水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

就職差別を解禁しよう!

今日NHKで放送された「日本の、これから・就職難をぶっとばせ!」を見ました。面白かったです。プレゼンテータ諸氏の提案は取り組むに値するものばかりでしたし、スタジオ参加者の討論も割とまっとうでした。
その中で、以前から指摘されている「アンマッチ問題」について考えてみました。つまり、大学生への求人数自体は不足していない。学生の"大企業に入りたいよ病"が就職難を生んでいるという問題です。今日の番組内でもリクルート社出身の就職コンサルタント海老原嗣生氏がデータを取り上げ、「大学生への求人全体は1.28倍ある。ところが学生が大企業志望に集中した結果、社員1000人以上の大企業の求人倍率は0.57倍しかない。他方、1000人以下の会社なら求人倍率は2.1倍、300人以下なら約4倍もある。中小企業はむしろ学生が来てくれなくて求人難に苦しんでいる。」と指摘されていました。*1これに対して学生さん達からは「中小企業はリクナビに載っていない」「どんな会社かわからない。無数の企業からいい会社を探せない」「(本音は)できれば大企業がいい」などの声が出ていました。これを、(大企業志望は)身の程知らず、(中小企業を知らないのは)努力不足と批判するのは簡単ですが、それでは問題は解決しません。
一気に問題を解決する方法は、就職差別を解禁する事だと思います。つまり、現状の誰でもどの企業にでもエントリーできるという自由・平等を廃止して、企業ごとに「当社入社試験を受けても良い大学・学部」を明示し、それ以外の学校からのエントリーを門前払いするのです。
これを不平等だという人もいるでしょう。でも、現状だって実際は同じです。有名企業では、聞いたこともない大学からのエントリーはゴミのように捨てられています。全てのエントリーが公平に扱われている訳ではありません。エントリーするのだけは自由ですが、初めから採用される可能性はないのです。採用する気もないのにエントリーだけ受け付けるのは、見せかけの自由・欺瞞の平等にすぎません。小学校の運動会で、徒競争のゴール手前で生徒を並ばせて「せーの、ハイみんな1位ですよ」と言っているのと同じ事です。

差別を解禁すれば、学生は、採用されるはずもない大企業に夢を見てエントリーして、企業研究したり説明会に参加する無駄な労力や時間から解放されます。現実的に採用される可能性のある企業群だけについて研究し、その中から志望を検討することが可能になります。DランクEランクの大学には、中小企業からしか求職許可が出ないでしょう。大企業に行けないのは悲しいかもしれませんが、強制的に中小企業を知り、中小企業から選ぶ機会が与えられます。夢を見続け徒労を重ね、お祈りメールで自分を否定され続けて廃人のようになったあげくニートで卒業するより、ずっとマシだと思います。
企業側も、相手する気もない低レベル大学学生からの洪水のようなエントリー処理から解放されます。
インターネット時代が事態を悪化させている面があります。ネットを通じて数千社もの求人情報に接することができてしまう情報の洪水。iPhone片手に100社以上の説明会に申し込み出来てしまう不幸。社会のことも良く知らない学生さんに表面的な情報だけ過剰に送りつけて、あとは自己責任で考えて行動しろと突き放すのは、実は情報を与えていないのと似ています。
かつて、高卒で就職するのが主流だった時代は大きく違いました。基本、就職は自分の学校に求人票が来る数十社から選ぶしかありませんでした。しかも、間に先生が噛んでいます。先生が求人票を整理し、一番いい会社の求人は最優秀な生徒に推薦し、そこそこな会社からの求人を、そこそこな生徒にあてがう「交通整理」をしていました。私は90年代前半に人事の仕事をしていました。今は違っているかもしれませんが、当時自由乱戦なのは事務系(文系)だけで、研究開発職は指定大学・大学院の採用実績あるゼミからの教授推薦を受けていました。院生さんたちは、教授が付き合いのある企業の中から就職先を決めるしかありません。しかも教授の意向が相当強く反映されます。プロセス的には高卒の採用と似ています。
就職差別を解禁する事は自由を制限しますが、交通整理を促し不幸なミスマッチを解消してくれるはずです。

これは、高校生にとっても意味があると思います。模試を受けて志望校・学部が決まれば、ネットで検索すればどんな企業がその大学・学部に求職許可を出しているか分かります。そうすれば、そこが高額な学費を4年間払うに値する場所かどうかも検討できます。ご両親も、大学に行きさえすれば何とか…という幻想から解放されます。あまりに求職許可レベルが酷い大学・学部は受験生が減り淘汰されるでしょう。過剰と言われる大学を市場原理で削減する事が出来ます。

*1:求人倍率の数字は記憶に頼って書いています。間違っていたら教えて下さい。