水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

次回の総選挙について考えてみる

総選挙と言うのはもちろん、菅直人氏や谷垣禎一氏らが議席数を競う、国民がうんざりしている行事ではなく、ファンの熱狂を掻き立てる、前田敦子さんや大島優子さんらが席次を競う総選挙のことです。

総選挙と言うのは素晴らしいアイデアだなと感心します。「内部競争」はキャバクラはじめ、お水や風俗業界ではずっと以前から利用されていた手法です。目標の本質は店の売上拡大なのですが、それを店内での指名競争にすり替える事でキャストの競争意識=営業努力を引き出し、客同士のライバル心=貢ぎ競争を煽り、結果的に店舗の売上増加を実現させる訳です。
お水業界では当然の戦術を、しかしながらアイドルの世界に持ち込んだのは秋元氏の天才なのでしょう。(余談ですが、従来舞台裏で事務的に行っていたオーディション・メンバー選考過程を逐一テレビで放送してマネタイズすることに成功したのに、選考後のメンバー序列決定をマネタイズすることを思いつかなかったつんく♂氏は、さぞ悔しがっていることでしょう。)
コロンブスの卵的なアイデアAKB48の人気を飛躍させる重要な原動力となり、投票権の付いたCDを一週間で130万枚売りさばき、まさしく売上増加を達成しました。

反面、総選挙には副作用もあります。次回の総選挙で投票数が減少すると、「AKBブームは終わった」ことを自ら証明することになり、人気が下り坂に入っていると知ってしまったファンの離反を加速させかねません。素直な感想として、来年、130万枚を更に上回るセールスは相当困難だと思いますし、それだけでなく、ファンの選挙への熱意が減退しそうな状況がいくつかあります。

(1)選挙が大規模になり過ぎた。
政治の総選挙で投票率が低迷するのは「自分が投票しても、どうせ結果は変わらない」という諦めがあるためです。AKBが2009年に初めて総選挙が行った時、1位前田敦子さん(4630票)と2位大島優子さん(3345票)の差は1285票、メディア選抜下限12位秋元才加さん(1599票)と13位北原里英さん(1578票)の差は21票、選抜下限21位倉持明日香さん(1355票)とアンダーガールズ最上位22位米沢瑠美さん(1352票)の差は実に3票です。この数字が「自分がもう少しCDを買って投票していれば、大好きな○○さんをもっと高い順位にできたのに…」という強い情念を生みだし、翌年には一人が何十枚何百枚買うと言う行動に走らせました。

年度 1-2位の票差 12-13位の票差 21-22位の票差 21位以上の得票総数
2009年 1285票 21票 3票 4万3191票
2010年 597票 18票 226票 29万7083票
2011年 17049票 3052票 不明 94万0817票

翌2010年、1位大島優子さん(3万1448票)と2位前田敦子さん(3万851票)の差は597票。すごい僅差で、CD大量購入への熱狂は更に高まりました。そして今回、1位前田敦子さん(13万9892票)と2位大島優子さん(12万2843票)の差は1万7000票余りへと一気に拡大しました。投票数自体もスゴイ規模です。(2010年7月の参議院選挙では13万7306票で国会議員になった人がいます。)ちなみに、今回の総選挙では一人でCD5500枚(880万円)購入して大島優子さんに投票された方がいるようですが、それでも1-2位を逆転させることはできませんでした。
ここまでくると、「自分の投票など無意味」と感じるファンが増えてくるでしょう。

(2)投票の価値が低い
お水や風俗店では、指名売り上げは本人の給与に直結します。風俗なら基本料金の半額程度+本指名料が相場で、客が貢げば貢いだ分だけ彼女の懐に入るようになっています。他方AKBの総選挙で得られるのは「次のシングルCDでの序列と処遇」だけで莫大な売り上げの殆どは秋元氏ら運営幹部に流れ、女性陣の報償が低すぎる印象があります。例えば今回1位の前田さんは約14万票を集めています。1票の価格が最低のMobile会員(300円)で換算しても4000万円、CD(1600円)で換算すれば2億2000万円の売上です。もし彼女が風俗嬢ならざっと2000万〜1億円の収入があった計算になります。先に挙げた熱心なファン氏も、CDを5500枚買うより880万円の小切手を握手会で本人に直接渡した方が大島さんの生活向上に寄与したような気もします。
「投票は虚しい」と感じるファンも増えるでしょう。

2012年、運営側はどんな対策を講じてくるでしょう?。
(a)総選挙しない
必ず毎年総選挙をすると約束している訳でもないので、選挙しないと言う手もあります。選挙しなければ投票総数が減るという事態は発生しません。とはいえ、選挙しない事が「ブームが終わったのがバレるので逃げた」と批判されるでしょうし、これほど盛り上がるイベントをしないことのデメリットも小さくないでしょう。
(b)投票コストを下げる
ジャニーズは一時、シングルCDの価格を525円にすることで販売枚数を増やしてチャート1位獲得を確実にするという手法をとっていました。投票権付きCDの価格を下げる、という可能性はあるでしょう。CD販売をやめてダウンロードに投票権を付ければ、1票(1ダウンロード)数百円にしても採算は取れるでしょう。
もちろん1票の価格が例えば1/4に下がって今年の4倍の票数投票したとしても、他の人も4倍投票できるので、順位への影響力の無さは今年と変わらない訳ですが(票数が全体に4倍に膨れるだけ)、そこはある種の貨幣錯覚が起きるので自己の投票能力が上がったと勘違いして投票意欲を煽る効果はあるでしょう。
(c)投票バリューを上げる
「次のシングルCDでの序列と処遇」を決めるだけという報償の低さを改善します。思い切って、得票数に応じて各人にボーナスを支給すると発表してしまうのも面白い気がしますが、余りにキャバ嬢化が露骨なので…駄目かな…。1年間センター独占とか、ドラマや映画のキャスティング約束なんていう手もあるでしょうが、いずれにせよ1位や上位数名にしか関係しないので全体の投票意欲向上には弱いでしょう。
飴でなく鞭というバリューも有り得るかもしれません。得票数減少ワースト5人は強制卒業とか、メンバー中得票数の低いメンバーを研究生の上位者と入れ替えるJリーグ方式を示して、推しメンを失いたくないファンの危機感を煽る&研究生ファンの投票意欲を煽るとか…。
(d)有権者を増やす
メジャーリーグのオールスター戦ファン投票を日本でもできるようにしたら、いきなり日本人選手が大量得票したという事例があります。今回の総選挙はアジア各国でも中継されたそうで、K-POPほどでないにせよアジアにAKBファンもいるのでしょう。ならば、研究生にアジア各国の人を加えて選挙権をアジア各国にも与えれば、自国の研究生をランク入りさせようとして海外からの投票数が増えるかもしれません。

秋元氏の手腕が楽しみです。