水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

行ったり来たりするモノ

昔、会社にはメインフレームなどと呼ばれる大型Computerがあって、そこで集中してデータ処理していました。端末はメインフレームでしてもらう計算の命令を入力したり結果を受け取る窓口でした。やがて、端末の処理能力が向上して「もう、大型Computerとかいらなくね?。個人個人、それぞれの端末で計算すればいいじゃん。」となったモノのがPersonal Computerと呼ばれるようになりました。Internetの登場で、無数のPCをつないでスパコン替わりにするといった、更に分散化が進むようにも見えたのですが、それが今再び、CloudとかServerとかDataCenterと呼ばれて、端末ではないどこかで集中して処理する方式が戻って来ました。
こんなふうに、集中と分散を行ったり来たりしている世の中の物を考えてみました。

「エネルギーの供給」は、昔は各家庭で薪を割って囲炉裏やかまどで燃やす分散型だったものが、巨大な設備を持つ発電所で集中して供給するようになり、今後は逆に燃料電池太陽光発電といった技術革新によって分散型にもどりつつある感じです。
「労働」も、昔は各家庭でそれぞれの田畑を耕す分散型でしたが、工場に多くの人が集中するようになりました。その後、三次産業は二次産業に比べれば集中性が下がる方向で、更にIT技術の発展で在宅勤務の可能性が広がれば、もっと分散化が進むかもしれません。
「政治」は、日本は有史以来ムラ→クニ→国家へと大規模化して中央集権化が進んできましたが、ここへきて地方分権を推し進めるべきと言う意見が強くなってきています。
「国家」はどうでしょう?。国連加盟国数が増えていること。その背景である民族自決という考え方でセルビアモンテネグロという国が生まれたことやベルギーの分裂騒ぎなどを見ると分散化の傾向もありますが、他方でEUのように国境の意味を薄れさせ国家の統合化を進める動きもあります。

例えば演劇のような「エンターテイメント」は、かつては興行される場所に足を運ぶしかなかった集中型から、映画の登場で同一コンテンツを各地の劇場で分散して見れるようになり、テレビによって各家庭へと分散しました。モバイル機器の登場で今度は家庭から個人の手のひらへ更に分散化しています。方向としては分散化の一途ですが、消費者にとって不便で手間のかかる集中型の方が有料・高価で、便利な分散型の方が無料・安価な傾向があるのは、不思議な感じもします。
逆に「人の生死」は、かつては各家庭で産婆さんの手で生まれ、家族に看取られて死んでいった分散型から、今は病院に集中化する一方です*1。ただ、このうちの死については今後変わっていくかもしれません。病室で身体中にチューブやコードをつながれたスパゲティ状態で死んでいくのはゴメンだという人が増えており、QOLの考え方が高まれば、どこかのタイミングで治療や闘病は終了して、最後は緩和ケアに集中してホスピスや高齢者施設など病院以外で死ぬ人が増えていくだろうと思います。在宅介護の制度が充実すれば、緩和ケアに移行した時点で退院して自宅で過ごし、最後のいよいよとなった数日だけ病院に戻ると言うシステムが出来れば素晴らしいと思うのですが…、それは財政的に難しいでしょうね。
「小売」システムは、個別の個人商店が軒を並べる商店街から、一か所で何でも買えるスーパーマーケットへ集中化しました。地方の巨大ショッピングモールも、町ごとに徒歩で行ける場所にある小商圏の商店から、車で来ることを前提にした大商圏への集中化と言えます。ではamazonはどうか?。日本全土を四か所の倉庫でカバーしている点では究極の集中化です。でも、家から一歩も出ないで物が買えるという点では究極の分散化とも言えます。

「人の移動」は、徒歩はドアtoドアの分散型だったものが、鉄道は駅に、飛行機は空港に集まるようになりました。駅より空港の数が少ない事を考えれば、移動距離が長いほど集中型と言えます。ロケットの打ち上げ設備は世界でも数えるほどで空港よりずっと少ないので、遠距離ほど集中型というルールが続いています。
ただ、いつの日か、ドラえもんの「どこでもドア」かスタートレックの「転送“Beam me up, Scotty”」が実用化されれば、一気に分散型に戻ることになるでしょう。…なるのか?。
DataCenterへの再集中化が進んでいるComputerの世界も、いずれPCが今のServer並みの性能を持つようになれば「何で外部のServerに金払ってData預けとく必要があるんだ?。自前でやればいいじゃん。」って逆流する時代が来るのでしょうか?。

*1:昭和20年代には自宅で死亡する比率が80%以上ありましたが、今は医療機関での死亡率が80%以上あります。参考資料