水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

バブルを、ここではないどこかにバブルを

過剰な金融緩和を続けるデメリットは、バブルを発生させることと言われています。80年代後半の日本のバブルも、85年のプラザ合意による急激な円高で生じた不況の影響を過大評価し、ジャブジャブのマネーサプライ(今はマネーストックと言うそうですが)を放置した結果でした。経済がグローバル化した今日では、国境を越えたマネーの動きによってバブルもまた海を越えると考えられています。日本のゼロ金利量的緩和政策が円キャリー取引を生み、それが米サブプライムバブルを助長した側面があると指摘されています。まるで世界全体が一つの国であるかのようにマネーが自分の行き先を探す。例えば岩手県で金余りがあると、その金が東京に流れ込んで土地投機を生じるような感じです。
ムフフ…。これは、ちょっと期待の持てる話ではないでしょうか。潜在成長力を失った日本経済を日銀の金融政策で動かすことはできないと言われますが、日本経済に影響がなくても、他国には影響が出る可能性があると言う話になります。

バブルは、先の日本のバブルでも今回の米国のサブプライムバブルでもそうだったように、崩壊する「まで」は結構良いものです。自国が震源地だった場合は、バブルが崩壊すると毀損した金融システムを救済するために巨額の税金投入を余儀なくされて酷い目に会いますが、震源地が他国だった場合は(不況にはなりますが)損害も限定的です。今回のように。
現在、日米欧三極が揃って金融緩和を続けています。そのマネーはどこに向かうでしょう。今の日本経済に、株や土地をバブリーに騰貴させる気力はありそうに見えません。国債を買って残りの金は、利益の匂いを追うハイエナのように海外に行くのでしょう。日本は震源地にはならない訳です。ならばある意味、バブル上等ではないでしょうか。世界のどこかでバブルが発生すれば資産効果から消費が増加し、そのオコボレは日本企業にも及ぶでしょう。
ちょうど、先のサブプライムバブルが米国の過剰消費を煽り、コスト競争力を失って死にかけていた日本の「組み立てて輸出する」タイプの製造業を一時的に延命させた現象が、もう一度再現されるかもしれません。

マネーはどこに向かうでしょう。米国?。米国は今回のバブル崩壊に懲りて、今はバブル再発を断固拒否しているように見えます。でも、米国はITバブル崩壊の痛手を次の(今回の)バブル発生で埋めてきた歴史もあり、バブル依存体質のように見えます。長らく成長と過剰消費に慣れ親しんできた国民が、経常収支を均衡させるような「質素な暮らし」にいつまで耐えられるのか疑問もあります。米国が再度バブルに走る可能性は十分あり、それもまた悪い話ではない気がします。
欧州?。んー、わかりません。それよりも、次は新興国でバブルが起きる可能性が高いように思えます。中国かインドか、あるいは産油国かロシアかは知りませんが、そうした国々でバブルが発生し、米国のような過剰消費に走ってくれれば、それは日本経済にとって救いの外需となるでしょう。いつかは崩壊するにせよ、5年か、運が良ければ10年くらい日本企業は延命されるかもしれません。
新興国のバブルにはもう一つの期待もあります。通常、金融緩和を進めるとインフレが起きるのが教科書の説明です。日本と米国のバブルではもっぱら資産価格だけが上昇し、物のインフレはごく低調でした。(だからバブルと呼ばれる訳ですが。)それは、新興国から安い「物」が流入して常時物価下落圧力を受けているから「物」の値段は上げられず、結果マネーが資産に集中したためでしょう。では、その「物」を作っている新興国で金余りが生じたらどうなるでしょうか?。資産バブルが、何かの拍子に物のインフレに延焼する可能性があるのではないでしょうか。物のインフレが発生すれば、その国の物価・賃金水準が上昇し、日本との物価・賃金格差が縮小、結果として日本が受けているデフレ圧力・要素価格均等化圧力が弱くなるかもしれません。我が国の内需不足を外需で救ってもらった上に、低賃金化圧力が弱まるなら一石二鳥の良い話です。

最近、政府からの圧力を受けてかどうかは知りませんが、日銀は金融緩和政策の継続を強調しています。日本のマネーよ、世界のどこかで頑張れ。日本ではないどこかで、バブルを起こしちゃえ。ついでに、メリークリスマス。