転させられたからです。これは民間経済への不当な介入です。
2)フードスタンプは官僚への献上金である。 フードスタンプの発行や管理は「何たら法人フードスタンプ運用機構」みたいなところが独占し、そこは厚労省官僚のおいしい天下り先なので、国民の税金で天下り先を増やしてあげることになります。超ムダ金です。
3)フードスタンプ生活保護受給者を痛めつける。 Bさんの箇所で説明したように、スーパーで買い物するたびに恥ずかしい思いをします。世間には、生活保護受給者に屈辱を与えることを歓迎する人もいるようですが、私はそうではないので、私の価値観から見てフードスタンプは全くの愚策で有害無益となります。ここまでは。

フードスタンプの微調整

フードスタンプの支給額を減らせば、1)の欠点は解消します。つまり、誰でも、どんなに工夫節約しても最低これくらいは食費にかかる、むしろかけるべきという金額にすればスーパーへの補助金性はなくなります。人のミニマム食費は一体何円か? 仮に1万5000円としましょう。「私はもっと少ない金額で乗り切ったことがある」など異論もあるでしょうが(金額は議論の主題ではないので)持続可能で健康的な食生活の最低水準として、とりあえず1万5000円にします。これでAさんは今までと同じ生活ができます。食費の内1万5000円はスタンプで3000円は現金で払う。民間経済への不当な介入は消えました。
次はいよいよ、フードスタンプが活躍しそうな事例です。

困った生活保護受給者、登場

Cさんは困った生活保護受給者で、パチンコに(あるいは競馬競輪に、風俗に、その他に)金を使ってしまい、次の生活保護支給日の少し前になると金がなく、数日間食べ物もなく過ごしているとします。現状、生活保護費は各自治体とも月初に支給しているので、月末頃は空腹の日々です。Dさんも同様で、しかもDさんには子供がいます。月末にはDさん本人だけでなく子供も食事抜き、学校給食だけがまともな食事という日々を過ごします。夏休み明けの9月には痩せた姿で登校して担任を驚かせます。
ここで、フードスタンプがあれば! Cさんは1万5000円、Dさん親子は(二人世帯のミニマム食費=フードスタンプ支給額が仮に2万5000円とすると)2万5000円はパチンコに使えないので、パチンコ消費は減り、食事を確保できる! でしょうか? それは…期待薄です。

フードスタンプの無力

CさんDさんといった「困った受給者」は、お金を適切に使えない人達です。生活保護受給者の決して全員ではなく、しかし一部にはそういう人もいるでしょう。その人たちは、金が手に入った時に過剰に使ってしまい月末に不足する。均等に割って使う事ができないのです。お金を均等に使えない人が、フードスタンプだけ均等に使えると考えるのは幻想です。
CさんやDさんは、金が支給された日にパチンコに入り浸るように、フードスタンプが支給された日には黒毛和牛ですき焼き作ったり、スーパーで特上寿司の盛り合わせパックを食べきれないほど大量に買ったりして贅沢な食事を堪能し、月末にはお金もフードスタンプもなく、結局飢えて過ごすでしょう。全額をお金で支給している現状も同じです、月初頃にはパチンコにも行き食事も食べる。月末になるとパチンコに行く金もなく食費もない。フードスタンプで生活は何も変わりません。
先に書いたAさんの事例から、フードスタンプはミニマム食費にしました。CさんやDさんの月々の食費は、もともとミニマム食費より高額だったはずです。従ってフードスタンプを導入しても月間食費は増えないし、それはつまり月間パチンコ費も減らないのです。結局、まっとうな人も困った人も含めて、フードスタンプは官僚への献上金+生活保護受給者に恥をかかせる、以上の効果は何もないことになります。無意味です。

「困った人」は何が困ったのか?

そう。「困った」原因は「一括支給」なのです。
現状、生活保護費の支給は月ごとです。月初に、一か月分の生活費をまとめて渡す。これがパチンコに(あるいは競馬競輪に、その他に)過剰にお金をつぎ込む原因です。一万円を渡さなければ、万札握りしめてパチンコ屋に飛び込むことはできません。高額な金をまとめて渡すからパチンコ屋で2万も3万も使ってしまい、月末に飢えるのです。問題は現金かフードスタンプかでなく支給間隔の変更で改善できます。

生活保護費「日給」化案

生活保護費を「月給」でなく「日給」にしてみます。単身者の生活費支給が7万円(残り5万円は家賃)なら、毎日2000円ずつ渡すことにしてみましょう。(2000円×30日で6万円。最後の1万円は水道光熱通信費用に銀行口座振込みにするとかにします。)これなら、パチンコに注ぎ込む金を減らせます。イヤイヤ、ある日2万円パチンコに使うのも、一日2000円ずつ使って10日間パチンコ屋に通うのは同じだろ、と思われるかもしれませんが、そうはならないでしょう。10日で2万パチンコ屋で使うには、10日間食事抜きになります。そんなことはしないので、パチンコ費は減ります。
今、パチンコに2万円3万円使えるのは、その金は月後半の食費であり生活費であり今使ってはダメなのに、それを後先考えずに「使えてしまう」ことが原因です。それなら、月後半の生活費は月後半になってから渡せばいい。これで使い込みは不可能になります。
本人にお金を均等割する能力がないのだから、均等割を外部化すればいいのです。

均等割の外部化

この、均等割の外部化と言う行為は、民間では昔から行われています。
世の中の多数派は月給で生活していますが、一部には週払いや日払いで生活している人がいます。それは貧しい人が多いです。なぜ貧しい人が日給の仕事をするのかと言えば、そういう人たちはお金の管理が下手で月給では給料日直後に金を浪費して生活が破綻してしまい、結果として貧しくなり、結果として日給の仕事に流れてきます。日給は支出の均等割の強制であり、外部化によるソリューションなのです。
だから、役所もそうすべきです。
(余談:月給で何とか生活しているが、つい浪費しがちで生活費のやり繰りに苦労している人もいます。そういう人の中には、給与振込の直後に生活費分を全額引き出して四つの封筒に分けて入れ、「今週はこの封筒の金だけ過ごす」というやり方で対処している人もいます。これは、他の封筒には手を付けない、という一部自制心も利用した「弱い外部化」と言えます。)

解決策はテクノロジーにある

本題に戻って、しかし日給化は困難です。現状、生活保護費は現金手渡しか、銀行振込です。
前者、現金での日給化は論外です。受給者一人ひとりの保護費を現金で準備して封筒に入れ、間違えないよう本人に手渡しするのは膨大な作業労力を要します。日給にすると市役所生活保護課の職員は毎日毎日、封筒にお金入れる作業ばかりして本来業務が一切できなくなります。受給者も役所に毎日通うのが仕事になってしまい、就職活動もできません。また体調が思わしくない人は困ってしまいます。
後者、銀行振込も大変です。毎日2000円振り込む手数料はどうなるのか?が問題になります。公金の支出は手数料無料が通例らしいので、これも毎日銀行に負担させればいいという意見もあるかもしれませんが、最終的には銀行は負担しません。そのコストは我々一般預金者に転嫁されます。ATM引出し手数料を値上げするとか、預金金利を下げるとか、(公金じゃない)振込手数料が引き上げられるなどの形を通して。結局これも(現金手渡しよりはマシながら)高コストです。
これまで日給化は困難だった。だから不適切な月給を続けてきたのです。つまり支給方法の技術的制約こそが、パチンコ浪費を後押ししてきた影の原因と言えます。
今なら、これを変えられるかもしれません。生活保護費を電子マネーで支給してはどうでしょう。生活保護受給者に、その人の生活に便利な電子マネーを一つ選んでもらい、そこに土日祝日関係なく毎日2000円ずつチャージしていけば、先々の金の使い込みは不可能になり浪費は減らせます。電子マネーという、少額の入金や決済に低コストで対応できるテクノロジーを利用するのです。
これは電子マネーでパチンコをできなくしようとするのでなく、仮にパチンコ屋がSuicaに対応しても、先に述べたようにパチンコ支出は減るはずです。

問題はパチンコじゃない

やたらパチンコ支出ばかりが批判され、「パチンコ禁止」という意見もありますが、競馬競輪など他にも問題支出はたくさんあります。パチンコを禁止すれば、次はあれもこれもと際限なくなります。「あれもこれも禁止」にするという強権発動の割に禁止令が守られるか怪しい、摘発力が乏しく実は強制力がないザル法のような施策をするより、渡し方を変えて、「すべてにおいて使い込み不可能」にする方が意味があると思います。

問題点

この策の問題点は、電子マネーの普及が不十分で電子マネーでは決済できないものもあることです。特に東京以外は。また電子マネーは大手スーパー毎に乱立していて、このカードはイオンで使えてヨーカドーは不可、という問題もあります。(ていうか、なんでこんなに乱立してるんでしょう。使う側にとっては不便な話です。)
ので、今はまだ、この案は実現困難かもしれません。更なる電子マネーの普及が待たれます。
普及率以外の問題点としては、行政に悪用されるリスクがあります。以前、橋下大阪市長生活保護費を「一部をプリペイドカードで支給」と言い出したことがありましたが、あれは色々問題のある案だと思います。
カードが選べず住友VISAのみとなっていることで選定された業者と行政との癒着が起きやすくなります。VISAが使える店でしか買い物できず不便です。特定のカードなので「あの人、生活保護だ」とばれて受給者は恥ずかしい思いをします。
橋下市長は「受給者の支出の適正さということから考えたら、これは管理をする、記録化するなんていうのは当たり前のことなんでね。このカード化っていうのは、大いにメリットになると思いますよ。」「まあ僕は、本来ならばある意味全員、一定額についてはカード利用ということにしたほうが、それで全部記録を、報告を出させて、それを見ながらケースワーカーが指導すればいいんですから。」と発言しており、施策の目的は使途の監視だと思いますが、家計の強制的筒抜けは私はやり過ぎと思います。また私なら行政に怒られそうな使途は現金で払い、VISAは穏当な使途の時のみ使うので監視効果もない気もします。
ついでにこの記事では、VISAが使うのは磁気ストライプカードだそうで、今更時代遅れな技術を何故使うのかも謎です。というか、この案はその後どうなったんでしたっけ?
橋下案はともかく、電子マネーを使おうとすると腐った政治家か官僚が「生活保護専用の電子マネーを新しく作ろう。それは特殊法人で管理しよう」という利権丸出しな案を出してきそうで、それは懸念事項です。

まとめ

繰り返しになりますが、パチンコ禁止といった特定事項だけ「一円も使えない」ようにするより、あらゆる事項について「一気には金を使いにくい」ようにする。支出を均等化させる誘導的な施策が、強権を使わず不適切な支出を抑えて受給者の生活を改善する、意味のある施策だと思います。