水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

新潟が東京を支配する日

フクシマ事故を受けて、ドイツでは20〜25万人が参加する反原発デモがあったそうです。実は東京・銀座でも同様のデモがあったようなのですが、参加者は1000人程度と、政治デモに人気が無い日本らしい話です。しかし、今年の夏には日本でも大規模な原発デモが生じるかもしれません。但し、それは原発賛成デモ。原発即時再開要望デモでしょう。
3月14日からの半月足らずで、東京民は計画停電に心底うんざりしています。どうすれば停電を回避できるか、ネット上でも百家争鳴・議論百出な状態です。それらアイデアのいずれかが奏功すればいいのですが結局うまくいかなかった場合、東京民はエアコン無し・冷蔵庫機能せずな生活にとても耐えられず、米騒動ならぬ「電気よこせ騒動」を起こすでしょう。前例のない大規模デモが銀座を埋め尽くし、あるいは60年安保なみの大群衆が国会を包囲するかもしれません。その時、東京民が激しく非難するであろう標的が二つ想定されます。

一つは福島。東電福島第一原発1-4号機の廃炉を表明しました。海水を入れた原子炉なんて復旧のしようが無いのでここはそもそも検討する必要のない結論です。問題は5・6号機をどうするか。「1-4号機は廃炉」という発表があった時、福島県民の間からは「5・6号機も廃止にしろ」という怒りの声が出たそうです。まぁあたりまえな反応でしょう。
東京民の怒りの矛先(その1)は、この5・6号機を捨てるな!!という点に来るでしょう。何が廃炉だ田舎モンはこれだからバカで困る。こっちはエアコンも使えなくて困ってんだから、廃炉どころか再稼働させろ!!という怒りの声が飛ぶでしょう。とは言え、廃炉にしないにせよ現実的にそんなに早く再稼働はできないでしょうから、この問題は「廃炉!!」「存続!!」を巡るジリジリした対立に留まるでしょう。今年の夏に関しては。

もう一つの対立点、今年の夏、最も熱く燃え上がるのは東京民VS新潟民の対立かもしれません。
新潟には、一か所の発電能力としては世界最大と言う柏崎刈羽原発があります。実に7基もの原子炉が並んでいます。2007年7月に発生した新潟県中越沖地震の後、様々なトラブルが発生し操業を停止していましたが、2009年12月28日に7号機の営業運転を再開したのを皮切りに現在1・5・6・7号の4基が稼働し、合計490万Kwの電力を生産しています。
新潟民からすれば「今動かしている4基も止めろ。そのまま廃炉にするか、少なくとも万全の耐震・耐津波対策を施すまでは再稼働させるな」というのが希望でしょう。東京民の要求は真逆「残りの2・3・4号基をさっさと動かせこの野郎」でしょう。2・3・4号基を稼働させた場合の出力は330万Kw。この夏見込まれる電力不足1000万-1500万Kwを埋めるには至りませんが、あるとないとでは大違いの能力には間違いありません。
ここで、新潟民は自分達が絶大な権力を持っている事に気付くでしょう。今回の震災被害・福島第一原発を引き合いに出し、「安全性の確保が確認できない」とか何とか判断して柏崎市長なり新潟県知事が緊急使用停止命令でも出して1・5・6・7号を止めれば、東京民は電気を失って死ぬのです。4600万Kw程度しか見込めない供給能力を更に1割以上失えば、東京の産業も市民生活も痙攣を起こすでしょう。まさに生殺与奪を握るとはこのこと。首筋にがっつりスリーパーホールドが決まりいつでも頸動脈を締めて相手を失神させられる、何なら殺せる位のポジションを確保しています。
今までのような中途半端な地方交付金や補償金だの公共事業バラマキで我慢する必要はありません。1Kwごとに5円10円といった「電気が欲しかったら金払え税」を課しても、東京民は黙って土下座するしかありません。原発依存を脱却して新しい火力発電所を東京周辺に建設するにしても5年10年かかるでしょうから、当分の間は新潟民のいいなりです。
東京に住む多くの経済学者が「それでも原子力発電には経済合理性がある。原発を止めるべきではない。」と言っています。新潟民は今こそ、徹底的に冷徹に「経済合理性で考えて、1Kwあたり何円まで東京民から金を絞り取れるか」検討するべき機会を得ているのかもしれません。

東京民に、反撃のチャンスがない訳でもありません。新潟民に電力税を支払う代わりにTPPに参加し、米を始め肉・魚・野菜・果物あらゆる食物を、経済合理性に従って世界から自由に買い付けるのはどうでしょう。778%の関税で守られている法外に高い米を買わなくて済むだけでも、電力税を払ってもおつりが返ってくるかもしれません。

怪しげな交付金でなく、明示的な電気税が原発立地地域の住民に還元されれば、原発は地元民にとって打ち出の小槌になります。新潟民が大儲けしているのを見れば、福島も対抗して5.6号機の再開を要望するかもしれません。1-4号機も再建設したいと言い出すかもしれません。それどころか、茨城・千葉・静岡・神奈川県の住民が原発立地を要求するようになるかもしれません。そうすれば、競争原理が働いて電気税は下がっていくでしょう。