読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

残業手当の引き上げは労基法の改悪か

世間的にほとんど注目されなかった(ような気がする)のですが、実は今年4月に労働基準法が改正されています。ポイントは残業が月60時間を超える部分について、時間外労働の賃金割増率が25%から50%に引き上げられたことです。つまり、時給1000円の人が残業すると、残業手当込みで従来1250円になった時給が、今後は月60時間以上残業した部分については1500円になるってことです。
割増率を引き上げることで、社員に長時間残業させることで生じる企業の負担コストを増やし、もって長時間労働を抑制しようということです。でも、これってほぼ無意味ですよね。
日本で過労死するような過酷な長時間労働が横行しているのは、残業の割増率が低いからではなく、そもそも残業手当が払われていないことが原因です。払われていない手当の割増率を増やした所で企業のコストは増えませんから、労働時間を抑制する効果などありません。

無意味なだけでなく、この改正は改悪でもあります。それは、一部には真面目に残業手当を払っている企業もあると言う事です。
競合関係にある善良な企業A社とブラックな企業X社があったとします。A社で業務が繁忙となって社員が長時間残業すると、善良なA社は50%割増賃金を払う事になり、従来以上のコスト負担になります。他方X社が繁忙になっても、元々X社は残業手当など払っていないので、法改正後も負担は0円のままです。結果、A社とX社のコスト差は従来以上に拡がり、X社に有利に働きます。製品価格を安く据え置けるX社との競争に耐えきれずA社が倒産か事業から撤退でもしようものなら、残存するX社は大儲け。それを見た周囲の業界各社は「真面目に残業手当払ったりしたらバカを見る。」と悟り、残業手当の支払いを停止。ブラック化した企業だけが市場に残る結果となります。
今必要な事は、守られていない見せかけだけの割増率を上げることでなく、踏み倒されている残業手当をキチンと払わせることです。善良な企業が損をしてブラックな企業ほど得をする違法状態の放置をなくすことです。

というわけで、解決策を二つ考えました。

(1)労基署に残業代不払いを訴えた人は、未払い賃金の3倍額受け取れるようにする。…残業代不払いでも泣き寝入りする人が多いのは、労基署に訴え出ると後が怖いという問題があります。実名で告発した場合、告発者の情報が保護されるのか知らないのですが、仮に保護されていても社内で犯人探しされればバレる恐れも大きいでしょうし。
そこで、勇気ある告発者には、踏み倒されてきた残業代を払うだけでなく「他の従業員を救った」功労として、残業代の倍額相当の報奨金を出し、合計3倍の金額を受け取れるようにしてはどうでしょう。例えば、本来30万円の残業代が払われるべきところ、この告発者氏だけは90万円受け取れるのです。
それでもまだ、勤続途中に告発するのは難しいかもしれませんが、「もうこんな会社辞めてやる」と決心した人にとっては、辞めるついでに告発する大きなインセンティブになる気がします。
(2)労基署が介入した結果、支払われた残業代の10%を労基署の取り分にする。…泣き寝入りする最大の原因は「労基署に訴え出ても、何もしてくれない」という事だと思います。そこで、労基署の役人が働きたくなる理由・労働者の残業代を取り返すために尽力したくなるインセンティブを設定してはどうでしょう。
誰かが告発して労基署が調査した結果、X社で20人の社員がそれぞれ30万円の未払い残業代を取り返せたとします。支払われた残業代総額は600万円なので、その10%相当額の60万円を企業は罰金として労基署に払わなければならない、その60万円が成功報酬として労基署の収入になります。これなら労基署の役人連中も「あぁハイハイ、告発の方は受け付けましたよ」と言って書類一枚書いて、書類をそのまま闇に葬り去るのでなく、「よっしゃ、その会社調査しまっせ。バリバリ金を取り返しましょ!」と気合を入れてくれるのではないでしょうか。
長時間労働が酷い会社ほど、社員が多い会社ほど労基署の成功報酬も大きくなるので、残業代の不払いが巨額な会社ほど労基署にとって「調査したい会社」になります。管轄内の悪質で踏み倒し規模の大きな企業から順に告発されて行くのを見ていれば、それなりの踏み倒しをしている企業も「自分の会社の順番が来る前に残業代を払って、チクられないようにして罰金から逃れよう」というインセンティブが働くのではないでしょうか。

この労基署役人の成功報酬システムは、もちろん消費者金融の過払い金返還訴訟を真似たものです。弁護士がテレビCMを流しまくるほど過払い金取り返し業務に力を入れるのは、それが確実に金になるからです。
そう考えると、未払い賃金を取り返す業務をなぜ労基署の役人だけに独占させておく必要があるのか?、という気もします。これも弁護士だか司法書士だか社会保険労務士に開放して、労働者から正式に依頼を受けた法律資格者は労基署並みに立ち入り調査権があるようにすれば、一気に解決しそうに思えます。
労基署と法律資格者との間で顧客の奪い合いになるかもしれません。テレビで「フリーダイヤル何番。なんたら法律事務所にお気軽にお電話下さい。親切・迅速にあなたの残業代を取り返します。」というCMが流れる一方で、「残業代返還なら、私たちが専門。お近くの労働基準監督署へ!。」というCMが大量に放送されるかも。
役人を儲けさせるなんて馬鹿げていると思うでしょうが、企業が残業代を支払うと言う当たり前の法律が守られれば、役人の受け取る成功報酬はなくなります。