水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

原子力発電所に6号機があっていいのか?

福島第一原子力発電所の危機がいかに終息されるのか現時点ではまだ予断を許さない状況ですが、今回の事故の教訓として考えるべきことは、一つの敷地に原子炉を6基並べるのはマズイだろう、という事です。まぁもっとも、今さら教訓を学んでも手遅れかもしれませんが。
東京電力は、一つの原子力発電所に多くの原子炉を集中立地させています。東京電力のHPによれば、福島第一は現在6基ですが7・8号機が予定されていました(これはもうダメでしょうけど)。柏崎刈羽は7号機まであります。
もし福島第一が3基だけで残り3基がまったく違う場所、例えば東北地方の太平洋岸ではないどこかにあれば、そちらは発電を継続し電力不足を回避できた可能性もあります。しかし、ここで強調したいのは分散によるメリットではなく集中のデメリットの方です。もし仮に、例えば1号機が早い段階で手の着けようがない状態に陥り、圧力容器や格納容器が大規模に破損し、大量の放射性物質が放散されたとします。そうすると、周辺住民だけでなく東電の技術者も下請け労働者も自衛隊消防庁ハイパーレスキュー隊も、その場から退避せざるを得なくなります。退避するという事は、その時点で2号機以下に対する作業も放棄する事になります。これまで各号機で様々なトラブルがあり、必死の対応を続けることでなんとか破局を免れてきましたが、もし1号機が早い段階で噴火していればそうした対応、放水も電源復旧作業もできなかった訳ですから、2・3・4号機も噴火していたでしょう。1基が破滅すると、横に並ぶ原子炉も放棄されてドミノ倒しのように破滅が拡大することになります。(5・6号機は点検中で大過なく低温停止が達成されたのでドミノ現象からは逃れたと思われます。)
別々に立地していれば原発1基の放射性物質まき散らし事故で済んだものが、並んで立地していたために最悪4基同時まき散らし事故になっていた恐れがあるのです。想像するだに恐ろしい話ですが、そうなる可能性は、(4号機はなんだか大丈夫っぽい様子ですが、1-3号機の3基ドミノ倒しの恐れは)まだゼロではありません。

原発は典型的な迷惑施設ですから、新規立地には巨額の地元対策費が必要になります。ですから、あちこちに1基づつ原発を建てると猛烈にコストが上がり、逆に、一度地元の合意が得られた場所に集中的に建てるほどコストは下がります。それは原発が正常稼働している時のメリット。それが、事故が起きると一転して集中していることが過大なデメリットを生むことになります。並んで建てた石油タンクが誘爆するように。
平時のメリットと異常時のデメリットが比例する典型的な事例です。

海外の原発立地を見てみます。*1

フランスでは例外的にグラブリーヌ(地図の左上端に記載)に6基の炉がありますが、他は(稼働中の炉=青印は)4基以下になっています。国土の広いアメリカではサウスカロライナ州のオコニー(右の地図の左上に記載)とアリゾナ州パロベルデ(該当する地図は掲載していません)が3基で、他は(ここに掲載しなかった地域も含め)すべて2基以下になっています。幸い、日本でも東電以外の電力会社は一原子力発電所あたり4基以下になっています。

福島の場合、第一と第二が十数キロしか離れていないというのも問題があります。第一が地震津波の深刻な被害に遭った場合、十数キロしか離れていない第二も大差ない被害を受けることは避けられません。今回の震災で福島第二原発は全炉が安全な冷温停止を達成していますが、それはつまり冷温停止させなければならない、発電を続けるわけにはいかない被害を受けているのです。その点からいえば関西電力も非常にハイリスクです。美浜原発大飯原発・高浜原発・それに日本原子力発電敦賀発電所はすべて若狭湾に面しており、この地域で大規模災害があれば全滅するかもしれません。

今後の日本での原子力発電所の新規立地、というのは難しいかもしれませんが、東電は深刻な電力不足に陥っているのも事実であり、建設を考える場合は「他の既存原子力発電所とは十分離れ」ていて「原子炉は最大4基できれば3基以下」と制限する必要があるでしょう。

*1:原発立地の地図情報はココのヨーロッパの原発地図とアメリカの原発地図を参照にしました。