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水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

軽減税率→NO! 税の還付→YES!

消費税論議が俄かに活気づいています。消費税率引き上げと言う選択肢が現実味を帯びてきたため、逆進性対策・低所得者対策をどうすべきかに注目が集まり、菅首相は「消費税の逆進性をなくすためには、軽減税率とか税の還付を当然しっかりやることが(議論の)前提だ」と述べ、玄葉光一郎政調会長は「1年間の生活必需品に掛かった消費税分をきちんと還付する。例えばそういう制度などをつくって逆進性対策をしっかりしていく」と述べています。
これについて、私は軽減税率に反対し、税の還付に賛成する意見を述べます。

軽減税率論で真っ先に出てくるのが「食品は生活必需品だから軽減税率にすべきだ」という主張です。そんなの大嘘。食品=生活必需品ではありません。
松坂牛や松茸や南魚沼産コシヒカリが生活必需品でしょうか?。「食品」と言われると、庶民は自動的に自分たちが日々食している物(焼鮭や肉じゃがやキンピラ牛蒡や豆腐の味噌汁)を脳裏に浮かべるので「あぁ確かに食品は生活必需品だ」と思い込みますが、その向こう側に自分たちが普段食べないような贅沢品(初競りで2個150万円の値がついた夕張メロンとか、大間の本マグロとか、烏骨鶏卵とか、タラバ蟹とかとかとか)が多数含まれていることを思い起こすべきです。消費税率10%を0%に軽減するとして、今日の晩飯の食材費が400円の貧乏人は40円しか軽減されず、今夜のディナーに4000円かけた金持ちは400円得します。贅沢なものを食べる人ほど、年間の食費に金をかける人ほど税金免除額が大きくなります。
生活必需品は膨大な「食品」の中の一部に過ぎず、逆に一部は超がつくほどの贅沢品だったりします。食品すべてを軽減税率にするのは低所得者への配慮にはなっていません。だからと言って、何千?何万?種類もある食品を一つ一つ、必需品か贅沢品か分類していくのは不可能です。もし無理矢理そうすれば、必需品か贅沢品か分類する権限を持つ官僚や政治家に、菓子折り(底の方に現金が入っている奴)を持って陳情に訪れる食品業者が列をなすでしょう。また、安い牛肉は軽減税率で高価な牛肉は課税とすると、それは豪州産牛肉が軽減税率で国産和牛は課税になるので、「外国を優遇して国内畜産業を圧迫するのはけしからん」などと言い出す「愛国者」が現れて、税率基準がどんどん歪められていくのが目に見えます。

次に、食品以外について考えます。「生活必需品」とは、具体的に何を指すのでしょう?。
例えば自転車は生活必需品でしょうか?。「休日に河原を走って運動不足&ストレス解消」というOLさんが買うロードバイクは、必需品とは言えない気がします。でも、3歳の子供を保育園まで送っていくシングルマザーにとって自転車は必需品でしょう。毎朝、まだ半分眠ったままの我が子を保育園まで連れて行くのに自転車がないと会社に遅刻します。メロンを非課税にするより自転車を非課税にする方が、子育て中のシングルマザーにとっては正しい税制になります。
では、自動車は生活必需品でしょうか?。地下鉄が蜘蛛の巣のように走り回り、JRや私鉄が5-10分に一本来る東京・大阪近辺では、自動車は贅沢品もいいところです。でも、日本には東京でも大阪でもない地域が広大にあります。JRは一時間に一本、私鉄や地下鉄など存在せず、バスは一日に五往復。そんな地域が日本中にあります。私はかつて愛媛で暮らしていましたが、愛媛で一家に一台も車がないのは家に靴がないのとほぼ同義で、松坂牛より中古の軽一台の方が生活必需品といえます。
結局、何が生活必需品で何がそうでないかは、その人の家族状況や生活環境によって千差万別で、何が軽減税率にされるべきかも人によって違います。これを国が一律に決めるのは不可能。無理に線引きすれば、常に不公平で不適切で歪みだらけになると私は思います。

次に、税の還付について、これを擁護します。「還付なんてどうするんだ?。一年間のレシートを全部捨てずに保管しておくのか?。何が生活必需品と認められるか税務署次第なのか?。所得の多寡によって還付をどう調整するんだ?。」といった批判があります。
レシートを保管する必要も、税務署の判断も、所得調整も必要としない、もっと単純な方法があります。例えば消費税率を10%にするかわりに、年に一人1.5万円を一律に還付するのです。総額1.8兆円(1.5万円*1.2億人)を、無条件・無審査・一律に還付する形です。現状、消費税率5%で税収はざっと年10兆円程度。10%にすれば税収20兆円ですから、1.8兆円は税率1%弱分。還付できない金額でもないでしょう。
税金が1.5万円戻ってくると言う事は、支出30万円分に従来の税率5%が適応されているのと同じ事になります。*1この30万円分が軽減税率になっていると考えるのです。では、あなたが一年間使ったお金のうち、どの商品が、どの30万円が軽減税率なのか?。それは一人ひとり自由です。
一人暮らしの非正規雇用者なら、月2万円*12=24万円の食費と残り6万円分は下着代と夏に買った扇風機と冬にユニクロで買ったダウンジャケットとその他少々で計30万円が軽減適応されたと思ってもいいですし、子育て中のシングルマザーなら60万円分が軽減税率ですから、食費と子供の服と紙おむつ代と絵本代とママチャリ代など計60万円分が軽減されたと思っても構いません。三人家族なら90万円軽減ですから、10年乗る予定で買った軽自動車代金も軽減税率になっているとみなすこともできます。
要するに、何が生活必需品で軽減税率なのかは、それぞれの人が自由に「自分にとって最も基礎的な消費」だと思う物を一人30万円分選べばいいのです。というか、選ばなくてもともかく30万円分は軽減税率になるんです。
一人30万円までは軽減税率、それを超えた部分は10%税率ですから、当然支出金額が低い人ほど軽減税率を受ける割合は大きく、多額の支出をする人ほど10%税率適用の割合が大きくなります。

この極めて単純な一律還付がベストなのかと言われれば、検討の余地はあります。納税者番号制が導入され所得の捕捉が正しく行えるようになれば、給付付き税額控除のような、より精密な制度を導入する事が出来るでしょう。
言いたいことは「消費税には逆進性がある」という理由で、税を徴収する時点で配慮しようとすると、むしろ歪みを生んで低所得者への配慮にならないということ。徴収は広く一律に取り、低所得者層への配慮は、給付や手当といった再分配制度で行うべきだということです。

欧州では消費税の複数税率が広く導入されています。その中で、各国で広く軽減税率が適用されている物に「新聞・雑誌・書籍」があります。タブロイド紙やパパラッチ雑誌が何故生活必需品なのか?。税制導入時に、先頭に立って政府を批判し民衆を煽るマスコミのご機嫌をとるため、マスコミ関連商品の税率を下げてあげる。いかにもメディア対策・世論対策で生まれた癒着の税率ではないでしょうか?。
食品の非課税or軽減税率も頻繁に見られます。が、これも多分に政治的圧力と政治的パフォーマンスの匂いがします。つまり(日本でもそうであるように)、食品は生活必需品だから軽減税率にすべきだという庶民からの批判が出され、食品の税率を下げればいかにも低所得者に配慮しているように見せかけられると言う政府側の妥協の事情であるように私には思えます。
さらに、欧州の事例を見ると「旅客輸送、宿泊施設の利用、外食サービス、肥料、スポーツ観戦、映画」など、どうしてこれが軽減税率になるのか疑問に感じる品目が多々あります。業界団体による軽減税率適用の奪い合い、陳情合戦の匂いがします。
日本こそ、業界団体が魑魅魍魎のごとく蠢く国なので、「生活必需品は軽減税率」などという特例を設けると、際限ない特例の拡大→税制のザル化を生んでしまう気がします。

*1:30万円支出した時に10%分=3万円消費税を払いますが、半分の1.5万円は戻ってくるので、一年間に支出した金のうち30万円に限っては税率5%だったことになります。