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水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

弱者に優しい消費税

消費税は逆進的だとか、弱者に厳しい税だと言われます。具体的に、どの辺が弱者に厳しいのでしょうか?。共産党あたりが主張している「金持ちも貧しい人も同じ茶碗一杯のご飯を食べる。金持ちだからといってご飯を10杯食べることはない。」だの「貧しい人はエンゲル係数が高い」などというのは、まったく馬鹿げた話です。

逆進性の原因は、所得に占める貯蓄の割合の差異です。低所得者は貯蓄する余裕などありませんから、所得全額を支出に回す事になります。消費税率5%とすると、年収200万円の人は[消費190.5万円+消費税9.5万円+貯蓄0円]で、所得に対する実質税率は4.76%となります*1。他方年収1000万円のエリート氏が400万円を貯蓄に回した場合、[消費571.4万円+消費税28.6万円+貯蓄400万円]で、実質税率はわずか2.86%となります*2。確かに逆進性があります。
でも、勝ち組リーマンがこの低税率を維持しようとしたら、この人は自分の貯蓄を一切使えないことになります。毎年毎年貯蓄を積み上げ続けて死ぬまで手を付けない人というのは、余りいないでしょう。一時的に貯蓄してもいつかは、高級車を買うか、高級マンションを買うか、娘の結婚披露宴に巨額の援助をするか、使い道は知りませんが何かに使い、結局(所得を得たのとは違う年に)消費税を払うことになります。生涯税率は、つまり死ぬまで使わなかった金額で決まります。
例えばある勝ち組リーマンが、生涯所得3.5億円で、死んだ時に5000万円の遺産を遺した場合、[消費2億8571万円+消費税1429万円+貯蓄の残金(つまり遺産額)5000万円]で、生涯実質税率は4.08%となります。年々の税率に比べると逆進性は随分マシです。更に、遺された配偶者が遺産を食い潰しながら生活すれば、残金が減るについて税率は上がって4.76%に徐々に近付いていきます。
結局の結局、親世代が二人とも死んだ時に残金が0でなかった場合、子供世代に相続される金額が逆進性の原因になります。

なので、逆進性が許せない場合、相続税を課税すれば解決します。現在の相続税法は、基礎控除だけでも[5000万円+1000万円*法定相続人の人数]もあり、死者に占める相続税課税対象件数は4-5%程度しかありません。この控除類を一掃し、遺産額1000万円でも消費税率を上回る税率(例えば10%)の相続税を払うようにすれば、消費税+相続税をセットで考えれば逆進性はなくなります。

もう一点。逆進性が存在する場合でも、消費税が弱者に厳しいのは税を徴収する側面だけを見ているためです。徴収された税金は何らかの政策に使われて国民に還って来ます。ここで、弱者に手厚く使うようにする事が所得の再配分機能です。「支払った消費税額−何らかの政策で受け取った金額」まで考えて、始めて税が逆進的かそうでないか、弱者に厳しいか優しいかが判断できます。
再配分の手段は、単純な還付金でも、カナダのような給付付き税額控除でも、あるいは直接消費税の還付ではない制度、例えば所得制限があり低所得者だけが受けられる補助金や手当でも構いません。

身近な例として子ども手当*3を考えてみます。子ども手当に所得制限はありませんが支給金額が一律なので、相対的に低所得者ほど得をする制度です。
消費税10%化と引き換えに子ども手当月2.6万円化が実現したとします。すると、年収200万円で貯蓄0円で子ども一人の家庭は、消費税18.2万円を払って子ども手当31.2万円を受け取るので、差し引き13万円の受け取り超過(得)です。他方、年収1000万円で貯蓄400万円で子ども一人の家庭は、消費税54.5万円払って子ども手当31.2万円を受け取るので、差し引き23.3万円の支払い超過(損)です。
子ども手当という再配分制度によって、同じ子供が一人いる家庭同士を比べた場合、低所得者には優しく高所得者に厳しい社会となります。但し子ども手当では、同じ年収200万円の家庭同士を比べても、子供のいる家庭には優しく、いない家庭に厳しい制度となります。これは政府が(=国民が)、誰を手厚く援助し誰を援助しないのが正しいと考えるか次第でいかようにも制度を作る事が出来ます。
子供がいる・いないにかかわらず低所得者に還付金が出るような制度を作れば、金持ちはひたすら消費税を払うばかりで、低所得者は一旦消費税を払うものの制度を通じて金が還ってくる、結果的に累進的で弱者に優しい税制にすることが可能です。

最後に、消費税は金持ちの高齢者に課税できると言う利点があります。
今まさに、団塊の世代がどんどん定年を迎えています。退職してしまった人には所得税で課税することができません。今後、どれだけ所得税の累進性を厳しくしても、団塊の世代は既に(年金以外は)所得を得ない年齢に入っていて、累進税率から逃げた後です。
団塊の世代の中でもリッチな人達は、今後、現役時代に積み上げた貯蓄を崩して豊かな生活水準を維持します。消費税なら、そこから税を取る事が出来ます。本稿の最初に「貯蓄することで消費税の逆進性が生まれるが、後年、その貯蓄を使う時に消費税を結局払う事になる」と書きました。消費税率を上げることは、こうした勝ち組団塊世代の貯蓄からより高率で課税する手段であり、定年後も徴税を続けるする手段なのです。(もちろん、団塊の世代の中にも資産が豊かでない人はいます。資産が少ない人は消費額も少なくなるので、払う消費税額も少なくて済みます。)
現役時代より定年後の方が消費税率が高くなれば、現役時代に高所得で多く貯蓄して定年後に使う額が大きい人ほど生涯税率が高くなるという訳です。

というわけで、消費税は
(1)徴税の逆進性は相続税の手直しで解消できる。(2)適切な政策を組めば、再配分機能を通じて弱者に厳しいどころか優しい税制にできる。(3)団塊世代の中でも高所得だった階層からの徴税を続けて世代間格差を改善する効果がある。
以上、若い世代に、弱者に、優しい税になれる「はず」なんです。

*1:=9.5/200

*2:=28.6/1000

*3:なぜ「子供」でなく「子ども」なんだろう…。