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水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

貧困を選ぶか、失業を選ぶか

最低賃金の引き上げに反対する人の言い分は「引き上げれば工場が日本から出ていってしまい、失業者が増える」というものです。では、その人たちが考える適切な最低賃金とは、一体何円なのでしょう。今現在の最低賃金ならOKだけど800円に引き上げるのはOUTなのでしょうか?。今現在も、中国などへの工場の流出はどんどん発生していますから、そうではないでしょう。工場の流出を止めようとすれば賃金を現状よりも下げることになりますが、どこまで引き下げれば適切になるのでしょう。
JETROのデータによると、「中国・深セン地区、ワーカー(一般工職)」の賃金は月額約204ドル*1となっています。日本円で月2万円に満たない金額です。日本も賃金水準を月2万円にすれば、多くの工場が戻ってくるのかもしれませんが、そうすべきだと思っているのでしょうか?。「月給2万円なんていう極端な事は誰も言っていない」と反論されそうですが、では、極端ではない水準とは月給何万円なのでしょう。5万円か、8万円か?。でも賃金が月2万円対8万円で工場を呼び戻そうとしたら、日本と中国で生産性格差が4倍以上ないとコスト競争に勝てません。金属部品加工や樹脂部品製造といった同規模の工場同士を比較して日中の生産性が4倍も違うものでしょうか?。そこまでの差がなければ、じゃあやっぱり賃金は月5万とかでしょうか。

月5万円で働く人がいなければ、その工場は結局日本には残れないことになります。不況で他に働き口がないので月5万円でも人が来たとします。でも月5万円では生活できませんから、「フルワークで勤務しているけど生活保護の対象」ということになります。生活保護における最低生活費を単身者で仮に11万円とすれば、不足分の月6万円を生活保護で扶助を受ける形です。
結局、私たちは二者択一を迫られているのだと思います。賃金を市場主義的に下げて工場を取り戻してワーキングプアという貧困を選ぶか、最低賃金で歯止めをかけて高い失業率を甘受するか、です。どちらがマシでしょうか?。
財政負担の多寡で優劣を決める場合、ワープアの方がマシに見えます。ワープアなら月額5万は自力で稼いでいるので公的扶助は6万円で済みます。最低賃金を高くして失業すれば全額11万円の公的扶助が必要になります。しかし、私は最低賃金引き上げ賛成派です。中国との競争に晒されている「貿易財」の工場を取り戻すために賃金が月5万円に下がった場合それが賃金の相場を形成し、「非貿易財」の企業の賃金もそれに合わせて下がると思われます。つまり、金属加工や樹脂部品製造の工場が月給5万円で人を雇っているなら、ABC-martジャスコやガストやdocomo-shopも従業員の賃金は月給5万円に向けて下がっていくだろうということです。
景気が良く労働市場がタイトなら、人の奪い合いで賃金は高い方に収斂するかもしれませんが、今のように失業率が高い状況で最低賃金の縛りがなくなれば、あちこちで賃金の引き下げが始まるでしょう。(逆に、景気が良くなって賃金が上がれば、結局工場はコスト競争力を失い、再び中国に出ていかざるを得なくなります。)ぴったり同じ金額にはならないかもしれませんが、「貿易財」の賃金が5万で「非貿易財」は15万20万という3倍4倍の賃金にはならないでしょう。

「非貿易財」の賃金が月給5万円化すれば、生活保護の支給対象者は膨大な増加をして結局財政を圧迫することになります。非熟練労働者全員に月6万支給するのと、失業者限定で月11万支給。どちらの総額が大きくなるのか定量的に示すことはできません。ただ感覚的に「賃金引き下げの方がマズイ事態になる」気がします。
それともう一点、やはり「フルワーク勤務しても生活保護以下の賃金しか得られない」ということ自体、私としては異常であって是認すべきではない、と思います。時給800円は一日8h勤務×月21日勤務で13.4万円。税金と年金と健康保険を控除されれば10万残るでしょうか?。フルワークでこの金額が払えないと言うのは、雇用として職業としておかしくないでしょうか?。正直、時給800円が払えない企業・産業は、もう日本に残るべきではない気がします。