水色あひるblog

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プリウスにのしかかる「現状維持」の圧力

ハイブリッド車「静かすぎて危険」 エンジン類似音を義務化へ

以前にも似たような話があったなぁと思ったら、デジカメ(や携帯のカメラ機能)にシャッター音をつけろと言っているのと同じ事ですよね。あちらは「静かすぎて危険=盗撮に使われる」という理由でした。
HV車や電気自動車が普及すれば、車が低速で走行する住宅街の細い道路から車が通過する際のエンジン音が消えて、今より静かな環境が実現するはずだったのですが、テクノロジーの成果をわざわざ帳消しにして「現状維持」に戻す訳です。勿体ないなぁ。
「車はうるさい」という常識を捨てて「モーター走行時の車は静かなので、人は車の接近に気付かないものだ」という常識に改め、その常識に合わせて習慣を変えるという選択肢もあると思うんですよ。クラクションを二種類にして、従来の警告音の他に「すみません、車通りますよー」とお知らせする控え目な音を出すボタンを追加する。で、運転者は常識として歩行者のいる細い道路を走る時は、必要な時に「ポロローン」と鳴らすようにする、とか。歩行者も「自動車が背後に来ていれば音で気付く」という常識を捨てて、注意レベルを従来より高目に変更しなければなりません。
でも、社会全体が常識を変更するのは面倒なので、状況の方を現状維持に戻して常識に合わせる方が楽、という選好が働いている感じです。

「現状維持」が優先されていると感じるのは、例えば「HV車は音を出せ」と言われても「自転車に音を出す装置をつけろ」とは言われない事があります。自転車も走行音は静かで、自転車と歩行者の衝突事故というのは昔からあります。目が不自由な人にとっては路地を走り抜ける自転車も脅威のはずです。でも自転車は元々静かだったから、そこに音を追加して問題解決しろとは言われない。自動車は元々うるさかったから、その「元の状態」を基準にした解決が要求されます。
デジカメのシャッター音も同様。写真撮影時はシャッター音を出せと言われますが、同じように盗撮に使われていてもビデオカメラはLEDがぽっちり点灯する程度で放置されています。フィルムカメラには昔から機械的なシャッター音が付き物でしたから、今のカメラも「元通り」音を出す解決策が選ばれました。おかげで盗撮はしにくくなりましたが、小学校の運動会なんかに行けば本来なら音なんか出さなくても撮影できるのに、土砂降りの雨のようなシャッター音が降り注ぎます。
他方ビデオカメラは、とても盗撮なんかに使えなかった初期の巨大なVHSテープカメラ時代、特に盗撮対策なんかしなかったので小型化が進んだ今もそのままです。じゃあどんな解決策があるのかと問われると、ちょっと思いつきませんが。

もう一つ似ているなと思うのが「電車内での携帯通話禁止」です。電話で話す声がうるさいと言われますが、うるさいのは電車の音でしょう。でも、電車は元々うるさいから仕方ない。他方、電車の中で電話して声を出すという習慣は従来はなかったものだから、その音が追加されるのは許せないという考え方です。
電車内で通話する時にやたら大声になるのは、普段人は自分が発している声を自分の耳でも聞いて確認しているので、電車の騒音に負けず自分に聞こえるように大声で話してしまうのです。なので、その解決策としては「電車内モード」とかを作り、そのモード中はマイクで拾った自分の声を耳側のスピーカーから増幅して聞かせてやれば大声出さなくても済むはずです。(ハウリング現象をどう回避するかは、日本のハイテク企業の技術力におまかせします。)そういう「電車内で携帯を使う方向」での解決策もあるんじゃないかなぁ…と思うのですが、人は「電車内で電話したりしなかった」元の状態に戻す方が好きなんですね。


で、iPOD_NANOは、今後どうなるのでしょう?。