水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

就職学部 VS 入試偏差値学部

就職氷河期の中、秋田県のド田舎にある2004年新設の公立大学国際教養大学:Akita International University」の就職率がスゴイとココ数年評判になりました。それと相前後するように、似たような学部が雨後の筍のごとく生まれています。

2004年・早稲田大学国際教養学部 2006年・上智大学国際教養学部 2007年・獨協大学国際教養学部 2008年・立教大学異文化コミュニケーション学部 法政大学グローバル教養学部 中京大学国際教養学部 2009年・関西大学国語学部 2010年・関西学院大学国際学部 2011年・同志社大学グローバルコミュニケーション学部 関西外国語大学・英語キャリア学部 などなどなど。*1

大学には、二つの側面があります。「ある学問を究める場所」「大卒の肩書で就職する手段」。殆どの学生にとっては後者ですが、日本の大学はずっと前者のタテマエを振りかざしてきました。就職の役に立たない講義だから(特に文系)だれも真面目に勉強しない。その結果がレジャーランド化です。既存の大学は(というか大学生は)就職氷河期の今、役立たずな学歴のツケを払わされています。
秋田の国際教養大学では、いったい何を教えているのでしょうか?。大学のHPを覗いて見ると。

・徹底した少人数教育(1科目当たりの平均学生数=約15人、50人以上の授業比率=3%以下) ・授業はすべて英語(TOEFL500点以上取らないと基盤教育の科目を履修できない) ・卒業までに1年間の海外留学義務化(TOEFL550以上取らないと行けない) ・世界30か国以上、110以上の大学との提携 ・多数の外国人留学生(在学生759人に対して留学生は24か国161人)&外国人教員(専任・非常勤合わせて97人中33人が外国人) ・1年間の寮生活(留学生とのルームシェアもあり、協調性や社会性を涵養) ・そして成績管理の徹底(Wikipediaによるとストレート卒業比率は5割程度らしい)  

要するに、「企業が採用時に評価するようなプログラム・企業が欲しがるような人材教育ばかり集めました。かつ、厳しい要件で卒業生の質を担保します。」と言っている訳で、これは「就職学部」なのです。役立たずなアカデミズムの虚飾を排して、いわばホワイトカラー養成の専門学校として徹底したもの。就職学部ではあんまりなので、それっぽく命名したものが国際教養学部です。

入試偏差値の高低で学生のレベルを計るしかなかったこれまでの日本の大学に比べれば、入学後に学校が与えた=学生が学んだ物事で就職を勝ち取っていることは、大学の存在意義がある素晴らしいことだと思います。
では、雨後の筍学部がこれに続く事が出来るか?といえば怪しい気がします。既存の学部を温存したまま国際教養学部も併設するという「二兎を追う」感。旧学部の入試偏差値による就職GETも、まだ全滅ではないという未練たらたら感。旧学部まるごとカリキュラムの厳格化には踏み切れない覚悟のなさが中途半端です。
秋田の新設大学と、MARCH・関関同立レベル大学の覚悟の差は、ヒュンダイやサムソンあるいは少女時代が、最初から国内市場だけでは繁栄できないと腹をくくってグローバル化に突き進んでいるのと、ジリ貧だとわかっていても国内市場に未練があって立ち遅れる日本企業に似ています。大卒なら大企業に就職できていた過去の栄光が忘れられない中堅大学たち*2

では、旧学部はどうすれば対抗できるでしょう。これは後編で。

*1:関西の大学の方が就職は悪そうなのに、出遅れっぷりが酷いですね

*2:逆に、国際教養大学は今後入試偏差値が上がって強気になれるので、建学時のモチベーションを維持できるかが問題かも