水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

続・PISAテストで日本が韓国とか(ry

【続き】前篇の読解力に続いて、科学*1について見てみます。グラフ(3)と(4)の見方は前篇と同じです。

科学は、とても読解に似た傾向を示しています。5位・日本の優等生比率は17%で、3位・香港(16.2%)より上、6位・韓国(11.6%)とは5ポイントも差を付けています。最上位5%の得点を見ても、日本(686点)は香港(681点)をも上回っており、韓国(665点)とは20点も差を付けています。ところが、香港は日本より普通の生徒比率が5ポイント高く、落ちこぼれは4ポイント少ない。最下位5%の得点では日本(361点)対香港(393点)と30点以上上回っています。その結果、平均では香港(549点)が日本(539点)を10点差でクリア。韓国は、普通生徒比率で日本に10ポイント差で圧倒。落ちこぼれは4ポイント少なく、最下位5%の得点では香港をも上回る399点。この結果、平均では韓国(538点)と日本に1点差にまで迫っています。
フランスも読解と同様、上位5%・10%あたりの得点は団子に近いのに下位に行くほどズルズルと差が広がり、落ちこぼれ率が日本より一層高く、結果大きく成績を下げています。

読解と科学については、フィンランド・香港・韓国は相似性が高いと言えます。優等生の成績の高さよりも、普通の生徒比率の多さと落ちこぼれの少なさ、下位の成績が相対的にマシで平均点が上がるパターンです。
対して、シンガポールは読解も科学も日本に似ています。上位者は優れているが、普通比率は低く、落ちこぼれ率が高め。グラフ(4)に描画しませんでしたが、日本(361点)同様に最下位5%の成績は低い(362点)です。シンガポールも、更なる上位を狙うには平均以下の生徒の底上げが必要でしょう。

読解と科学で成績パターンが似ているのは、そもそも両者の問題が似ている事もあります。読解は一応国語になりますが、世界中の人が共通して受けるため、漢字の読み書きはもちろん、文法や故事成語など知識を問う問題はなく、与えられた問題文を読んでまさに「読み解く」onlyになります。科学も、OECDのサイトに英語でのサンプル問題がありますが、事前に教科書を読んで知識を暗記しておくことは求められず、問題文で提示された情報のみから正解を導けるようにある種完結しており、「理系なトピックスに関する読解」という要素が主です。

最後に数学。*2これだけは、少し違う雰囲気になっています。

6位・フィンランドとの差については、読解・科学と同様に落ちこぼれを減らして点数を底上げし、普通生徒比率を上げればほぼ追いつけそうです。が、シンガポール・香港・韓国に追い付くには、そこそこ優等生比率を上げないと無理そうです。2位・シンガポールとは、優等生比率で15ポイントの差を付けられていますし、最上位5%の得点は、日本(677点)対シンガポール(725点)と約50点も突き放されています。
じゃあ数学の教科書はもっと難しくすべきだ!と思われそうですが、それは…どうなんだろう…。科学の所で紹介した英語のサンプル問題の数学編を見てもらうしかないのですが、日本で言う「難問」とは方向性が違う感じです。私も全部見たわけではありませんが、接弦定理とか乗法の公式とか二次方程式、二次関数などの知識は問われないようです。使うのは小学校レベルの加減乗除と平方根程度。確率の知識などは必要ですが、内容的には小学校の「文章題」に似ていて、問題の意味を理解して答えに至る考え方や道筋を考えろー、という設問です。日本の数学の授業では、余りやらない感じがするのですが…。少なくとも、覚える公式の種類を増やしたら勝てるモノではないように見えます。むしろ2000年のテストで日本が1位だったということが私には不思議です。

後半、グッダグダになってしまいました。まぁともかく、教科書を難しくするだけでは問題は解決しないんじゃないかなぁ…と思っております。特に昨今、貧困な家庭が増えて親も本人も教育へのモチベーションが低下している層を放置すれば、平均以下の生徒の成績がフランス的にどんどん悪化していくのではないかと。ムツカシイ教科書のおかげで優等生の成績が少々上がっても、底が抜けた状態では国別の順位はなかなか上げられないのではと懸念してしまいます。

いや、それにしても上海さんはスゴイですなぁ。

*1:p.225のTable I.3.4及びp.228のTable I.3.6を参照

*2:p.221のTable I.3.1及びp.224のTable I.3.3を参照