水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

尖閣ビデオで思い知る、テレビの真の力

尖閣諸島沖での海上保安庁艦艇と中国漁船の衝突映像は、かつてならテレビ局か新聞社に持ち込まれて報道されたはずでした。それが、ネット時代の今「旧メディア」は無視されて映像はYoutubeに直接アップされました。テレビ局はひたすら「Youtubeより」とテロップを入れた映像を流し、ご丁寧に「動画投稿サイトYoutubeとは一体何か」を世間に説明させられる始末。新旧メディアの勢力交代を象徴する出来事のようです。
でも、本当にそうでしょうか?。あの映像をYoutubeで見た人は国民の何%位いるでしょう。大多数は、「Youtubeより」と画面の隅っこ書かれたテレビ番組で見たのではないでしょうか。それは過渡期だから?。私は、4日深夜(暦的には5日)に「2chまとめサイトのまとめ」を眺めていて各まとめサイトが続々上げてきた「尖閣映像流出!」スレを経由してYoutubeに行きました。でも正直、見たのは二度目の衝突シーンが含まれていると紹介されていた奴(5番でしたっけ?)だけ。時間の大半は漁船と睨み合っているだけだろうし…と思うと、6分割44分全部見る気にはなれませんでした。そういう人、多いのでは?。また、今回の事件を契機に「これからはテレビ見るよりYoutubeを主にチェックしよう」と思った人が、どれだけいるでしょう?。

Youtubeなら、テレビでは不可能な44分全UP全視聴が可能です。もしデータが入手できていたなら、海上保安官氏は10数時間の全録画をUPすることさえ可能でした。でも、10数時間全部見たい人がどれだけいるでしょう。44分UPされると、ハイライトだけでいい人も44分見ないといけなくなります。もちろん、政治に関心の高い真面目な人は全部見るでしょう。でもそれは少数で、多くの人はそんなにヒマじゃない(真面目じゃない)。実は、テレビだってその気になれば44分流せます。でもそんなことしても視聴率取れないから数分に編集する訳です。

結局多くの人は、優れたメディアではなく、楽なメディアを選ぶのです。そして、ネットはまだテレビほど楽じゃない。

小沢氏のニコニコ動画出演も同じ事です。そりゃ、真面目に会見しても悪意を持って編集され、物議をかもしそうな言葉尻だけを放送するテレビより、1時間でも2時間でも存分に発言できて、それが全て流されるニコ生のほうが「小沢さんにとっては」都合がいいでしょう。でも、見る側の都合は?。強面のおっさんがブツブツ・グチグチと話し続ける様子をずっと見続けるほど国民が忍耐強いor小沢さんに高い関心を抱いていると思っているなら勘違いもいいところ。あれも、結局国民の超大多数はニコ生でなく「ニコニコ動画より」とテロップされたテレビで、ほんの1分に編集された発言を見ただけでしょう。

ネットが楽じゃないのは、テレビなら局がしてくれる「(話題の)選択」「編集(短時間化)」「パッケージ(品ぞろえ)」といった諸作業を個人の負担にしていることです。Youtubeには無数の映像がUPされていて見るものを選べる。それはテレビには無い「自由」と「広さ」ですが、逆に、面白いものや重要な物を探さなきゃいけない。それがしんどい。何を借りるか考えずにTSUTAYAに行くと、在庫が多過ぎて1本選ぶのが大変なのと同じ事です。
もちろん、ネットでも「楽化」は進んでいます。2chまとめサイトYahoo!ヘッドラインはまさに「選択」の受託です。でもまだ十分じゃない。
例えば誰かが一つのエントリーに、動画を貼り付け(それも44分垂れ流しでなく再編集したもの)、新聞社の記事を貼り、海外メディアの反応を貼り、テーマに合った著名ブロガーの気の効いた論説を貼り、はてなブックマークとか2chまとめサイトあたりで世間の反応がわかるようにリンクを貼ってくれれば、ぐっと楽になるでしょう。でもそれって、テレビがワイドショーでやっていることと同じですよね。編集したビデオ流して、報道局から最新のニュースを流して、人気司会者とコメンテーターが何かしゃべって、街頭インタビューを流す。

テレビは放送開始から60年近く、庶民の一番「楽な」姿を探してきました。その蓄積は伊達じゃない。今回の尖閣ビデオ騒動で、スクープをYoutubeに取られても「Youtubeより」の映像を平然と流し、怠惰な視聴者を取り返す。テレビ局の底力を見た気がします。