水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

70億人とグローバリゼーション的なもの

国連人口基金の発表では、10月31日に世界の人口は70億人を突破したそうです。そしてwiredの記事によると、その7人に1人はスラムで生活していると。つまり10億人は深刻な貧困に直面しています。あぁグローバルな資本主義社会は残酷だなと感じる訳ですが、同時に、70億もの人間が生きていられることにグローバル資本主義の素晴らしさも感じます。
人口が増加するのは子供をたくさん生むからではなく、多産少死化の進行、生まれた子供が死ななくなった結果です。生むだけなら、人類は昔からずーっと人間を過剰に生産してきました。けれど長い間、生んだ子供の多くが飢えや病気で死ぬために大人になる人数は抑制され、また運良く大人になれても平均寿命は短く、人口は増えなかった。そこに経済成長が生じることで飢えをなくし、医療・衛生水準が向上し平均寿命が伸長する。人口の増加は、どこかで誰かが死なずに生き続けていられるようになった成果です。
日本の人口が明治維新以降に3000万人から150年かそこらで1億2000万人に増加したのも経済成長あってのことであり、今世界人口が加速度的に増えているのは、生まれた子供が死なずに長生きできるようになった国や地域が加速度的に増えているおかげです。

人口が増え続けると、いつか限界が来るのではないかと心配する声があります。バスタブに水を注ぎ続けるといつか溢れてしまうように。しかしこの喩えで言うなら、昔からずっと水は溢れ続けています。かつて世界人口が10億人だった時には、バスタブの大きさ=世界が支えられる人口が10億人分しかなかったから、そこでどれだけ子供を生んでもバスタブから溢れて死亡して結果的に人口10億人のままになる。
欧米日が世界に先んじてバスタブを急激に大きくし、この地域では水は微量しか溢れなくなりました。その後に続いて近年多くの国や地域で経済成長が生じて世界のバスタブサイズが加速度的に大きくなって、ついに70億人になった。溢れる水も減少しつつあるが、まだアフリカなど少なからぬ地域で今もザーザー水が溢れています。
世界が支えられる人口の限界は何人か?と問われれば、貧しい国においては、今日の人口が今日の限界人口に等しいと言えます。溢れた人数が死んだ結果が今の人口ですから。
世界人口は1987年に50億人を通過したそうですが、仮に今も50億人のままだったとしたら20億人は生まれてこなかったわけではなく、その多くはいずれにせよ生まれてきたが死んだ人口だったでしょう。

10億人をスラムに閉じ込めている格差社会は同時に、四半世紀で20億の命を死から救ってきた格差縮小社会でもあります。
死ぬよりはスラムの方がマシだから現状を放置していいのかと問われればそうとは言えませんが、グローバルに展開する強欲な資本主義は世界を豊かにする強力なエンジンであり、世界で生きていられる人間の数を10億人単位で増やし続けている貢献はハンパなものではありません。人類にとって過去に前例のない恩恵です。
例えばこの先スラム人口が10億人から5億人に減っても、もしその時に世界経済の成長が鈍化していて世界人口の伸びに急ブレーキがかかっていたら、世界のどこかで「溢れる人口」が悪化しているかもしれません。それでは良くないのでエンジンには存分に働いてもらいつつ、その力を殺さぬように上手に再配分を実現するのが政治の役割ですが、それはなかなか言うは易しです。

世界人口の今後

さて、目下世界人口は急激に増加していますが、経済成長は出生率を低下させることが多くの国で観察されています。つまり豊かになるとバスタブが大きくなった後に蛇口から流入する水量が自然に減少し、やがて人口は増えなくなるわけです。今の日本のように。
となると、経済成長が続けば世界の人口もいつか頭打ちになることになります。本当に?。

国連の推計では、世界人口は2050年に93億、今世紀末までに100億に達するとなっており増加する一方ですがこれには異論もあり、47newsは「2045年に81億人でピークに達し、2100年には62億人まで減少する」という説を、ロイターは「2070年前後に約90億人で頭打ちし、その後は恐らく急速に減少に転じる」という説を記事中で紹介しています。にわかには信じられない話です。
しかし、社会実情データ図録を見ると(引用元はコチラ

超長期で見ると、日本の人口の急騰は極めて一時的な現象で、この先はあっという間に激減していくことがわかります。であるなら世界の人口が「急速に減少に転じる」ということも、あながち嘘とは言い切れません。私たちはいつか世界人口が減少しはじめると言う大転換の時代を経験するのかもしれません。
宇宙世紀0079年、人類の総人口は110億に達し過剰化した人口の半分がスペースコロニーに移民する未来は、意外にも来ないのでしょうか。