水色あひるblog

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復興宝くじは、貧者の増税

宝くじは貧者の税金、と言われます。
貧しい人々が、確率的に当たるはずのない高額当せん金に夢を見て宝くじに群がり、結局外れてお金は胴元である政府に吸い上げられる。払う必要のない税金を愚かにもノコノコ自分から払っている様を揶揄した言葉です。
日本の宝くじは、とりわけ搾取率が高いことで知られています。返戻率、売上のうち当せん金として消費者に還元されるのは約46%。半分未満となっています。あまりに低率なので、強欲な政府が「これ以上取るのは可哀そうなので、当せん金は非課税にしてあげる」と言うほどです。*1でも、これには理由があります。
日本で、現在のように政府・地方自治体が宝くじを発行するようになったのは戦後のことです。*2昭和20年10月に第一回政府宝籤が発行されますが、その目的は市場から資金を吸収してインフレを抑制し、収益金を戦後復興資金に充当する事でした。昭和21年から地方自治体が独自に宝くじを発行できるようになりましたが、これも目的は復興資金の調達です。
宝くじの高い搾取率には、一面焦土と化し税収が極めて乏しい戦後混乱期に少しでも復興資金を稼ぐ必要があった、というもっともな理由があったのです。しかし一度手に入れた金を地方自治体が手放すはずもなく、戦後混乱期を過ぎて時代が流れ、高度成長期になってもバブルになっても、「地方財政資金の調達」という名のもとに返戻率が見直されることはなく、莫大な金が公共事業へと流され続けました。

東日本大震災復興宝くじ」発売 1等3千万円が30本
発売元は岩手、宮城、福島など被災した9県2指定都市。完売すれば収益金約142億円が発売元に納められ、震災対策事業に充てられる。

http://www.asahi.com/national/update/0730/TKY201107300360.html

今、久々にマジで復興資金が必要な時が来ました。2009年度の、ジャンボ・LOTOなど各種宝くじの売上は計9875億円。その4割が地方自治体に納められますから、約3950億円というところです。
本来なら、この金を被災地に優先的集中的に投入すればいいのですが、既存宝くじの収益金については各自治体の分け前が既得権として決まっているので手が出せません。そこで、こうして新くじを発行して追加的収益金を稼いで被災地に渡すしかありません。3950億円 VS 142億円、ちょっと小粒ですね。

復興宝くじは、被災地のための「貧者の(小さな)増税」といったところでしょうか。

余談・総務省 VS 文科省

現在の宝くじは「当せん金付証票法」というものを根拠にし、そこで当せん金の限度額が決めらています。現在の規定は、特定の条件を満たす場合のみ、くじ券1枚価格の200万倍まで。これがLOTO6のキャリーオーバー発生時の最高4億円の理由です。
この「倍率」は過去何度も改訂されてきました。簡単に言えば、宝くじの売上が低迷すると限度額を引き上げて、より高額な1等賞金を設定して売上の拡大を図る、の繰り返しです。
さて、宝くじの売り上げは2005年度の1兆1047億円をピークにズルズルと下がっています。その原因の一つは、2006年に最高賞金6億円の「BIG」を打ちだし2007年から急激に売上を伸ばした、「文部科学省管轄:スポーツ振興くじtoto」の存在があります。2006年→2007年で、totoは売上を502億円伸ばし、宝くじは496億円減らしています。いわば貧者の税金の奪い合いです。大事なサイフに手を突っ込まれた総務省はイラついているでしょう。そのうち証票法を改訂して、もっと射幸心を煽るようなスゴイ高額賞金を打ちだしてくるかもしれません。



*1:逆に言えば、外国の宝くじは当せん金に課税されるケースが多いんですけどね。

*2:厳密には、昭和20年の7月に戦費調達を目的にした宝くじが発行されていますが、皮肉にも抽せん前に終戦になってしまいました。