水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

安楽死法のある未来予想図

今後、急速に増加する高齢者の年金・医療・介護等の費用を、減少する一途の労働人口で支えるのは極めて困難です。人口構成の歪みを治すには移民を受け入れて現役人口を増やすのが通常ですが、日本人はどうしても移民がイヤな様子。だからといって、このまま放置し、現役世代1.2人で高齢者1人を支えるなどと言う社会が成立するとはとても思えません。
もしかすると日本人は近い将来、高齢者を減らすことで財政危機に対処するつもりなのかもしれない、という気もします。遠い昔の「姥捨て山」のように、高齢者を適宜「間引いて」いくのです。

そこで活用されるのが「安楽死」の考え方です。Wikipediaによると、安楽死とは

末期がんなど「不治」かつ「末期」で「耐えがたい苦痛」を伴う疾患の患者の求めに応じ、医師などが積極的あるいは消極的手段によって死に至らしめること。

「不治かつ末期」で「耐えがたい苦痛」ですから、適応される人数は極わずかで、人口構成に影響するようなものではありません。本来なら。でも、法律には運用と言う側面があります。例えば、日本は法律上、原則として中絶は『できない』国のはずですが、実際には母体保護法14条第1項第1号*1にある「経済的理由」が無限に拡大解釈されて、ほぼ自由に中絶する事が出来ます。2008年の中絶件数は24.2万件。出生数が106.9万人(2009年)ですから、これは人口構成に十分影響を与えるレベルです。
そこで、安楽死の許諾要件についても、例えば「不治かつ末期」とあるところを「人として尊厳ある生活が困難になった時」などと抽象表現にすり替えたり、もっと単純に「末期がんなど」を「傷病やその他の原因」と書き変え、拡大解釈可能なようにしておけば準備完了です。
後は、放っておくと年金受給や健康保険・介護保険利用でどんどんと財政に負担がかかる人に、役所から「安楽死要望書」を送付してあげます。いや、安楽死要望書ではいかにもなので名称は「リビングウィル・シート」とかにして、その位置づけも「自身が望む生き方・死に方について意思表示をする書類」という事にしておきましょう。
送付対象者ですが、70歳になったら一律、なんていう方法では非効率です。重い病気が見つかった人、経済的に困窮している人、孤独な人、慢性的な病気や更なる老いへの不安を訴えている人、などを健保・税務・戸籍・介護データを活用してピックアップして優先送付します。そうすれば、心身が弱っている人は、別に悪徳金融業者のように強引な取り立てをしなくても、社員をリストラに追い込む人事部のように相手にペンを握らせ手を押さえ付けて無理矢理サインさせるような真似をしなくても大丈夫でしょう。わかりやすい「赤紙」を送付して。役所の人がちょっと説明に行ってあげれば、黙って自発的にサインする人が大勢いるでしょう。そして、安楽死を提供します。人口構成=財政に影響が出るほど大勢。

それだけでは、ちょっとワンサイドゲームな感じなので、少し工夫を加えます。「赤紙」を高齢者本人に送るだけでなく、親族(通常は子供。あるいは兄弟など。)がいれば親族にも、誰だれ宛に「赤紙」を送付しましたよ、という旨を連絡するのです。
自分の親(または兄弟)が安楽死の名のもとに政府に間引かれるのなんて、とんでもないことですから、実家に飛んで行って「リビングウィル・シート」を破り捨ててくれるかもしれません。「赤紙」到着が、同居なり、老人施設の利用なり、あるいは生活保護の申請も含め、家族で今後の生活について考える契機になるかもしれません。
更に、その結果、健康状態よりも経済状態よりも「孤独な人の安楽死の利用率が異様に高いらしい」と言う情報が広まれば、若い人の間に「将来、年老いた時に家族がいないと間引きの標的にされる」という話が広まり、結果的に結婚や子作り(それも、できれば一人っ子でなく二三人)が自己防衛の為に必要だとなり、婚姻率・出生率の向上が生じるかもしれません。

子供を持つ理由は、消費効用・労働効用・保障効用の三つあると言われています。消費は、子育ての楽しさ・子供を持つ歓びの事。労働は、子供が労働力として所得に貢献してくれる事、保障は、老後の面倒を見てくれる事です。
例えば昔のお百姓さんは、適当な時期に結婚して子供を産み育て、自分たちが老いて足腰が弱った時には替わりに田畑を耕してくれる子供がいないと死に直結します。年金制度もなく、介護や福祉をお金で買う事も出来ない時代ですから、老後の面倒という点でも子供は絶対必要です。現在は、労働効用と保障効用は低下し(それどころか労働効用については、子育て中の失業・復帰は正社員ではなくパート雇用がせいぜいという現実によってマイナス効用で)、唯一消費効用に頼り切っています。だから余裕のある勝ち組でないと子供は作れない訳です。
赤紙を子供が破り捨ててくれるというのは、ひねくれた方法での保障効用の復旧と言えます。

間引けば間引いたで高齢者を減らす事が出来るし、間引けないなら間引けないで結婚・子育てへのインセンティブになる。一石二鳥の制度ではないでしょうか。


……(沈思黙考)……


いや、ダメかも。むしろ逆効果の恐れもあるかもしれません。「親父もオフクロもさぁ、貯金食いつぶして俺に残す遺産が無くなったりしないように、早め早めに安楽死してくれよ。待ってるんだからさぁ。」などと言いだす子供が続出したら、「子供を作ったりしたら確実に間引きされる」という情報が流れ、出生率更に激減…てなことになるかも。

*1:妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれがあるもの。