水色あひるblog

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下請けとしてのフジテレビ

今さらですが、昨年2009年12月30日の23:30〜25:20、フジテレビにて「40女と90日間で結婚する方法」というドラマが放送されました。イケメンにしてエリートの市原隼人君が、なぜ必死になってアラフォーの飯島直子さんを口説くのか?。綿密に練られた戦略、その理由は…というお話で、途中から見たのですが面白かったです。この作品、元はエイベックスとドコモが合弁で作った携帯電話放送局「BeeTV」で2009年5月1日の開局初日から各10分*12話というフォーマットで放送されたものを再編集したものでした。Wikipediaによると「携帯電話専門放送局で配信されたドラマが地上波で放送されるのは本作が初となる。初視聴率9.2%。」だそうです。
元はBeeTVだということは知っていましたので、これをフジテレビが放送するのは自殺行為ではないか?。と私は作品を見ながら考えていました。放送にあたりNTTドコモからCM収入が入るにしても、これを見た視聴者が「BeeTVのドラマ面白い!」と思えば、次回から彼らはBeeTVの視聴者となりフジ始め既存テレビ局のドラマの視聴率はますます下がってしまいます。
ところが、市原君の謎が明らかにされドラマが終わった時、エンドロールを見ていて驚きました。「脚本/プロデュース:栗原美和子 演出:光野道夫 製作:フジテレビジョンBeeTV 制作:フジテレビドラマ制作センター」スタッフも設備も、この作品を作ったのはフジテレビだったのです。それは知りませんでした。

なるほどなぁ、という感じです。今後、ネットメディアや携帯メディアが「本格的な」動画コンテンツを作ろうと思ったら、本格的なスタジオと機材とスタッフが必要です。そして、ハイレベルな人的・物的リソース一式を抱えているのはテレビ局、とりわけ東京のキー局です。
今回「40女…」を地上波で放送したのは、新興メディア各社に対して「ウチにご依頼いただければ、最高の作品を製作したしますよ。」とアピールするフジテレビのプレゼンテーションだったのではないかと思います。必死に抵抗しても、ネットメディアなどの拡大は阻止しようがない。ならば、新興メディアの拡大を自社の利益に結びつけるwin-winな提案をした方がマシ。それが「製作を受託する下請け工場としてのフジテレビ」なのではないかと。

ネットメディアなどがテレビ局並みの作品を作ってテレビ局に対抗するには相応の投資も必要ですし、ノウハウも必要です。それを自前で準備するより、既存のテレビ局に製作を委託する方が簡単で初期コストを抑えられます。テレビ局側は製作受託収入を得ることができて、また設備やスタッフの稼働率を上げれば限界コストも下げることができます。
新興メディア側は、いずれ設備などを自前化するかもしれません。ただ、テレビ局がドラマやバラエティなど「テレビ的」な番組を一日中流しているのに対し、ネットや携帯は地図情報やら時刻表やら株取引やら様々なコンテンツがあり、「テレビ的」な物が占める割合は一部です。コンテンツの一部のためにテレビ局を自前化するのが採算に合わなければ、そのままテレビ局に委託し続ける、ということも結構ありそうな気がします。
DVD販売が今や重要な収益源となっているのと同様、これからのテレビ局にとっては「新興メディアの下請け」が一つの収益の柱になるかもしれません。

そう言えば、昨年2009年12月14日に徳光和夫氏が出演した生放送のテレビ番組内で「来年2010年、東京の民放テレビ局は再編されて3局*1になる」という旨の発言をされました。ひょっとして、消えるテレビ局は自身の放送を止めて受託専門になってたりして…。

*1:1局減って3局になる、というニュアンスだったと思うので、テレビ東京は数に入れてもらっていない、のでしょうか?。