水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

派遣労働者は何故年収200万円も貰えるのか、今後はどうなるか

派遣労働者が低賃金なのは正社員が貰いすぎているからで、正社員の過剰給与を下げて両者を同一労働同一賃金に統合すべきだという意見があります。その場合の同一賃金とは年収いくらなのでしょう?。

その話の前に、工場で働く派遣や請負といった非正規雇用の年収は200-300万円程度ですが、何故この水準にあるのでしょう?。
年収200-300万円は時給換算で1000-1500円ですが、都市部ではファミレスやらファストフードやらスーパー・コンビニでの求人が、職種や勤務時間帯によって時給750-1000円程度で出されています。派遣の賃金水準は、それら「バイト時給の上のレンジ」になっています。工場労働がキツイ分だけバイト賃金に上乗せされた水準になっているわけです。
では何故、ファミレスなどバイトの時給は750-1000円なのでしょう?。それは、法定最低賃金が、都市部で750円前後(2008年基準で神奈川県が766円、千葉県が723円)だからです。なので、昼勤で楽な職種を最低賃金に合わせた750円前後として、そこから相対的にキツイ仕事の1000円へと階段状になっています。
つまりバイト・派遣を通して、最低賃金を下限に楽な仕事からキツイ仕事へ、750円-1000円-1500円へと50円100円きざみでキレイな階段状の賃金構造になっている事が分かります。

派遣労働の年収は、雇う側のコスト上妥当な賃金を計算したら200万円になったわけではなく、それ以上は下げられないから仕方なく200万円払っていることになります。

では雇う側にとって妥当な賃金とは一体いくらでしょう。企業は「グローバルな激しいコスト競争」に晒されています。わかりやすい競争相手として中国をあげると、2008年の深セン特区最低賃金が月額1000元、大連開発区が月額700元です。1元は約13.5円なので、月収9500円〜13500円となります。工場労働者が最低賃金の1.5倍〜2倍貰っていても大雑把に年収20-30万円程度。日本の1/10ですね。
もちろん資本装備率などの違いから生産性の差があるので(あって欲しい)、一人当たりの名目賃金が中国と日本で同一になる必要は無いはずですが(無いといいな)、それでも派遣の年収200万円は「グローバルな激しいコスト競争」にとっては高すぎるでしょう。
法定最低賃金という企業にとっての「足枷」のおかげで、派遣労働者は年収200万円を貰えているわけです。

で、ようやく本稿の冒頭で書いた話に戻ります。「正社員」と「派遣」を同一賃金に統合した「新雇用」を創設するとして、その賃金はいくらになるでしょう。
私たちは、なんとなく・漠然と・根拠なく、新雇用の賃金は正社員から少し割り引いた水準だと勝手に期待していないでしょうか?。例えば年収500万円の正社員と200万円の派遣が混在するラインの新雇用は、500万円の八掛けで400万円と言った感じで。でも、それは甘い気がします。500と200を足して二で割ると350ですが、企業は350万円も出すでしょうか?。200万円でも高すぎるのに。
企業はコストを下げたいから正社員から派遣へのシフトを進めているのであり、仮に現状正社員と派遣の比率が50:50になっている工場で新雇用の賃金を350万円にしたら、賃金総額は今と変わりません。正社員比率が低ければ、今より悪化してしまいます。それじゃ企業は満足しないでしょう。

結局、企業は新雇用の賃金を200万円にする。要するに工場での雇用者全員を200万円にすることが目標になるでしょう。本社のホワイトカラーはわかりませんが、工場のブルーカラーについてはそれでもまだコストは高いのですのですから。

この想像は悲観的過ぎるでしょうか。でも、企業が新雇用の賃金を自発的に正社員と派遣の中間水準に設定する理由がありません。
派遣労働者を搾取しているのは正社員だ」と「解説」されて、正社員の給与水準を下げれば、当然その分派遣社員の給与水準が上げてもらえると期待するのは、罠の匂いがします。派遣は新雇用に移っても、やはり年収は200万円のまま、ではないかと。