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水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

高齢化社会こそクルマ社会

トヨタ自動車は9日、2015年に向けた中長期経営指針「グローバルビジョン」を発表しました。「積極的に攻める分野は環境車と新興国」という戦略はあまりに当たり前で、なんだか拍子抜けと言う感もあります。個人的には、本命二頭に加えて「高齢者市場への対応」という穴馬を入れていただきたかった。
足腰の弱っている高齢者こそ最も自動車を必要としている人達です。鉄道は、駅まで行かないと乗れません。若者なら家から駅まで15分、荷物を持って歩くのも平気でしょうが高齢者には苦痛です。その上、混雑していれば目的地まで一時間立って我慢しなければならず、それでも目的地ではなく、その最寄り駅までしか辿りつけません。バスや鉄道は、目的地に都合のよい路線がない場合もあります。自動車は徒歩を必要とせず、ドアtoドアで人も荷物も、自分が行きたい場所まで運んでくれます。

しかし、高齢者の運転は事故を起こす確率が高く、社会から決して歓迎されていません。

警察庁の資料を見ると、8年前から交通死亡事故を起こしているトップは65歳以上の高齢者です。というか、今ではダントツの突出した死者数となっています。おかげで、高齢者は枯葉だかクローバーだかよくわからないレッテルを車両の貼るよう言われたり、運転免許を自主返納するよう勧められたり散々な扱いを受けています。しかし、高齢者が交通事故を多発させているのは、現在市販されている自動車がお粗末な欠陥品であることが根本的な原因です。
ジェット旅客機と比較すると、向こうは高度な訓練を受けたプロの操縦者が二名も常駐しているのに、操縦や飛行状態に問題があれば「失速しそうだから推力を上げろ」とか「地表が近過ぎるから直ちにPULL UPしろ!!」とか様々な警告が発せられます。しかるに、自動車はハンドルを右に切れば何のためらいもなく反対車線に飛び出し、スーパーの駐車場内であってもアクセルを踏むと加速して店に突っ込むと言う、何のfail-safeもない恐ろしく原始的なシステムが放置されています。
ジェット機なら、自動航行に切り替えてしまえばパイロットは食事してお茶してCAと雑談もできるのに、自動車は全然自動では走ってくれず、ずっと運転手が信号見ながらハンドルを握っていなければなりません。
画像認識システムを使って、センターラインを越える操作は不可能にし、赤信号では自動的に止まるようにし、GPS情報と地図情報を照合して駐車場内では時速10km以上は出ないようにして欲しい。そもそも、出発前に目的地を入力すれば後は勝手に走って欲しい。そうすれば高齢者は事故を起こすことなく、足腰の不安なく目的地に移動できます。そこに、高齢者と言う新たな巨大市場が開けます。

国内自動車販売台数はずっとジリ貧を続けています。その原因は、車購入の中心だった勤労世代人口(特に若年層)が減少している事+若年労働者に占める低賃金非正規雇用比率が上昇して、買いたくても車を買えない世帯が増えている事があります。車を若者やファミリー層の商品だと考える限り、日本市場はこの先もずっと縮小するしかありません。それとは対照的に、高齢者人口はどんどん増える一方で、日本の個人金融資産1400兆円の六割を60代以上が握っていて、おまけにヒマを持て余しています。人口と金とヒマを兼ね備えたこの層が車を買うようになれば、日本市場は世界でもトップ級の成長市場に変貌します。
更に言えば、この分野で日本は世界最先端に位置しています。高齢化の最先端である日本市場で成功すれば、欧米先進国もそれに準ずる市場になります。韓国も中国も日本の後を追う雁行飛行で近い将来に高齢化社会を迎える事がわかっています。今は新興国と呼ばれる国々もいずれ高齢化社会になるのですから、世界的に需要は後から後から勝手に増加していきます。

またこの分野は多様で高度な技術を必要としますから、安さを売りにする新興国の自動車メーカーとの差別化も可能です。
トヨタが最初にプリウス開発を発表した時には「時期尚早では?」「コストが合わず、売れば売るほど赤字になるのでは?」と懸念もされましたが、先駆者としての地位を確保して今でもHV市場をリードしています。環境と新興国と言う当り前の成長市場だけでなく、この新しい市場に是非世界一速く挑戦していただきたい。

要素技術はかなり実用化されています。画像認識によるレーンキープとか縦列駐車の自動操縦とか、センサー技術を使った衝突防止とか、前の車に追従するシステムなどなど。
かつて、自動車免許を取得するにはクラッチ操作を習得しなければなりませんでした。今はオートマ限定免許があり、むしろマニュアル車に乗るのは「クラッチ操作を楽しみたい」一部マニアに限られるようになってきています。いずれ将来、「目的地まで自分で運転する」のも、運転したい一部のマニアだけの楽しみになるかもしれません。