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水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

失言バッシングブームはどこに行った?

今年も、一川防衛大臣を筆頭に政治家の失言失態は多々ありました。自民党は問責決議案を可決させるなど攻撃を続けていますが、笛吹けど踊らず、国民の側はイマイチ盛り上がらない印象があります。私個人の感覚ですが、かつて「漢字が読めない」ことで総理大臣を一人クビにしたあの頃のような熱気が感じられません。
自民党の議員さん達からすれば「不公平だ」と恨み節も出るところでしょう。「国民は自民党に厳しく、民主党には甘い」と。けれどこのバッシングの違いは国民の自信の差であり、民主党にむしろ厳しい。そんな気がします。

小泉政権後の三年間、国民の間で高まって行ったのは「政権交代したい熱」です。絶大な期待を抱いて迎えた小泉政権も末期は弊害が声高に叫ばる中で終焉し、自民政権への絶望が固まった時期。けれど国民には不安もありました。「政権交代なんて本当にできるのか?」という自信の欠落です。
55年体制確立以降、自民党は半世紀にわたり政権をほぼ独占していました。中国共産党も真っ青なくらい。社会党は自民の政策にケチをつけることしかできない永遠の野党で自ら政権党になる能力は無く、ようやく、たった一度国民の手で政権交代を果たした細川お殿様寄せ集め政権は羽田内閣を合わせても一年を待たずに自滅崩壊。自民党社会党を手を組むと言う禁じ手まで使って政権に復帰しました。あの時、国民の間には「あぁ私たちには政権の選択肢はないんだ」という失望がありました。
それから十数年。安倍・福田・麻生と政権転がしが続く中で「もう我慢できない。何としても政権交代をしたい。でも…そんなこと無理かもしれない…」という気弱な焦りがどんどん強まり、「自民党を弱体化させる目的のためには、手段は選ばなくても構わない」ムードを生み、些細な失言失態でも過大に非難するバッシングブームになったのではないかと思います。
逮捕すべき容疑者がいるのに確たる証拠が出ない時、警察が微罪を口実に別件逮捕して外堀を埋めようとするようなものです。

今、国民は民主党政権に満足している訳ではありません。鳩山・菅・野田と自民に負けない政権転がしもしてきました。それなのにあの頃のような失言バッシングが盛り上がらないのは、国民の中に「政権交代は可能だ」という自信があるからです。「自民から民主に政権交代できたのだから、民主から自民に『戻す』くらいは、やりたければいつでも出来る」余裕があります。民主に甘いのでなく、民主の評価が低いのです。ラスボスを倒した経験があれば、もはやスライムに怯える必要はありません。

自民党は、かつて自分たちが受けた仕打ちが忘れられず仕返しがしたくて我慢できないのか、国民が盛り上がらない中でも失言バッシングを止めません。これは賢明な判断とは言えない気がします。今国民が聞きたがっているのはバッシングではないと。
イマイチ盛り上がらないコンサート。ステージ上のアーティストが唄う合間にマイクを客席に向けて「everybody Say!、イェーッ!!」と煽ります。でも煽るほど客席はダレていく感じ。立っていた客までパラパラと席に座ってしまいます。客が今聞きたいのはアーティストの歌=政策です。マイクを客席に向けてばかりでは「まともな声が出ないから客に歌わせてゴマカしてんじゃねーか?。お前が歌えよ、さぼってんじゃねーよ。」となります。
例えば、TPP参加について「判断が拙速」などと言う批判は馬鹿げています。政治家の「もう少し検討しましょう」は「やる気無い」だと誰でもわかっています。言うべきは「参加を目標に、参加しても国益が損なわれないよう対策打つ」か「参加しないことを前提に、参加しなくても国益が守られるよう対策を打つ」のどちらかであり、ほんの二年余り前まで50年間政権の座にあった政党がその方針を提示できないなんて「私に歌は歌えません」と言っているのも同然です。

失言の止まらない一川大臣も如何な物かと思いますが、国会会期最終日に参院で問責決議案を可決させて気勢を上げる自民党は完全にマイクを向ける方向を間違えており、同時に、バッシングが盛り上がらない事を民主党は内心安堵すべきではないでしょう。
Newsweek日本版の先週号あたりに印象的な文章がありました。手元にないのでうろ覚えですが「オバマ大統領の政策を見る度、彼に二期目は無いと確信し、共和党の候補者どもを見る度、政権奪回は不可能だと確信する。」とか、そんな感じ。日本も似ています。民主党の政策を見る度、政権維持は無理に思え、自民党のしている事を見る度、政権奪回は無理に思える。
選択肢のなかった50年間と、希望の見えない選択肢があるのと、どちらがマシなのでしょう?。うーん、…それでもやっぱり、選択肢がある方がいいかな。