水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

日ソ中立条約と化していくのか、日米同盟

1941年に日ソ中立条約が締結された時には、背後の日本を気にせず対ナチスドイツ戦に専念したいソ連&対米戦遂行に当たりソ連を敵にしたくない日本、双方にメリットがありました。でも、ナチスが降伏した瞬間からソ連にとってこの条約を守っても何の得もなく、瀕死の日本は恰好の獲物。戦後の権益を考えれば侵攻せずにはいられません。だから1945年8月9日、彼らは満州に雪崩れ込んできました。条約があるからソ連は攻めてこないはずだと考え、それどころか対米和平の仲介役をしてくれるのではないかと期待していた日本の外交センスは阿呆としか言いようがありません。また、突然の一方的条約破棄を卑怯だと非難するのも、外交を小学生の指きりゲンマンか何かと勘違いしているように思えます。
国際条約は双方に益がある時のみ効力が発揮されるもので、一方が無用と判断した時点で破棄されたも同然です。

で、日米安全保障条約、あるいは包括的に日米同盟と呼ばれる両国の関係についてです。かつての冷戦時代においては、日米同盟は間違いなく双方にとって極めて重要な価値がありました。米国軍事力の傘がなければ、あっという間に朝鮮・ベトナムと同じ末路を歩みかねない日本。他方米国にとっても、当時の日本はアジアナンバー1にしてオンリー1の資本主義経済大国でしたから、これを共産主義どもに取られる訳には断固絶対いきません。
今は、そしてこれからはどうでしょう。米国にとって今や中国は日本より大きな貿易相手国です。日中のGDPは、今はまだ拮抗していますが、10年後には日本のGDPは中国の半分に、20年後は四分の一程度になっているかもしれません。あるいは、その頃には円は紙屑と化して、日本経済はジンバブエのようになっているかもしれません。総じて、日本の価値は今後低下していくでしょう。もちろん、中国が強くなりすぎるのを牽制するために日本の価値はあるでしょうが、「牽制のための存在価値」は冷戦時代の日本の価値とはまるで重みが違います。

来年の日米安全保障条約改定50周年に向け、「日米同盟の深化」を目指して日米両政府が始めることにしていた新たな協議について、米政府が「延期」の意向を日本政府に通告してきたことが8日、政府関係者の話でわかった。
(中略)「同盟深化」の協議は、将来の両国関係強化の象徴と位置づけられているもので、普天間問題の混乱は、日米関係全体に深刻な悪影響を及ぼし始めた。

http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20091208-OYT1T00777.htm

だそうで。「だから、基地問題で波風立てるような政策変更をすべきではない」という論調をよく見聞きしますが、私にはむしろ、基地問題一つで日米同盟協議が放置されること自体、今のアメリカにとって日米同盟の価値は所詮その程度、と言われているように思えます。
「中国が過剰に成長する今後、日米同盟はますます重要になっていく」と言う人がいますが、それは「日本にとっては」という一方的な都合に過ぎず、日本が平伏して恭順の意を示した所で「米国にとっての」日本の価値が上がる訳ではないでしょう。

米国の外交の歴史は「必要な時には揉み手してすり寄ってくるが、要らなくなると平然と手のひら返す」、銀行のような遣り口の繰り返しです。つい最近、デタラメな情報に基づいて一方的に戦争を仕掛けられたイラクとかいう国は、以前は反イランの拠点として米から軍事&経済支援を受けていた国でした。日本は60年間手のひらを返されていませんが、それは米国が日本を特別に愛しているからではなく、歴史の偶然で60年間ずっと利用価値があったからにすぎません。
この先、米中間の経済的相互依存&相互利益がどんどん拡大した時、もし日中間に深刻な対立が生じた場合、日中どちらの側に付くのが米国の国益にかなうでしょうか?。中国を牽制する方が重要と判断される可能性ももちろんありますが、イラクのように捨て駒にされる可能性も十分あると私は思います。もう冷戦時代ではなく、日本には当時のような特別で絶対的な価値はありません。米国は両国がもたらす便益の大小を冷徹に検討するでしょう。
とはいえ米国にとって日米安保は都合のよい金蔓条約ですから、向こうから破棄を言い出す事はないでしょう。基地を設置し、思いやり予算を上納し、「高額な保険料」を毎年払っているんだから、いざという時は必ず保険が効くはずだと無邪気に信じているのは阿呆かもしれません。

1971年、ニクソン大統領が翌年の中国訪問を電撃発表した際、日本政府は事前に知らされておらず泡食ったそうですが、いつか将来その二の舞を喰らうことになるかもしれません。先のオバマ大統領の訪問。日本は23時間で中国は3泊4日だったというあたりに、既に米国からのメッセージが込められている気がしますが…。