水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

AKB商法は正義、CDは経費

10月26日付のオリコン・シングルデイリーランキングが面白いです。
1:Beginner/AKB48/推定売上枚数_568,095
2:君は100%ポルノグラフィティ/ 同_*14,696
3:LIES,LIES./DREAMS COME TRUE/ 同_**4,746
AKB48、2位と55万枚差と圧倒的です。AKBの売れ行きの凄さより、ポルノの新曲が発売初日で1.5万枚弱。ドリカムが初日で5000枚足らずと言う事が驚きかもしれません。ちなみに今年発売されたシングルの初日枚数ランキングも
1 568,095 10/10/26付 AKB48 「Beginner」
2 354,403 10/05/25付 AKB48ポニーテールとシュシュ
3 340,487 10/08/17付 AKB48ヘビーローテーション
これまたAKB48の独占です。 こうした状況に対して、CDに「総選挙投票券」だの「握手券」だのを付けて、一人のファンが同一商品を何枚も買うように仕向けている「AKB商法」を悪質だと批判する意見もあります。でも、AKBファンの人達はそもそもCDにお金を払っている訳ではなく、投票券・握手券が欲しくて買っている訳ですから問題はないでしょう。握手を50回するのに必要な対価を払ったら、50枚のプラスティック板がついてきただけの話です。
ネットが普及した今日では、「曲を聴く」とか「PV(プロモーションビデオ)を観る」とかはタダで出来ることです。ヤフオクを見ると、AKB48「Beginner」から特典類を抜いた新品が1枚あたり数百円程度で売られています。つまり「曲やPVをプレスした皿」の適正価格は数百円なのです。そう考えれば、「曲やPVをプレスした皿」(ポルノに至ってはPVも無し)を今だに1200-1300円で売っているポルノやドリカムの方が悪質ボッタクリ、もしくは時代錯誤な商売をしていると言えます。AKBに比べて質では劣らないはずのドリカムの売上が4700枚と言う数字が、有料CDの限界を示しています。
一般的なアーティストは、曲はタダで聞けるようにして、有料のライブで収入を得るというビジネスになるのでしょう。通常ライブと言えばコンサートを指しますが、AKB48のようなアイドルの場合は握手会や総選挙やジャンケン大会も有料化できるので、人気が出ると収益モデルが有利になります。(余談ですが、THE BEATLESのCDが良く売れるのは、音楽とは皿を買う事だと脳に染みついている世代が主要顧客だからだと思います。)

ではこの、沢山売れる・握手券が手に入る、WIN-WINの関係に敗者はいないでしょうか?。
一番損をしているのは、AKB48のメンバーかもしれません。CDという物質パッケージを残しているから、歌唱印税約1割と言う古いルールに縛られてしまいます。昔は、曲をファンの手許に届けるにはレコードなりCDを渡すしかありませんでした。ですから、レコードorCDをプレスしてトラックで輸送して店舗で売る、製造流通小売業に価格の相当な割合を取られてしまうのも止むを得ません。
今は、ネットで握手券を売って認証データ(QRコードか何か)を送り、希望者には曲とPVのデータもダウンロードできるようにすればコストは激減。売上の3-4割は彼女たちの取り分に出来るでしょう。一回録音すれば何百万枚でもプレスできる曲と違い、握手は彼女たちがファン一人一人とリアルにしなければなりません。「Beginner」の売上はミリオンを超えると言われています。延べ100万回以上握手するのに取り分1割というのは随分な気がします。
CDという物質を廃止すれば、秋元康氏を始めとするスタッフの収益も増やせるでしょうし、ファンの方たちも、握手券は50回分買っても曲とPVのデータダウンロードは1回だけにして、同じお皿を50枚も抱える必要は無くなります。

それでもCD販売を続けるのは、CDに収益以外のメリットがあるためです。「オリコンチャート1位獲得!」とか「遂に売上100万枚突破!!」といったトピックスが、(時代遅れなはずなのに)今でもまだ宣伝効果が非常に大きく、AKB48のブランド価値向上やメディアへの露出増加といったトータルでの売上を増やすために、CD販売と言う高コストな手法が捨てられない訳です。
80年代にMTVが流行ると、アーティスト達はこぞってPVを作りました。中には「映画でも作るのか?」といった予算を投じる場合もありました。でも、PVが評判になれば有料のレコードやCDが売れるので、PVは「宣伝の為の効果的な必要経費」だった訳で、今のAKB48にとってはCDが「宣伝の為の効果的な必要経費」なのです。
逆に言えば、ランキングの上位に入れない多くのアーティストにとってCDは「効果のない経費」です。CD物質販売から撤退するか、握手券に匹敵する驚くような付加価値でCD売上を伸ばして宣伝効果を獲得するか…。ポルノやドリカムさん達も考えるべき時期に来ている気がします。