水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

大卒の肩書を過大評価しているのは大学生なのか?

昨日に続いて就職活動アンマッチ問題の続編です。昨日に続いて、学生さん達は悪くないのでは?というスタンスになります。
低レベルな大学の学生が身の程知らずに大企業就職に固執することが就職難を招いている。一方で中小企業は求人難にあえいでおり、学生は自分の首を絞めているという批判があります。でも、これは無理からぬことだと私は思っています。①学生さんは大人と違い、企業の事をよく知りません。大企業でも将来を保証されるわけではないことや、中小企業の中にも優れた企業があると理解できないのは当然です。(大人だって実は企業を正しく評価できてなどいません。企業の将来性を正しく判断できるなら、大勢の大人たちが株式投資であんなに失敗ばかりするはずありません。学生さんを非難する資格はありません。)②学生さんが就職活動するのは初めて、初体験です。上手に立ちまわれないのは当然です。③おまけに日本でまともな就職ができるのは新卒のワンチャンスだけ。そこを逃せば後は一生非正規雇用のフリータになるしかありません。たった一度のチャンスにわずかな可能性でも追求したい。何とか大企業に入れれば…と期待してしまうのは当然です。
無知な学生さんより、大人な企業側が問題解決にあたるべきだと思います。

大学の数や大学生の人数が増え過ぎた事が就職難&アンマッチの原因だと言う分析があります。概説すると下記の図のようになります。面倒なので日本には四つしか企業が無いと仮定します。A社は大企業、B社C社と順にレベルが下がり、D社は名もなき零細企業です。

むかしむかし1990年頃、大学進学率は25%程度でした。大卒は希少だったので、みんなA社に就職できました。今、2010年の大学進学率は50%強あります。大卒(赤)に、増加大学卒’(ピンク)が加わりましたが、彼らは「自分たちも大卒だからA社に行きたい…」との思いを引きずって行動しています。結果、ピンク学生は就職できずB社は求人難に苦しむ、という構図です。
でもこの構図、どこか釈然としません。B社はいつから大学生を求人するようになったのでしょう?。
B社は、「むかし」均構を見ると高校生を採用していたはずです。採用意欲のあるB社がもし今も高校に求人を出していれば、高卒で就職する人はピンク分だけ減ったのに、求人は相変わらずB・C・D三社から来るので、高校生の就職戦線は生徒にとって有利な売り手市場になっているはずです。
高校生の就職内定率57.1%と依然厳しく 文科省調査 2010.12.14 17:24
実際には、B社は大学生を欲して誰も来てくれず求人難で、高校はB社から見捨てられて就職難となっています。学生が大卒と言う肩書に過剰な期待をしているのと同様に、企業B社もまた、大卒が欲しいと言うことに固執しているのではないでしょうか?。来てくれたとしても低ランク大学がせいぜいなのに、それを「大卒採用」と評価する価値があるのでしょうか?。

昨日のNHKの番組で印象的だったのは、就職コンサルタント海老原嗣生氏が魅力的な中小企業が求人難で苦しんでいる事例を紹介した時、スタジオの大学生さん達が顔を輝かせたのと対照的に、高校教諭(就職担当)氏が「どうか高校にも求人を出して欲しい」と懇願していた事です。
B社は思い切って、昔のように、高校に求人を出してみるというのはどうでしょうか?。
5人採用したい内の5人全員、はキツイでしょうが例えば1人だけでも。今の高校には、家庭の経済的事情で大学に進学できないが能力は低くない生徒が混ざっています。大学生からは相手にされないB社も、高校では「求人がきた中で最高の企業」になるので就職担当の先生も優秀な生徒に求人を紹介してくれて、各校から多くの生徒が入社試験に集まってくるはずです。
B社が高校と信頼関係を築けば、双方にとってメリットがあります。B社は①大卒の中の下位者でなく、高卒の中の上位者を雇用できる。②22歳より18歳の方が低賃金で済む。高校生は、①B社に入るのに、無駄な大学を経由するために無駄な学費を払わなくて済む。
B社レベルの企業が同様の行動を取れば、レベルの低い大学行くより高校の方が就職が良いかも…という状況が生まれて、過剰で無駄な大学を淘汰する効果が生まれることも期待できます。

余談になりますが、C社D社が従来通りの求人を出していれば、高卒就職市場からB社が抜けても、売り手市場とは行かないまでも「むかし」同様の均衡を維持できていたはずです。就職難になっているということは、グローバル化の中で求人が減っているということです。C社D社の一部は既に中国かベトナムあたりに流出していて、国内に残っている会社が雇っているのは日本人ではなく不法残留外国人か中国からの「研修生」など労基法も最賃法も無視した現代の奴隷になっているのかもしれません。
こうした雇用はもう「戻って」はこないと思われます。ここを穴埋めするのは「雇用が戻る」ではなく、規制緩和等によって新たな零細企業の起業を促す、出ていったり倒産した町工場とは異なる業種・職種の「新しい雇用の創出」を図らないといけないでしょう。