水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

東電の視線の先にあるものと、弱者に優しい電気料金引き上げ

先日、計画停電の仕方はヘタクソでもっと改善できるのでは、という趣旨のエントリーを書きました。現在の時間割停電方式については池田信夫氏もtwitter

私もなぜ順番になっているのかわからない 【読売】なぜ時間で区切るのか…岡田氏、計画停電を批判 http://t.co/E2NMsS7

と発言されています。でも、優秀な東電社員が他の方法を思いつかなかったはずはなく、色々と比較した上で現行案を最善と判断したはずです。何故、現行方式が選ばれたのか?。それは、東電が最初から「夏」を見据えて方式を選択したからではないかと思います。
夏の電力需要は3-4月の比ではなく、朝から夜まで停電を必要とし、その規模もずっと大きくなります。私が先日提案した方式は、現在のように夕方・小規模に電力が不足する時はメリットが多くなりますが、逆に夏、電力が圧倒的に不足して毎日アルファベットが一周以上すると、「停電しない日が確保できる」メリットは消滅し、「停電時刻が事前にわからない」デメリットだけが残ります。東電方式は夏、つまり毎日・全地域が停電せざるを得ない時に「停電時刻が事前に分かる」メリットが生じます。現在は必要なさそうな朝6:20から夜22:00までずっと計画が割り振られているのも、「夏に停電するであろう時間帯の先取り」と考えれば納得できます。
つまり、現在の計画停電は夏への予行演習なのです。今と夏とで停電実施方式を変更すると混乱して文句が出る事を予想し、夏に向けて慣れさせようとしているのではないでしょうか。

もしかすると東電のもう一つの狙いは、あえて不便な方式で停電を実施し、そのデメリットを広く市民が痛感し、電力料金引き上げへの反対を抑えることかもしれません。
私は、停電より電気料金引き上げで電力需要を削減すべきだと言ってきましたが、野口悠紀雄氏の提言が素晴らしいので紹介します。

緊急提言2:
基本料金の見直しで、節電と利用平準化を進めよう

http://diamond.jp/articles/-/11554

詳細はリンク先を読んでいただきたいのですが、要するに基本料金を、契約アンペア数が20Aなどの低電流は据え置いて、40A以上など贅沢な契約は大幅に引き上げれば贅沢な電気利用が抑えられる、というものです。これなら電気料金体形全体を引き上げるより、弱者に優しい手法と言えます。提言にはありませんが、従量制の電力使用量料金の方も、累進性を高めれば効果は一層高まるでしょう。

民主党の岡田幹事長が主張する

(電力消費量の)ピーク(時の使用量)カットと言っているのに、(総量規制で)そうでない時間も計画停電している。ピーク時の使用料を2倍に上げるなどの価格政策も考えるべきではないか

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110320/plc11032018240019-n1.htm

という意見は正論ですが二つ問題があります。一つは、ピーク料金引き上げは大口契約者しかできないことです。一般家庭の電気メーターは単純にクルクル回っているだけなので検針員さんが先月検針時の数字との差で一ヶ月間の消費電力を計ることしかできず、深夜早朝の消費と日中の消費を区別できません。
もう一つは、その手は夏の電力不足ではうまくいかない恐れがある事です。先にも書いたように、夏は朝から晩まで、24時間中12時間以上ひょっとして15時間くらい停電させなければならないかもしれません。そうなると、ピーク時の料金は引き上げると言っても、結局ほぼ一日中ピーク料金適用になり、普通に引き上げるのと同じになるかもしれません。まぁそれでも、深夜帯だけ電気料金が安ければ(というか引き上げられず現状据え置きなら)、工場は夜間操業が基本になって、それはそれで意味があるかも…。