水色あひるblog

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PISAテスト成績1位=上海が思い出させてくれる鈴木章教授の生い立ち

2009年度PISAテストの結果が公表されました。

上記の表は、産経新聞のサイトから引用しました。
2000年以降順位を下げ続け、ゆとり教育バッシングを生んだ原動力ですが、今回は各分野とも順位を若干上げました。マスコミの報道を見ても「一安心!」といった感が伝わってきます。相変わらずテストの成績が大好きな日本人ですが、「テスト好き」の背景を思い出させてくれるのが、第1位・上海です。

今回PISAテストに初参加した上海が、読解力・数学的応用力・科学的応用力の三分野で成績トップを独占しています。スゴイ!。この成績トップには(特に愛国的な方々から)批判が出る事が予想されます。「中国全体の学力ではない」「秀才教育をしている学校が多く集まっているような特定地域だけで参加してトップだなんて不公平だ」などなど。
が、それよりも私が感心するのは、いま上海で子育てをしている親達の強烈な教育熱です。親達を突き動かしているのは「良い教育を与えれば、子どもはきっと豊かになれる」という信念。高成績・高学歴が人生を勝ち組に導くプラチナパスポートだという期待です。
かつては日本でもそんな時代がありました。昭和30年代あたりには、例えば「兄は高校卒業と同時に工場で働いて、その金で学業優秀な弟の大学の学費を出した」とか「一族の中で一番優秀な子を東京の大学に行かせるために親戚が金を出した」なんて話がまだありました。そう言えば、ノーベル化学賞を受賞された北海道大学鈴木章教授も苦学生でした。父親を早くに亡くし、母親は行商で生計を立てていました。生活が困窮していた為、一度は大学進学を諦めますが、高校の担任教師が家まで来て「私が学費を出してもいいから鈴木君を北大へ進ませてほしい」と説得入学後、一年休学して臨時教員をして学費を稼いだとか。一生懸命勉強して、いい学校に行って、いい会社に入れば、もう安心。もう大丈夫。テストの成績は公平です。家柄も、親の資産も関係なく、努力次第で豊かさを勝ち取れる。
今、中国13億人の社会で似たような事が行われているような気がします。また、日本以上の超学歴社会で、ヒュンダイやサムソン、LGが絶賛躍進中の韓国も同様でしょう。読解2位・数学4位・科学6位という成績は、「ギロアッパ(=母親と子供は海外に留学して、一人で本国に残って働いて稼ぐ父親)」という社会現象まで生んだ努力と熱意の成果でしょう。
PISAテストが開始されたのは2000年ですが、もし1960年代頃にこのテストがあれば、日本は今の上海も真っ青の成績を出していたのではないか、という気がします。そして、今回のPISAランキング改善に喜んでいる日本人に、今でも学歴パスポートに期待する習慣というか惰性が見える気がします。そんなパスポート…もう無いのに…。

一方、アメリカは同ランキングで一度もベスト10に顔を出した事がありません。IT・金融工学・バイオ・宇宙開発など様々な分野で最先端を走り、ノーベル賞受賞者数でも断トツトップのアメリカを支えているのは違う道です。ブレイクスルーを生みだすのは異能異才だから、クラス全員の平均点は関係ない。異能異才が生んだブレイクスルーを産業化するのに必要な人材は、世界各地から集めればいい。ていうか、どんどん集まってくるし。という感じでしょうか。

PISAテストの成績が改善したのはむろん結構なことですが、これからの日本が学力テストの平均点だけで繁栄できるとも思えません。では、これからの日本に必要な教育って何でしょう?。「大企業の正社員になれなくても稼げる知識」とか「日本国内に雇用がなくても、世界のどこかで働ける能力」とかでしょうか?。