水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

情報の体積

音楽CDのデータをPCに吸い上げてCDとラックを捨てた時、部屋が少し広くなりました。そう言えば昔、VHSテープを処分した時も棚が空になってすっきりしたことを憶えています。電子書籍が普及すれば本棚もいらなくなります。本棚捨てたら部屋がもっと広くなるなぁ。いいなぁ、自炊する根気のある人。
現代人の家庭にはモノが溢れていると言われますが、実際に溢れているのはモノより情報かもしれません。昔の人がストックしたのは食料くらいだったのに、印刷やら録音・録画技術の登場で情報を本やカセットといったカタチに転換することが可能になり、人が抱え込む大きな体積になって部屋を狭くする。今、もう一段技術が進歩して、人は情報の体積から解放されつつあります。

家庭内で最大体積の情報

IT革命で解放されたのはもっぱら映像・音・文字情報の体積ですが、技術がもっと進めば解放も更に進むのでしょうか?
多くの家庭で現在、最も大きなスペースを侵している情報は服だろうと思います。洗濯のやりくりで必要な枚数を遥かに上回る数の服を所有している理由は、多様な色やデザインを着るためです。例えばホログラムの技術が進歩すれば、デザインという情報は服という体積を必要としなくなるかもしれません。家にあるリアル服は、70年代のSF映画に出てくるようなピチピチ無地のボディスーツだけ。その周囲に、購入したデザインを映写すればいい。ワンピースでもスーツでも自由自在。「これ可愛い!!」服のデータを店頭でダウンロードすれば即、着替えも完了です。たとえ無限の服を所有してもクローゼットはもういりません。改装して部屋の一部にすればぐっと広くなります。ETを匿うゴチャゴチャ部屋は消えてしまいました(すみません古過ぎますね)。
「データ服」を巡っては世代間対立が勃発するでしょう。年配の人は批判します。「服はデザインだけではありません。絹、綿、麻といった布地一つ一つの風合いや肌ざわりにも意味があるのです。リアル服を買うべきです」と。ちょうど今「紙の手触りが」とか「インクの匂い」と言っているように。若い人はそうした老害を嘲笑するでしょう。「リアル服なんて色褪せするし型崩れするしデザインには物理的制約があるし、何より太ったら着れなくなる。服で部屋が狭くなるし、季節ごとに衣料BOXとクローゼットの間で入れ替えるなんてバカみたい」と。あ、靴も同じか。
服全体のデータ化は当分は不可能としても、ネクタイだけなら何とか出来そう。ネクタイ型にカットした電子ペーパー的なものに、日替わりでデザインを表示させれば何本も買わずに済みます。
化粧品も似ています。マイクロサイズ・インクジェットプリンタが出来れば口紅は一本でいい。色は情報ですから「この夏、流行りのリップは#c71585と#da70d6!」というデータだけ買えばいい。ファンデやチークも同じ。鏡まわりのカオスは過去のものになります。

広い空・広い街

家の外に出てみます。信号機はどうでしょう? 交差点ごとに無線LANで信号情報を流し、google・carに受信させて赤信号で自動的に止まるのは、現在の技術で対応可能な気がします。運転手にも分かるようにパイオニアのHUD型サイバーナビでフロントガラスに赤か青かを表示させれば、信号「機」は不要になります。そこらじゅうに林立しているブサイクな金属塔を撤去すれば、都会の空も少し広くなるでしょう。
お金も、情報を紙切れや金属片に変換しているものなので、電子マネーとネットバンクが浸透すれば銀行からATMを撤去できます。ATM自体は情報ではありませんが、ビデオテープを処分すればデッキもいらなくなるのと同じことです。支店の中がガランとしちゃいますね。銀行以外の店舗からもキャッシャーが消えるので、すき家は夜間従業員を一人に戻してもOK。もう強盗に襲われなくなります。ていうか、強盗はどうすればいいんだろう。包丁持って銀行に行って「オレの口座に1億円チャージしろ」とか言うのかな? お金は体積を失い強奪できないので、すき家に行って牛丼をただ食いするしかないのかな? じゃあやっぱり夜間従業員は二人?
手紙がなくなればATMと同じ構図で街かどのポストも撤去できます。ATMとポストが不要なら、小包はコンビニで出せるので、郵便局の大半はいらなくなります。もっと言えば、銀行に融資を依頼する時、財務諸表をネット上で査閲してもらい話し合いをスカイプですれば、銀行の支店もいらないかも。郵便局と銀行の支店が取り壊されたら、駅前がスカスカになるなぁ。
教科書を捨てて子供にiPadを渡せばランドセルはスカスカになるし、ソフトバンクが社内業務「紙ゼロ」にすればオフィスはスカスカになる。駅のキップ販売機も図書館もいらなくなるし。情報を使用するのに情報の体積を所有しなくてよくなると、家の中も街もスカスカになっていく。やっぱり、体積を占有しているのは少なからず情報なんだなぁ。