水色あひるblog

はてなダイアリー 「mizuiro_ahiruの日記」 から引っ越しました。

子供たちは、分厚くなった教科書をいつ勉強するのだろう

今日から子供たちの多くは新学期。夏休みの宿題は無事に終わったのでしょうか?。

さて、最近は「ゆとり教育」の評判が散々で、削除した学習項目を復活させたり「発展的内容」を追加したり、子供たちの学力を高めようとする動きが活発化しています。
でも、教科書を難しくすれば子供が賢くなる訳ではありません。もしそれで賢くなるなら、教科書の代わりに開成中か灘中の問題集でも使えば、みんな秀才ちゃんになれるはずです。大事なのは授業を「理解する」こと。理解できない高度な授業なら、理解できる平易な授業の方がマシです。そして、より難しい事を理解するにはより多くの時間が必要なのは明らかでしょう。

かつて「ゆとり教育」が推進された時、「学習項目を減らします、簡単にします、教科書も薄くなります」という約束で、土曜を休みにしたり総合学習の時間を導入したりして授業時間を減らしてきました。
それが今、約束は反故にされて教科書はグンと分厚くなっています。

教科書ページ数の推移

文科省の資料によると、僅か4年で20%以上ページが増えた教科もあり、小学校の主要四教科合計では、ゆとり教育で減少したページが元に戻るどころか、昭和52年指導要領に基づいて作成された教科書よりも現在の教科書の方が総ページ数が多くなっています。

授業時間が減ったのに学習するページ数は増加。子供たちは、この増えたページ分をいつ学習すればいいのでしょう?。少ない授業時間で多くのページ数をこなそうとすれば、1コマの授業で学習するページ数が増加。つまり授業はどんどん駆け足になります。4年で20%以上増加したのなら、授業速度も4年前に比べ20%以上加速しないと教科書が終わりません。しかも先にも書いたように、増えたページは理解により時間がかかる難しい内容です。

子供たちの学力を高めるために教科書を分厚くしたわけですが、授業速度が上がって「落ちこぼれ」が増えれば、ますますバカになりかねません。

学校側も手をこまねいている訳ではありません。総合学習の時間や課外学習・行事などを削減して授業時間を確保しようと努力しています。
総合学習の時間は、ちょっとコマ数取りすぎの気はしますので減少させるのはいいと思います。でも限度はあって「あるテーマについて班ごとに調べてクラスの前で発表する」とか「工場見学に行く」とか「動物園で写生する」とか「登山」とか「音楽会」とか片っ端から止めて、一年中教室にこもって座学ばかりすることが望ましい姿だとも思えません。

理科の実験が減っているという話も聞きます。実験は準備も大変ですし、その日は実験だけで教科書を進めることはできません。でもそれは、理科の魅力を減じさせて学力向上にも逆行する、相当馬鹿げた話でしょう。学校での実験機会が減った結果、最近は民間の塾などが「理科実験教室」を開催し、盛況だそうです。これでは実験の楽しさを知ることができるのは裕福な家庭の子供だけになります。


それでは、どうすればいいか?。小学校の授業について、私なりに考えてみました。

(1)教科担任制導入
何かの講師を務めたことがある人なら分かると思いますが、授業を「教える」のは「聞く」の何倍も大変で、準備に時間がかかります。中学高校の教師はその点マシで、一教科1コマ分の準備をすれば、今日一日各クラスで同じ授業をすれば済みます。それに対して、小学校では一人の教師が(音楽など除く)主要教科一日5コマ分程度の準備をしなければなりません。私には「とても不可能」な事に見えます。不可能を可能にするには、結局一コマの準備を手薄ですませるしかありません。
教科担任制にするのは、決して小学校教師を楽させるためではありません。自分が担当する1コマのために、今までの5コマ分の時間を使って手厚い準備をしてもらうのです。どうすれば生徒に興味を持たせられるか、分かりやすくなるか、落ちこぼれを出さないか、工夫をしてもらうためです。得意科目に専念することで、教え方のスキルを高めてもらうためです。
「分数の割り算」は大人にとっては平易でも、小学5年生にとっては高い壁です。これを、工夫を凝らして分かりやすく説明してもらえるか、「ともかくひっくり返せばいいんだよ」で済まされるかでは、落ちこぼれの発生率は大きく違うと思います。

(2)習熟度別クラス編成
これは、生徒間の競争を煽る・下位クラスの生徒に劣等感を与える、といった反論が強いのですが、理解できない授業を座って聞かされ続けるよりマシだと思います。また、上位クラスでは発展的内容を積極的に使い、賢い生徒が退屈するのを防ぐこともできます。伸びる子は伸ばし、落ちこぼれを防ぐために有効だと思います。

以上は、駆け足の授業で極力落ちこぼれを出さないための方策です。次は、駆け足度合いを下げる方策です。

(3)英語なんていらない
次回の学習指導要領改訂で小学5・6年に「外国語活動」が導入される予定だそうです。こんなのいりません。日本人がまともに英語を話せない&聞けないのは中学高校の英語授業に問題があるからで、そこを改めるべき話です。中途半端な英語授業のためにコマを取られるのは邪魔です。

(4)土曜授業の復活
次回の学習指導要領改訂では大幅に授業時間を増やす方針だそうですが、そのために「小学2年生で六時間授業」などが登場する見込みだそうです。小2で午後三時まで授業…、うーん、それも可哀そうな気がするのですが…。私が小2だった頃を思い出すと、六時間目まで授業するくらいなら土曜に学校に行く方がマシな気がするのですが、皆さんはどちらがいいですか?。
ただその場合、教師を週六日出勤にするのは過酷な気がします。教科担任制があれば、各教師は自分の担当科目の授業が無い日に交代で休日を設定して、日曜+平日一日の週休二日制を維持できると思います。


そもそも「ゆとり教育」は政府や官僚が勝手に作ったわけではなく、かつての教育に「詰め込み」「偏差値輪切り」「落ちこぼれ」「校内暴力」などなどの問題があって、世論の求めがあって検討・導入されたものです。
教科書を薄くしたから日本人がバカになった。だからまた厚くする。だけでは問題は解決しないはずです。厚くなり難しくなった部分を、いつ・どうやって教えて理解を確保するか。それを考える必要があるはずです。