水色あひるblog

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無料低額宿泊所を擁護してみる

悪質な貧困ビジネスとしてマスコミからの批判厳しい無料低額宿泊所ですが、私には結構WIN-WINな良い事業のように見えます。
まず入所者。こうした施設に入所している人の大半は元ホームレスですが、彼らが個人で役所に行って生活保護を申請しようとしても、役人にボロクソに言われて追い返されるのがオチです。受理どころか、申請書さえもらえないケースが多いでしょう。ホームレスだった状態から、雨露しのげる部屋があり、食事の提供があり、月3万円程度の「おこづかい」まで支給されるのですから、入所前より状況が改善しているのは明らかで、WINです。
次に施設運営者。12万円程度の生活保護から3万円程度だけ本人に渡して残りはピンハネ。ホームレスを一人拾うごとに9万円の収入です。狭い部屋に粗末な食事と、風呂もトイレも共同で最低限の光熱費。全部合わせてもコストは一人頭月3万とか4万でしょうから、差額5-6万円利益が出ます。美味しい商売でWINです。
最後に役所。役所の第一原理は「生活保護を支給したくない」です。予算が厳しいですから、受給者を増やしたくありません。窓口で10人追い返して10人ともが貧困ビジネスに拾われるなら困りものですが、そこまではいかないでしょうから役所は今後も追い返しを続けるでしょう。
役所の第二原理は「貧困者のケアなどしたくない」です。増加するホームレスは地域住民からの苦情などもあって問題です。でも、もし生活保護を支給すれば、本来は就労支援など脱・保護に向けてのケアを行わなければなりませんが、これまた予算も人手も足りませんからそんな手間のかかることやってられません。アパート見つけて入居の援助などしても、就労もせず昼間から酒飲んで暴れて近隣住民とトラブル起こされるとますます大変です。無料低額宿泊所という「収容所」に入って、コワイお兄さんたちに管理されている状態は、役所にとって実に好都合です。なので役所的にもWINです。
これほど各当事者にとってWINが揃っているのですから、このビジネスが拡大していくのは当然だと思います。

この問題で、無料低額宿泊所を非難し、事業を止めさせることが問題解決にならないのは明らかだと思います。入所者は行き場を失いホームレスに逆戻りして状況はますます悪化するだけです。
原因は、彼らが個人では生活保護を受けられないことです。役所が「生活保護を受けたい」と言ってきた人に誠実に対応し必要な人に支給していれば、そもそもこんな貧困ビジネスは生まれていません。

では、役所を改めさせて生活保護を積極的に出せば貧困ビジネスは自滅消失するかといえば、全然そうではありません。
本当の根本原因は、こうした施設の入居者の多くが「自律して生活できない人」だからです。
善意のNPO団体などが「可哀そうな人」の生活保護受給を支援したりします。役所に同行して追い返されないよう手続きを支援してくれたり、アパートに入居できるよう取り計らってくれたりします。でも、「可哀そうな人」には、残念ながら就労意欲や能力がありませんから働かず昼間から酔って近隣迷惑を起こしたり、生活保護費を支給後数日で酒や賭博などに使い果たし、たちまち家賃や光熱費を滞納してホームレスに逆戻りしてしまいます。NPOも、入居後の生活を365日毎日監督できるほどヒマではありません。
無料低額宿泊所では、家賃や光熱費が生活保護費から強制的に天引きされるので滞納する心配がありません。「管理人」の人たちが非常に厳しく、時には暴力という手段を行使して入居者を監督しているので、施設内や周辺でもめ事を起こすこともありません。世間で暮らせばトラブルメーカーとなる人物が、ここでは家畜のように大人しく生きています。
つまり、9万円のピンハネは、生活保護手続き代行費+強制力のある生活監督料金なのです。後者は、善意のNPOにはなかなかできないことです。9万円と言うピンハネ額(率)が高すぎるかどうかは、役所で規制するより貧困ビジネス業者を市場原理で競争させる方がうまくいく気がします。ネットの掲示板か何かに各宿泊所のピンハネ率、あるいは部屋の広さや食事の内容を書き込めるようにすれば、「顧客」は条件の良い宿泊所に集まるのではないでしょうか。

この貧困ビジネスを止めさせるなら、その代償として役所は生活保護の積極支給だけでなく、部屋の斡旋、彼らが生活保護費を遊興費に使い込まないよう監視、周辺住民とトラブル起こさないよう生活ぶりを監督、といった諸業務をカバーしなければなりません。しかも役所なので、暴力といった強制力のある手段が使えません。
そんなこと出来るでしょうか?。仮に役所が(実質的には役所から委託された何とか法人みたいなところが)この業務を行えば、それは追加的税コストとして国民が負担することになります。従って、無料低額宿泊所は納税者にとってもWINの可能性があります。

「就労意欲・能力があって、自律して生活ができる人」は、こうした施設に入るべきではありませんし、多分入っているケースは少ないのではないかと思います。こうした人には役所が生活保護を積極的に出せば、後は本人が問題を解決してくれる可能性が十分あります。(積極支給が行われていないことは大問題だと思いますが、それはまた別の問題です。)
でも、就労意欲・自律生活能力がない人は生活保護を出しても彼らは生きていけません。言葉は悪いですが「収容」や「監督」が必要な人も世の中にはいると思います。そういう人に対し、無料低額宿泊所は有効であり、かつ結構コスト効率的なのではないかという気がします。